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異界巡行の世界 箱舟天使は異界を旅して帰還する  作者: 七夜月 文
1章 --永久を繰り返すアルカアンヘル--
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めぐる箱舟 4

「大丈夫か!」

「ううん、頭ぶつけたみたいでふらつく。真っすぐ歩けない……です」


「とりあえず、隠れようここは見通しが良すぎる」

「……はい」


 先を進むテンメイたちは街を抜け倉庫街の方へと消えていく。

 グリフィンもなんとか町を抜け出していた。


「怪我の具合は?」

「大丈夫、頭がグワングワンするけど擦り傷だけです」


「なら逃げよう、モーター音が聞こえる。あのラジコンが迫ってきてる」

「はい」


 エレオノーラが散弾銃を構え音が迫ってくる方に構えて待つ。

 瓦礫の乗り上げ飛び跳ねてきたラジコンをエレオノーラが散弾銃で吹き飛ばす。


「戦ってくれて助かるよエレオノーラ」

「人や生き物でなければ、なんとか。それでも音が怖いですけど」


「今日は助けてもらってばかりだな」

「いえ、私にはこれくらいしか。みんなと違って大きな相手に飛び掛かっていく勇気もないです」


「別にみんなみんな俺らみたいに無謀に突撃すればいいってことでもないから。グリフィンと違って俺らは戦闘の素人だし、少し怖いが死んでも生き返るのならいろいろ試していかないとな」

「死ぬだなんて、やめてくださいベニユキさん。たとえ明日になったらまた会えるとしても、死んだ姿を見るのはすごく辛いです……」


「……そうだな」


 2人も住宅街を抜け倉庫街へとたどり着く。

 ミサイルが降り注ぎいくつかの倉庫が崩れている。


「色々壊れてしまってますけど帰りは大丈夫でしょうか」

「大丈夫だといいな」



 箱舟のある倉庫の近くまで来た時、エンジン音がどこからか響いてくる。

 倉庫の壁に反響し音の聞こえる方向がわからないでいると、近くの倉庫を突き破って一台の戦車が現れた。

 戦車は車体を回しベニユキたちに向くと黒煙を吹かして真っすぐ向かって走りだす。


「砲弾を撃ってこない」

「弾切れか?」


 戦車の大砲は四方に裂けており機銃はついていない。

 向かってくる戦車から近くの倉庫を盾にして二人は逃げ出す。


「壊れて撃てなくなったか」

「昔ストローであんな感じの玩具作りました」


 逃げながらベニユキは戦車めがけて突撃銃を撃つが、弾は装甲でただただ弾かれ小さな火花を散らす。


「効かないんじゃないですか?」

「誰かが戦っていることに気が付いてくれれば、手を貸してくれると思ってな」


 戦車は執拗に二人を狙って追ってくる。

 幸い小型で横幅もなく速度も速くはないため避けることだけはできた。

 しかしそれだけで二人が持っている銃じゃ損傷を与えることもできずただ逃げるだけ。


「厳しいな、体も痛いし逃げ切るのは無理そうか……エレオノーラ、俺を囮に……」

「あの。不発弾、不発弾を踏ませるってのは!」


「なるほど、いこうエレオノーラ」

「はい!」


 町へと戻り砲撃で空いたとみられるクレーターの方へと戦車をひきつける。

 踏み戦車の足元で爆発撃破まではできなかったが履帯を断絶し、戦車は残った履帯だけを回しその場で半回転をして止まる。


「止まった」


 砲塔が回転してベニユキたちの方を向くが、大砲は壊れており砲弾は出ず移動する二人を追いかけてくるだけ。

 あとから追ってきたブラットフォード達が動けなくなった戦車を破壊しその場を離れる。


「戦闘音は聞こえていたんだ、でも助けに行くのに手間取ってしまった……」

「いいや、来てくれただけでもうれしいよ。グリフィンは?」


「負傷者は先に帰ることが許された、だからもう箱舟の中だ」

「そうか、向こうの酷い怪我だったし俺たちが戻るときはもうカプセルで眠ってるだろうな」


「私らもベニユキ君たちを連れ帰れば箱舟に戻れる」

「……それで渋々助けに来たってことはないよな?」


「ばっ、馬鹿を言うな……そんなわけ……ないだろう……」

「おいおい……そこはもう少しハキハキいうべきところだろ」


 次のミサイル攻撃が始まる前にブラットフォードたちに守られベニユキたちは倉庫へと向かう。

 倉庫に戻ってくると鉄塊を積んだオートマトンがエレベーターに乗り込み箱舟の中へと戻っていくところ。

 穴の中へと消えて行くと空中に箱舟へと続く穴が何に支えられることなく浮いている。


「金属が集まったのかどうかわからないが、俺たちは帰れるのか?」

「連れ戻してきたんだし大丈夫だろ、グリフィンたちは帰ることを許されたし。なぁ、箱舟、生存者はここに全員集まったぞ、帰してくれ!」


 ブラットフォードが問いかけると箱舟からミカの返事。


『確認しました、それでは次のエレベーターで昇ってきてください』

「どれくらいで戻ってくる?」


『すぐにでも』


 話している間に鎖の音が響き空のエレベーターが降りてきた。

 ベニユキたちは降りてきたエレベーターにに乗り込みその世界に別れを告げ帰還する。

 ブラットフォードたちは戦闘から解放されて大きく安堵の息を吐く。


「終わったか。ああ、気が滅入る。毎朝戦いの疲れはとれているが心の疲れはとれない休みが欲しい」


 ホログラムが出てくることはなく暗闇から響いてくるミカの声。


『皆様お疲れ様でした。現在重量を計算中ですがおよそ1500トンほどの金属の回収が見込まれます』

「あのトラックで十分足りたのか、よかった」


『しかし予定する量にはおよそ半分ほど足りず、明日もまた金属の回収をお願いします。本日の被害状況ではこれ以上の成果は見込めませんので、本日は一時終了となります』

「足りなかったか」


『そしてこれからは皆さまの戦闘データの蓄積を蓄える目的とし生存を優先します。任務の進行具合にかかわらず戦闘継続不能となった負傷者の回収を行います。ただ、箱舟の出口は移動できませんので自力で戻ってきてもらうことになりますが』

「それは助かる、怪我人を連れたまま移動するのも大変だから。つっても戦闘が嫌だからって自分から怪我をしに行ったら箱舟に消されそうだがその辺りの線引きが怖いな。今日の俺振り返ったら無茶な自殺行為だったし」

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