上がる帆
湾口 亡命艦隊
砲を下ろす場所は、ゲラードの返事で決まった。
返事は、三度目の船団が運んできた。アルセナが評議会への手紙を送ってから、ちょうど一往復分の日が経っていた。
本国の手前に、小さな島がある。評議会の船がそこで待ち、亡命艦隊の砲を一門ずつ受け取る。砲を全て下ろした船から、本国の港へ入る。
その島の名を、アルセナは知っていた。若い頃、艦隊の演習で何度か錨を下ろしたことのある島だった。灯台が一つと、漁師の小屋がいくつかあるだけの、岩がちな島だった。
返事の最後に、ゲラードの字で一行が添えられていた。
十四人の名は、記録にあった。うち九人は、本国に着いている。
アルセナは、その一行を長いこと見つめていた。九人は、着いていた。残りの五人については、何も書かれていなかった。
アルセナは、返事を持って年嵩の艦長の船に渡った。艦長と、使者の船長を、船室に呼んだ。
ゲラードの一行を読み上げると、使者の船長は両手で顔を覆った。
「九人」使者の船長は言った。「九人は、帰れたのですね」
「五人は、分からない」アルセナは言った。
「分からないなら、まだ探せます」使者の船長は言った。顔を上げた目が、赤くなっていた。「本国に着いたら、九人の家を訪ねます。五人のことを、何か聞いているかもしれない」
年嵩の艦長は、黙って使者の船長の肩に手を置いた。
────
その日の午後、亡命艦隊の砲甲板では、砲手たちが砲を磨いていた。
誰が命じたわけでもなかった。島で評議会の船に渡す砲だった。もう二度と撃つことのない砲だった。それでも、砲手たちは布に油を染ませて、砲身を一門ずつ磨いていった。
年嵩の艦長は、自分の船の砲甲板を歩いていた。砲身の黒い鉄が、磨かれて鈍く光っていた。
一番古い砲の前で、年配の砲手が手を止めていた。
「この砲は、私が見習いの頃からこの船にありました」砲手は言った。「父も、この砲で働いていました」
「渡したくないか」艦長が聞いた。
砲手は、しばらく砲身を撫でていた。
「渡します」砲手は言った。「ただ、汚れたまま渡すのは嫌です。父の砲ですから」
艦長は、何も言わなかった。砲手の隣にしゃがみ込み、自分も布を取って砲身を磨き始めた。
別の砲の前では、若い砲手が砲口に布の栓を詰めていた。潮が入らないように。島まで、まだ十日の航海がある。
「撃たない砲にも、栓は要るんですね」若い砲手が言った。
「撃たない砲だからこそだ」艦長は言った。「次に誰がこの砲を見るか分からん。錆びた砲を渡せば、手入れもしない艦隊だったと思われる」
────
出航の前の日、湾口の浜に人が集まった。
朝から、よく晴れていた。南風はすっかり止み、湾の水面は鏡のように凪いでいた。
亡命艦隊の水夫たちが、小舟で次々と浜へ上がってきた。豪州軍の兵たちが、それを迎えた。「あさひ」の乗員たちも、内火艇で降りてきた。
誰が呼びかけたわけでもなかった。半年以上、同じ湾口にいた者同士だった。
半年前、この浜には見えない線が引かれていた。署名の日、亡命艦隊の水夫たちは天幕の左手に、豪州軍の兵たちは右手に立った。誰も、その線を踏み越えなかった。
今日は、線はどこにもなかった。
浜のあちこちで、別れの言葉が交わされていた。言葉の通じない者同士は、手を握り合うだけだった。
ボタンを縫いつけてもらった若い豪州兵が、亡命艦隊の水夫の一人と並んで座っていた。水夫は、若い兵の袖のボタンを指差して笑った。帆の針で縫いつけられたボタンは、まだしっかりと袖に留まっていた。
「あれを縫ったのは、捕虜の少年だった」若い兵は、通じないと知りながら言った。「もう、本国に帰った」
水夫は、言葉は分からないまま、頷いた。それから、自分の懐から小さな結び目の紐を取り出した。娘の背丈を示した、あの紐だった。
若い兵は、紐の結び目を見て、少し考えた。それから、自分の胸の高さに手を当ててみせた。水夫は、首を振って、自分の腰の少し上に手を当てた。
二人は、顔を見合わせて笑った。
浜の端では、豪州人技師の娘が、亡命艦隊の水夫たちに囲まれていた。署名の日に、見えない線を駆け抜けた少女だった。水夫の一人が、少女の帽子に小さな布の帆を縫いつけていた。
────
カーターは、年嵩の艦長と向かい合っていた。
ナサが、間に立っていた。
「北岸の町を守っていた時」カーターは言った。「海から敵の後続を断ってくれたのは、あなたの艦だったと聞いています」
ナサが訳すと、艦長は頷いた。
あの夜のことを、カーターは今でもはっきりと覚えていた。町の外れで、弾倉の残りを数えていた。部下たちの銃声が、一つ、また一つと途切れていった。もう一度上陸されれば、持たない。そう思った時、沖で砲声が響いた。ドドン、と黒い火薬の音だった。
「弾が尽きかけた夜でした」カーターは言った。「あの援護がなければ、町の残り半分も失っていた」
「こちらも、砲が尽きかけていました」艦長は言った。「互いに、尽きかけた者同士でした」
艦長は、少し間を置いた。
「あの夜、私の船は本国の船に砲を向けました」艦長は言った。「同じ海で生まれた者たちの船に。あの砲は、本国の手前の島で評議会に渡します」
カーターは、ナサの訳を聞いて、しばらく黙っていた。
「こちらの弾も、半分は後方に下げました」カーターは言った。「帆が畳まれたので」
艦長は、少しだけ笑った。
カーターは、手を差し出した。艦長は、少し戸惑ってから、その手を握った。
艦長の手は、硬く、ざらついていた。何十年も綱を引いてきた手だった。
握手を解いた後、艦長は腰の袋から小さな包みを取り出した。中には、黒い火薬の粒がひとつまみ入っていた。
「あの夜、最後に撃った砲の火薬の残りです」艦長は言った。「もう、使うことはありません」
カーターは、包みを受け取った。少し考えてから、自分の胸ポケットから空の弾倉を一つ取り出した。署名の日に、部下たちが抜いた弾倉の一つだった。
「こちらも、もう使いません」カーターは言った。
艦長は、空の弾倉を手の中で回した。それから、大事そうに腰の袋にしまった。
────
川上は、内火艇の傍らでレナと向かい合っていた。
ナサが、通訳のためにレナの横に来ていた。
「『サフィ』の火の夜」レナは言った。「殿下は、手の空いている者は全員あの船へ行けと命じられました。私たちの船からも、小舟を出しました」
「覚えています」川上は言った。「あなた方の小舟が、こちらの内火艇より先に着いていた」
「帆の火は、帆の民が一番よく知っている」レナは言った。「殿下は、そうおっしゃいました」
川上は、少し考えてから言った。
「明日、あなた方の艦隊が湾口を出る時」川上は言った。「本艦が、湾口の外まで付いていきます。外海に出るまで」
ナサが訳すと、レナは少し驚いた顔をした。
「護衛、ですか」
「見送りです」川上は言った。「帆を畳んだ海を、帆を上げて出ていく船を見送る。それだけです」
レナは、深く頭を下げた。
────
十六夜は、アルセナの前に立っていた。
浜の中ほどだった。署名の日、天幕が張られていた場所のすぐ近くだった。
「通訳は、要らないそうですね」十六夜は言った。
アルセナは、少しだけ笑った。
「教えて。くれた。言葉」アルセナは、日本語で言った。「置いて。いかない。持って。いく」
十六夜は、その言葉を聞いて、しばらく何も言えなかった。
一年前、アルセナの言葉は音の連なりでしかなかった。いま、アルセナは日本語で別れを告げている。
最初の会談の日のことを、十六夜は思い出していた。アルセナは水を一杯、こちらに差し出した。こちらも、水を一杯差し出した。言葉は、ほとんど通じなかった。互いの名前すら、正しく発音できなかった。
あの日から、十六夜は帳面を何冊も埋めた。音を拾い、形を写し、意味の見当をつけた。語彙を集め、助詞を探し、問いの形を見つけた。過去と未来を区別できるようになった。敬意の言葉と、そうでない言葉の違いも覚えた。
そして、帆を下ろすと帆を畳むの違いを、最後に見つけた。
「殿下」十六夜は言った。「最初に覚えた言葉を、覚えていますか」
アルセナは、ゆっくりと口を開いた。
「私たち。あなたたち。戦わない」
一語ずつ、確かめるように言った。
十六夜は、頷いた。
「その言葉は、一度破られました」十六夜は言った。「遠い机の上で」
「破られた」アルセナは、日本語で繰り返した。それから、本国の言葉に切り替えた。十六夜には、その意味が分かった。
「だが、また書かれた。今度は、同じ机の上で」
────
赤城は、アルセナに一枚の紙を渡した。
白瀬が、その後ろに控えていた。手に、もう一枚の紙を持っていた。
協定の訳文の写しだった。三行目に、帆を畳むと書かれている。
「本国の評議会で、必要になるかもしれません」赤城は言った。「こちらの紙にも、同じ一語が書かれていることを」
アルセナは、紙を受け取った。三行目の文字を、指でなぞった。
日本語の文字は、アルセナにはまだ読めなかった。それでも、その一語がどこにあるかは分かった。十六夜が、署名の日に何度も指で示した場所だった。
白瀬が、もう一枚の紙を差し出した。
「十四人の名の写しです」白瀬は言った。「殿下が評議会に送られたものと同じものを、こちらでも控えておきました。五人の行方が分かったら、こちらにも知らせていただけますか」
アルセナは、白瀬の顔を見た。
「なぜ、あなた方が」
「名を探す者が、一人でも多い方がいい」白瀬は言った。「それだけです」
アルセナは、二枚の紙を重ねて、懐にしまった。
「戻ってきます」アルセナは言った。「本国の船として。あの旗を掲げて」
赤城は、頷いた。
「その時は」赤城は言った。「水を一杯、用意しておきます」
────
ミゼンは、浜の端でナサと並んで座っていた。
夕日が、湾の水面を橙色に染め始めていた。浜の人影は、少しずつ減っていた。
「俺は、行く」ミゼンは言った。「殿下の証言を、最後まで見届ける。それから、戻ってくる」
「戻る。いつ」
「分からん」ミゼンは言った。「でも、行き来する船がある」
ナサは、砂の上に指で線を引いた。一本だけ。
「刻み目」ナサは言った。「ミゼン。戻る。まで。数える」
ミゼンは、その隣に一本線を引いた。
「俺も、数える」ミゼンは言った。「お前の顔を見るまで」
二人は、しばらく黙って海を見ていた。
「お前と初めて会った時」ミゼンは言った。「お前は、寝返った技師だった。俺は、拾われた子どもだった。どっちも、どこにも居場所がなかった」
「今。居場所。ある」ナサは言った。
「ある」ミゼンは言った。「二つずつな」
波が寄せてきて、二本の線の端を濡らした。だが、線は消えなかった。
カーターが、二人の後ろに来ていた。
「行くのか」カーターがミゼンに聞いた。
「行く」ミゼンは言った。「戻ってくる」
カーターは、ミゼンの肩を叩いた。
「あの湾口で、お前は武力じゃない道を運んでいった」カーターは言った。「今度も、運んでこい」
────
日が暮れる前に、ミゼンは十六夜を探しに行った。
十六夜は、浜の秤の前にいた。二度目の船団の荷揚げで使った台秤と天秤が、まだ浜に据えられたままになっていた。十六夜は、それを片付けようとしていた。
「手伝う」ミゼンが言った。
二人で、天秤の皿を外し、分銅を箱に収めていった。真鍮の分銅が、一つずつ小さな音を立てて箱に並んだ。
「俺がこの湾口に来た頃」ミゼンは言った。「あんたは、俺の言葉を一つずつ帳面に書いていた。俺が何か言うたびに、何度も聞き返して」
「覚えてる」十六夜は言った。「あなたの名前が、後ろの帆という意味だと分かった日のことも」
ミゼンは、少し照れたように笑った。
「あんたがいなかったら、俺は今でも拾われた子どものままだった」ミゼンは言った。「言葉がなければ、証言も何もない」
十六夜は、分銅の箱の蓋を閉めた。
「言葉を覚えたのは、あなた自身」十六夜は言った。「私は、量っただけ」
「量る者がいなければ、重さは分からない」ミゼンは言った。
十六夜は、何も言わなかった。ただ、分銅の箱をミゼンに差し出した。
「これは、本国のもの」十六夜は言った。「評議会に返しておいて。商いの船は、次から本国の秤を持ってくるそうだから」
ミゼンは、箱を両手で受け取った。小さな箱だったが、ずっしりと重かった。
────
その夜、アルセナは「エイカ」の甲板に一人で立っていた。
浜には、まだ焚き火が一つ残っていた。誰かが、遅くまで話し込んでいるのだろう。
レナが、外套を持って甲板に出てきた。アルセナの肩に、それを掛けた。
「眠れませんか」レナが聞いた。
「眠れない」アルセナは言った。「明日、帆を上げる。署名の日から、一度も上げていない帆だ」
アルセナは、帆柱を見上げた。畳まれた帆が、月の光を受けて白く光っていた。
「あの帆を畳んだ日」アルセナは言った。「誰も命じていないのに、水夫たちが自分で帆桁に上った。明日は、私が命じて上げさせる」
「水夫たちは、上げたがっています」レナは言った。「家族のいる港へ帰るために」
「分かっている」アルセナは言った。「だが、帆を上げるのは、これが最後になるかもしれない。島で砲を下ろし、港で指揮を返せば、この艦隊はもう私の艦隊ではない」
レナは、黙ってアルセナの横に立っていた。
「それでも、上げる」アルセナは言った。「全てを語るために」
────
翌朝、亡命艦隊は帆を上げた。
夜明けと同時に、湾口に風が戻ってきた。北へ向かう者には、ちょうどいい追い風だった。
最初に動いたのは、「エイカ」だった。水夫たちが帆桁に駆け上がり、縛りつけていた綱を解いた。署名の日から一度も解かれなかった綱だった。
結び目は、固くなっていた。何か月も潮風に晒された綱は、指で解くのに時間がかかった。水夫たちは、一つずつ、丁寧に結び目をほどいていった。
前帆の帆桁には、一番若い士官が上っていた。あの政変の時に見習いだった、あの士官だった。最後の結び目をほどき終えると、士官は帆桁の上で一度だけ浜を振り返った。
自分たちが何をしたのかを知りたい。士官はそう言った。その答えは、まだ全部は出ていない。本国の議場で、殿下が語る。艦長が語る。三通目を運んだ船長が、本当の名で語る。
士官は、帆布から手を離した。帆が、風を受けて大きく膨らんだ。
帆布が、ザアッと滑り落ちた。風を掴んで、バサリと大きく膨らんだ。
一隻、また一隻。湾口に錨を下ろしていた帆船の帆が、次々と上がっていった。錨鎖が巻き上げられ、ガラガラと鳴った。
浜で、誰かが手を叩いた。その音は、すぐに浜じゅうに広がった。
浜には、昨日の人々がまた集まっていた。カーターと部下たち。赤城と十六夜と白瀬。ナサ。技師の娘は、帆を縫いつけた帽子を振っていた。
「あさひ」の甲板では、乗員たちが舷側に整列していた。
「帽振れ」
灰色の服の男たちが、一斉に帽子を振った。亡命艦隊の水夫たちが、帆桁の上から手を振り返した。
「あさひ」が、ゆっくりと錨を上げた。帆船の列の後ろについて、湾口の外へ向かって動き始めた。
────
その日の昼過ぎ、市ヶ谷の会議室で、桧山は湾口からの報告を読んでいた。
亡命艦隊、湾口を出港。護衛艦「あさひ」、湾口の外まで見送り。
遠野が、報告の写しを手にしていた。
「湾口から、あちらの船が一隻もいなくなりました」遠野は言った。「この半年で、初めてです」
桧山は、報告を置いた。
「空いた湾口を、どう使うか」桧山は言った。「次に来るのは、商いの船だけであってほしい」
「ゲラード評議員の手紙には、そう書いてありました」遠野は言った。「砲門を塞いだ船だけが、あの旗を掲げる」
「旗は、変えられる」桧山は言った。「だが、一度塞いだ砲門を開けるには手間がかかる。ファリスとかいう評議員が言った通りだ。破るのに手間のかかる約束」
桧山は、残量表を引き寄せた。前線の弾の数の欄に、赤鉛筆でもう一度数字を書き入れた。
「湾口の警戒を、一段下げる」桧山は言った。「『あさひ』は、来月一度本土へ戻す。整備と、乗員の入れ替えだ」
「あちらの民は、それをどう見るでしょう」
「帆を畳んだと見るだろう」桧山は言った。「こちらの言葉で言えば、錨を上げた、だが」
────
湾口 浜
帆を上げた艦隊が湾口の外へ向かう間、ナサは浜の端にいた。
昨日、ミゼンと引いた二本の線は、夜の潮で消えていた。砂の上には、何も残っていなかった。
ナサは、流木を一本拾った。浜の端の、波の届かない岩のところまで歩いていった。岩の表面は、平らで柔らかかった。
ナサは、流木の先で岩を削った。一本の線が、白く刻まれた。
背後で、足音がした。十六夜だった。
「それは」十六夜が聞いた。
「刻み目」ナサは言った。「一日目」
十六夜は、ナサの隣にしゃがみ込んだ。白い線を、指でなぞった。
「終わりの印は」
「無い」ナサは言った。「いつ。終わる。分からない。でも。数える」
十六夜は、しばらく岩の線を見ていた。それから、立ち上がって沖を見た。
湾口の出口で、「エイカ」の白い帆が小さくなっていくところだった。その後ろに、灰色の「あさひ」の船体が続いていた。
「二日目からは、私も見に来る」十六夜は言った。
ナサは、少し驚いたように十六夜を見た。それから、頷いた。
「二人。数える」ナサは言った。「早く。戻る。かも」
十六夜は、笑った。数える者が増えても、船は早くは着かない。それでも、そう言わずにはいられなかった。
────
「エイカ」の艦尾甲板に、アルセナが立っていた。
浜が、少しずつ遠ざかっていった。人影が小さくなり、やがて見分けがつかなくなった。
丘の麓の、収容区画があった場所が見えた。天幕の跡は、もう草に覆われ始めていた。
基地の建物が見えた。一年前、あの湾の向こうで、水を一杯ずつ差し出し合った。
レナが、隣に立った。
「帆を上げましたね」レナは言った。
「上げた」アルセナは言った。「畳むために」
湾口の外に出ると、「あさひ」が速度を落とした。舷側に、乗員たちがまだ並んでいた。
艦隊は、湾口の外で向きを変えた。
「あさひ」は、そこで止まった。灰色の船体が、朝の光の中で小さくなっていった。
北へ。




