めぐる箱舟 3
銃弾を浴びドローンが落とされるが、攻撃の飛んでくる方向から隠れている位置を特定した何機かがポンッと軽い音を立てて榴弾を撃ちだす。
建物の外壁に命中し、建物全体が揺れて壁が崩れる。
「この建物もあんまり持ちそうにないな」
「もとより砲撃を受けてぼろだったからな、相手からの視線を隠せる盾として使えるだけ有益と考えないとな」
グリフィンが何かに気が付き空を見上げ何かを探す。
「また知らない音が聞こえて来たな。見つけた、ほぉ、これはまた厄介な」
グリフィンが指さす方向に目を凝らすと、上空をプロベラで飛翔する大型ドローンの姿が確認できた。
どこか壊れているのかふらふらと左右に揺れながら向かってきている。
「あれなどんな攻撃をすると思う?」
「よくわからんが大きさ的に戦闘機と変わらないんじゃないか?」
プロペラ音は大きくなっていきドローンを撃ち落としたテンメイたちが飛行機ドローンを撃ち落とそうとした。
飛ぶ大きなドローンが機銃を撃ち爆弾を落下させながら向かってくる。
風斬り音を立てながら落下しベニユキたちが隠れる建物の隣りのコンクリートの建物に当たり崩れた。
建物の中からその様子を見ていたグリフィンがため息をつく。
「空を飛ばれると本当に厄介だな建物の中だと死角が多くて攻撃が追い付かん」
「上ばかり見てると下からも襲ってくるしな、視線が忙しい」
崩れる建物から出てくる者たちがフワフワと浮かぶ円盤型のドローンにつられているグレネードランチャーの弾で吹き飛ぶ。
複数の爆発がし土煙と爆炎が上がるのを見てグリフィンは肩をすくめた。
「まとめてやられたりしないよう分散して隠れていたブラットフォード君の部隊は全滅か、また我々だけになったな」
「こっちは負傷者だらけだってのに、少し動くだけでも体がいてぇなぁ」
「俺も同じだ、お互い無茶で無謀なことをした結果だし仕方ないな。はっはっは」
「なんで楽しそうなんだか……」
「記憶が戻るにつれ、年老いて体が思うように動かなくなってきたことを思い出してな。すごく軽く気分がいいんだ」
「一人で建物から出てった時はうれしくてテンションが上がっての行動だったか、記憶戻り過ぎでぼけ始めたりしないよな?」
「それはそうと、この建物ももう持たないな」
「撤収か、今見たのもあるし外に出るのが怖いな」
壁に入った亀裂が広がっていくのを見てグリフィンは上の階に上がって戦うテンメイやエレオノーラ、テオやアインなどを呼び皆で建物を出る。
建物を出たところに拳銃を乗せたラジコンと円盤型のドローンの待ち伏せを受けそうになるが、近くを飛んでいたから散弾銃で撃ち落とす。
落下中のドローンが遅れて榴弾を撃ちだしベニユキたちの頭の上を通り過ぎて行った先で爆発する。
「危なかった。ドローンは今ので最後? もういない?」
「いません、すべて落としました!」
エレオノーラとテンメイが銃を構えて空を見回す。
大きく旋回し飛行機型のドローンの機銃の掃射が大地を斬るようにしてベニユキたちの方向へと迫ってくる。
負傷したキュリルをテオが抱えて躱し、ベニユキたちも転がって機銃の射線から外れた。
銃弾を撃ち尽くすと大きなドローンは高く高度を取り推進力を生み出していたプロペラをパージし機種を下に向けそのまま落ちてきた。
「向かってくるぞ! 体当たりする気だ!」
「あれ自体も爆弾なのかよ」
落下中にバランスを取っていた羽がもげ方羽根でバランスを崩した飛行機型のドローンが建物に落ち、ついさっきまでベニユキたちがいた建物が大きな音を立てて倒れる。
建物が崩れた建物の土煙に紛れて瓦礫の町まで逃げ込む。
一息つく暇もなく丘の上にいつの間にか丸っこい小型の無人戦車が二両登ってきており砲撃をしてくる。
瓦礫が宙を舞い木片やコンクリート片が降り注ぐ。
丘までは距離が遠く逃げる方向とは逆でバットを持って走っていくこともできず、ただ降り注ぐ瓦礫から頭を守り砲撃から逃げるように建物の瓦礫を盾にして走っていく。
「怪我をしてると辛いな、遅れているぞベニユキ君」
「こっちは足を痛めてる、歩くのもしんどいくらいなんだ」
痛む体に鞭打ち体を動かし走り手当された包帯に血が滲む。
次第に先を進むテンメイたちから離されていき、ベニユキとグリフィン二人に戦車の砲撃が集中する。
「向こうが照準器か砲身が曲がっているようなポンコツでなければ、ゆうに二桁は死んでいるな!」
「攻撃の速度が落ちたと思ったら、戦車片方自爆したのか。だからといって一発でも当たれば死ぬんだけどな」
榴弾を撃ち尽くしたのか建物の瓦礫を突き抜けて砲弾がベニユキの前を通り過ぎる。
「今の当たったら体バラバラになるんじゃないか」
「肉片が残ればいいな、爆発がなくなった分逃げやすくなったな」
「オートマトンは無事なのか?」
「ああ、相手にもされていないようだな」
砲撃を続ける戦車の横を大量の金属を乗せたオートマトンがのそのそと歩いていく。
「あれ、もう、仲間なんじゃないのか!?」
遠くからジェットの音が響き丘の向こうから小型のミサイルが飛んでくる。
広範囲に着弾し先を走っていたエレオノーラたちの付近に飛んできた一発が落ちて爆発した。
何人かは吹き飛ばされた後もすぐに立ち上がり逃げ出す。
ベニユキは追いつき倒れ込んだエレオノーラを立たせる。




