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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
2章 --時計針止まるアークエンジェル--
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情報 汚泥水没の世界

 汚泥水没の世界は汚染された地上から逃げてきた地下の巨大階層都市の成れの果てです。

 地熱の影響で地下の水源が熱せられ蒸気は登っていき上層階で冷やされた水は下層階へと流れていくことで、階層都市は湿度と流れてきた水で満たされています。


 階層都市の施設の設備のほとんどは湿気にやられ故障しております。

 施設内を流れ巡っている水量がやけに多く、また閉ざされた空間内で空気の循環などできているとは思われずどこかに地上に通じる亀裂があると思われます。

 箱舟到着時には放棄されてから一世紀以上立っており調査時は無人な状態でした。


 湿気とカビに機材も紙媒体も使い物にならない状態となっており資料集めは無駄に終わりました。

 町の荒れ具合、かろうじて読み取れたわずかな資料などの状況から判断すると何らかの問題で設備の機能停止、その後修理などを試みたが放棄されたようでその際に多少の人同士の衝突があったようで上層階は重機や破壊の跡が多く見られました。

 外に出ていった者たちがどうなったかは、扉は閉ざされ通路の大半は崩れその他出口も発見できておらず外の世界とともに確認できておりません。


 最上階はおそらく外界との出入り口だと思われ下層へ通りていくにつれ都市を動かす上流階級、人としての生活を成り立たせる市民、都市を動かすための消耗品の歯車とする労働者と三つのピラミッド型の階層階級に別れていたものと思われ階層ごとに設備や建物の形状が変わっております。


 狭い世界で生きていくに従い、水と空気や食糧は最大の問題だったようで、成育の速い動物や多くの実を付ける植物などを遺伝子改良していたようです。

 閉鎖された環境下での酸素は水を分解することで作り出せ、それで地下空間での生存を維持していたようで、外への出口はおそらくは水を取りに行くためのものかもしれません。

 全ての階で人は管理され、新たに生まれてくる子供たちは専門の教育所で格付けされ卒業時に三段階ある階級のどこかに振り分けられていたようです。



 大型昆虫

 人の頭ほどある光沢のある褐色昆虫。

 足が速いという祖先の力を引き継ぎつつ巨大化、主食は菌類、苔類、生息生物の死骸や糞などだと思われております。

 食物連鎖の下方に位置しその他多くの生物の食料になっているようです。


 地下鼠

 おそらくは豚や牛の代わりとして半天然物の家畜として生み出され、その後に野生化した姿だと思われます。

 生命力が高く成長や繁殖能力とともに小さかったころから大きな変化はないものと思われます。

 数匹で纏まって行動する習性があり仲間に危害が加えられると仲間を呼ぶようです。

 地下都市内に非常に多く生息しており何を食べそこまで増殖しているかは調査ではわかりませんでした。


 地下魚

 水路を泳いでいる数メートルサイズの白みを帯びたピンク色の巨大魚。

 四メートルほどから八メートルほどが平均サイズで大きなものとなると十五メートルほどの巨体になる様子。

 水の中ではなく地上にいる生き物を狙うため口は水面の方を向いており、格納した吻を伸ばして水面に近寄ってきた生き物を丸呑みにするようです。

 長年域成長した巨体ともなると流石に入り組んだ水路に飛び込むことはできないようで肺呼吸を会得した模様。

 その湿度の高さで乾燥しないこともあり地上を徘徊している姿が数匹確認されました。

 湿度が濃い階層都市内で体が乾くことがなければ水上でも活動できるようです。

 人を丸呑みするサイズであり主食は地下ネズミや昆虫類だと思われる。


 獣人

 おそらくはこの地下都市を放棄する際に取り残された人類が、生き残るために博打を打ったものと思われる生き物。

 遺伝子組み換えで暗闇に適応し壊れ再起不能な文明から背を向けて生きて行こうとした形だと思われます。

 文明を口伝ものがいなかったのか、脳機能に問題があったのかそれほど賢い生き物でもありません。

 しかしそれでも簡単な武器なら作ることもでき、独自の言語での会話や道具を扱う姿も確認されており知性もおそらくは高いものと思われます。

 おそらくは最下層の者たちが取り残されたものと思われ、調査中はドローンを武器を持って追いかけ足元の水路に気が付かず落ちたり、叫び飛び跳ねたりするだけで専門的な知識や高度な知性を見ることはできませんでした。



 本来いるはずのない人影。

 装備がこの世界の文明にあっておらず外から持ち込まれたものだとわかる装備で身を固めた集団。

 私と同じく使命を受け活動している箱舟の乗組員と思われ、攻撃理由は不明。

 交信するも誰からの返事もなく誰からの攻撃からか調査中。


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