めぐる箱舟 2
鉄を回収していくオートマトンを眺めているグリフィンたちと別れ、ベニユキは怪我した足を引きずりながらトラックを倒すために歩いてきた道を戻る。
エレオノーラたちはその場所に近づくのを拒み歩みを止め、ベニユキ一人で鉄の雨を受けた無残な亡骸のもとへと向かう。
「マルティン……、悪いまた俺が判断を間違えた……。戦いが続けばみんなが無事で帰る日も来るんだろうか」
死者の埋葬を済ませオートマトンを置き去りに丘の上に上る。
破壊した戦車とトラックの残骸が上げる黒煙が高く昇り、それを背にして怪我人たちに歩みを合わせゆっくりと進み丘の上で見張りをしていたキュリルたちと合流する。
「見たところ敵はいないな?」
「そうだな。ここで出会った兵器たちはラジコンみたいなの以外は真っ黒な排ガス出してたし、それがが見えないのなら大丈夫なんじゃないか」
グリフィンが箱舟の出入り口のある倉庫の方を見ているとキュリルが指をさす。
「向こうに黒煙が見える、町の奥。複数」
先ほど倒したトラックの進もうとしていた町の奥に黒煙を吹きだす大きな影が見える。
「またあのトラックか……」
「些細なことだがダンプカーといった方がいいのではないか? それはさておき、倒せる力は残っていない。ここは逃げた方がいいだろう、オートマトンは守る対象ではないから今回は放っておいてもいいのではないか」
「身を隠すか。オートマトンを破壊されてその分も追加なんて理不尽なことは言わないだろうな」
負傷者が多くグリフィンたちやブラットフォードは屋内に逃げ込む。
「あれも兵器を積んでいるんだろう? ここにいてもやり過ごせるとは思えない、他に散らばっているものたちを探して合流したい」
「怪我人を置いてなら倉庫までも戻ることはできるだろうな。オートマトンが戦ってくれるのなら別だが」
「死んでも蘇るからといって生きている人間を見捨てはいけない、あなただって怪我人じゃないか」
「そうだ、こちらで引き付ける。そうすれば比較的安全に帰ることができるだろう」
「ベニユキ君はどう思う?」
「ベニユキ君ならどうする?」
2人はベニユキの方を見る。
「おれ!?」
「ああ、一応は彼女らたちをまとめているからリーダーとしての意見を聞きたいな」
「……なら、みんなで脱出しよう。箱舟のそばまで寄ればミカが返事をしてくれるだろう。オートマトンを借り負傷者を乗せて帰還する、走れる誰かを倉庫に向かわせて残ったみんなで戦う」
「戦車を破壊できるバットはグリフィンさんと私たちが使っていた3本だけ。ただ、勇敢な者は負傷しているか死亡した。ここにいるのは臆病がゆえに生き残っているものたちだ、彼らに命はってくれと言っても首を立てには振ってくれないだろうな……も、もちろん私も……嫌、だぞ」
「待ってくれ、何か音が聞こえる」
空の彼方からゴォォと何かが低い音を立てて向かってきている。
「また聞いたことの無い音か」
「これミサイルの音では?」
丘の向こうから音を立てて飛んでくるミサイルが住宅街に落ち土煙を上げた。
慌ててエレオノーラたちが建物の奥へと非難していく。
「さっきのバギーか」
「範囲攻撃が広く命中率の少なさを数でカバーする。なかなか苛烈だな、ここから出られないぞ」
空中爆発や変な方向に飛んでいくミサイルもあるが飛んでくるミサイルのほとんどが瓦礫の町へと降り注ぎ、ベニユキたちが隠れるコンクリートの建物にも命中し一部が崩れる。
一分ほど破壊音が続いたのち辺りは静かになった。
「撃ち尽くしたか?」
「遠くに見えたあの大きなのが補給能力を持っていたら、しばらくしたらまた撃ってくるだろうな」
「その前に破壊しないとだめか?」
「ところで丘の向こうで戦闘音が聞こえないな。オートマトンはどうなった?」
外を見れば丘の上から降りてくるオートマトンの姿が確認できる。
姿勢を低くして移動しグリフィンが窓からそっと覗き、ブラットフォードが壁の亀裂から外の様子をうかがう。
「普通にいるぞ倉庫に向かって蟻の行列みたいに歩いてる。鉄を抱えて歩いているな、攻撃を受けていない」
「俺らより目立つだろ、どうしてあんなどうどうと」
「何かのステルス? レーダーに感知されないようになっているのか?」
「味方と同じ信号出して誤認させてるってのもありそうだな?」
今のうちに少しの犠牲を覚悟して逃げるかどうかを考え込むベニユキ。
「ブラットフォード、頼みがある」
「できそうなことならばやるが、あまり無茶を言われても答えられないぞ」
「さっき言った箱舟まで戻る役をやってくれないか?」
「私がか……わかった、行くなら今しかないもんな。ちゃんと引き付けてくれよ」
武器を持ち立ち上がるとすぐにブラットフォードは建物を出て倉庫のある方へと走っていく。
ドローンがブラットフォードを見つけ高度を落とし追尾する。
「なら俺たちは精一杯囮をやらないとな」
グリフィンが銃を構え外を見た。
向かってくる飛行ドローンの群れに向かって射撃を開始。
戦闘音を聞き隠れていたテンメイたちも武器を構えてドローンを落とし始めた。




