第三話 敵一族の正体 ---裏側①
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咲の話を聞いたあと、織斗は頭を抑えながら自分の部屋に戻った。
なぜ疑問に思わなかったんだろう、なぜ深く追求しなかったんだろう。
織斗はベッドに腰掛けて深呼吸を一つした。
「ちょっと聞きたいことあんだけど、姫未」
名前を呼ぶとふわっと、緋色の衣をまとった小さな着物の少女が姿を現した。
「咲ちゃんとのお話は終わったの?」
姫未は机の上にあった消しゴムに、膝を組んでちょこんと座る。
「咲に色々説明してくれたみたいだな、俺が封印を解いた時の事とか、神木の現状や小学校時代からの幼馴染が親友だとか」
「まあねー、咲ちゃん家にいるからお互いヒマだし」
「なんで俺の幼馴染の話知ってんの?」
「……え?」
「俺、姫未にそんな話したっけ?」
「緋真の当主のことでしょ? 話してたわよ、学校に頭いい友達がいて、勉強教えてくれるって」
「だから、その学校にいる親友イコール幼馴染だって俺、話たか? 小学校からずっと同じクラスで仲よくやってきたとか」
「…………」
「単刀直入に聞く、広と話したよな? 初日、俺が封印解いた日に。よく考えたらそのサイズの姫未が俺を家まで運ぶなんて無理……広だよな?」
「その話を、咲ちゃんとしてたの?」
姫未は諦めたように目を閉じ、ため息をついた。
「だから敵の正体は言えないっていったの。私も元助も」
姫未はゆっくりと、あの日の話を始めた。
*
最初の戦いを終え、公園のベンチで眠り込んでしまった織斗。
戦闘中は他人が近づくことはないが、しばらくすると人通りが元に戻る。
「どうしよう。誰かが気づいて救急車呼ばれても面倒だし、でもこのままってのも……」
「寝てるくらいで救急車呼ばないだろ」
すっと、姫未の横を抜けて織斗に近寄る人影。
「初めまして、神木の従者」
広は織斗の傍に座り、姫未に軽く会釈した。
「うちの従者は普通の人間と変わらないんだけど、なんであんたそんな小さいの?」
「従者……その顔、緋真の」
「緋真孝幸の息子で、現当主の緋真広だ。よろしく」
「え、あ、よろしく」
姫未に微笑んだ後、広は眠っている織斗を見た。
「封印しちゃったんだな、織斗」
「今回の場合はそれしかなかったでしょ。仕掛けてきたのはそっちだし」
「家臣が勝手にやったことだ、俺は知らなかった」
「そんなわけないでしょ。術は当主の血がないと使えないし、そもそも織斗が神木だって知らないでしょ?」
「俺の不在時はあやめに監視任せてたんだけど、人の多い場所でトランプ出したらしいな、こいつ。神木が誰か知らなくても、俺のと対になるトランプ持ってればそいつが敵の当主だってわかるだろ」
「でも血は……」
「健康診断のときの採血が抜き取られてるなんて思わないだろ、普通」
「じゃあ本当に、今回のはさっきの子の独断なの?」
「だから、俺は知らなかったと言ってる。報告を受けて慌てて帰ってきたけど、手遅れだったな」
そう言って広は織斗を背中に担いだ。
「鞄持てる?」
「え?」
「家まで連れて帰る。すぐそこだから、頑張って運んでくれ」
ベンチにある鞄に目配せし、広は織斗を背負って歩きだした。
「ちょっとまって……ていうか重い!」
自分より大きな鞄を両手で抱え、姫未は必死に広と織斗についていった。




