5話:家族への披露曲
私の歌の最初のファンは、妹のティアだった。
あの子守唄がとても気に入ったらしく、
起きた後に何度もアンコールを受けた。
はっきり言って、子守唄の歌詞やメロディは
曖昧にしか私は覚えていない。
そのことを説明して、アンコールを断っても
妹はぐずる一方である。
そのうち帰宅して私と妹のやり取りを見ながら
リビングでくつろいでいた両親や兄が、
私の歌に興味を持ち始めた。
「ソラの頭の中には沢山のメロディが流れているのかい?」
父上が興味深そうに尋ねてきた。
「うん。でも、メロディは何度も同じものが流れたり
その時一度きりしか流れないものとかあるから、
全部を覚えているわけじゃないよ。」
その中からお気に入りのメロディだけに、歌詞を付けるのだ。
「ソラ、何か歌ってみてよ!」
兄のアルが楽しそうに言う。
皆の顔をみても、同じように歌ってくれるのを
期待している様子だった。
「わかった。どんな曲がいい?」
別に隠している訳でもないので、あっさり引き受ける。
「ソラが気に入っている曲を歌ってみて?」
母上が目を輝かせながら答える。
期待には応えられないと思うけれど…。
「下手でも笑わないでよね。」
と、あらかじめ家族に釘をさしておいた。
少し思考し、最初に浮かんだ曲を歌うことにした。
私が初めてこの世界で空を見上げた時に流れたメロディ。
私は歌うため、息を大きく吸い込んだ。




