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その先にあるもの① 別れ

文化祭が終わり、しばらくして僕は学校近くの公園に由美子に呼び出された。

「どうしたの?こんなところに呼び出して。」

「どうしても、話したいことがあったの。」

由美子が沈んだ声で言った。そして、しばらくの沈黙の後、由美子が意を決したように言った。

「私たち、もう終わりにしましょう。」

「えっ、どうして?」

僕は急な話に当惑しながら言った。

「私には分かっているの。大河君の心の中には別の女の人がいるってことを。そんな大河君とは、これ以上一緒にいることはできないわ。」

「それって、彩音さんのこと?それは分かってくれていたんじゃ・・・。」

「違うわ。六城さんのことじゃないの。」

由美子は俯き、小さく首を振りながら言った。

「じゃあ、誰のこと?そんな女の人いないよ。」

僕は必死になって言った。

「分かってるくせに!私に言わせないで!」

由美子は怒って言った。その目からは涙が溢れてきていた。僕は、ここでようやく気付いた。

そうか、風宮先生のことかと。確かに風宮先生への憧れと言うか淡い想いは日に日に大きくなっていることは何となく自分でも分かっていた。由美子はそんな僕の心の変化を敏感に感じ取っていたのだ。由美子に悪いことをしたなと、僕は今思った。

「ごめん・・・。」

僕はそれだけを絞り出すように由美子に言った。

「それじゃあ、さようなら。」


 そう言って由美子は後も見ず、去っていった。僕は公園に1人残された。僕はすぐに帰る気になれず、ベンチに腰を下ろした。確かに風宮先生と一緒に過ごすうちに先生への想いは大きくなっていたが、それは許されないことだと思ってそこまで深刻には考えていなかった。改めて、由美子に悪いことをしたなと思った。こぼれた水は元には戻らない、と言うが僕たちはもう元には戻れないなと思った。まさか、こんな形で由美子と別れるとは思わなかった。先生への想いはもう消せないくらいに大きくなっているが、僕にはどうすればいいのか分からなかった。先生は僕のことは何とも思っていないだろうし、今の先生との関係を壊すことも僕には嫌だった。いろいろと考えたが、結局何の答えもでないまま僕は帰宅した。


 それから、由美子は僕のことを避けるようになった。仕方のないことだと思ったが、何だか寂しかった。僕のことも、「大河君」ではなく「桧室君」と呼ぶようになった。僕も、「由美子」と呼ぶのは憚られたので、「武隈さん」と言うようになった。そんなある日、今度は乾君から近所の公園に呼び出された。

「おい、桧室、武隈さんと別れたらしいな。武隈さんが泣いてたって斎藤が言ってたぞ。どういうことやねん!」

乾君は僕の胸倉を掴んで詰問した。

「ごめん実は他に好きな人が出来てん。」

「それは誰やねん!」

「それは・・・。」

僕は言い澱んでしまった。

「俺にも言われんのか?」

乾君が相変わらず怒った声で言った。

「そんなことないけど、ちょっと待ってくれる。」

僕がそう言うと、乾君は胸倉から手を放してくれた。僕は、そのままその場所にへたり込んだ。そして、しばらく呼吸を整えて、覚悟を決めて言った。

「風宮先生なんだ。」

僕がそう言うと、乾君はびっくりした表情になった。

「風宮先生って・・・。桧室、本気か?」

乾君も予想外の答えだったみたいでどう言っていいか分からない様子だった。

「僕も自分の気持ちに戸惑っているんだ。どうしていいか分からなくて・・・。」

僕は力なく言った。

「思い切って先生に想いをぶつけてみたらどうや。」

乾君が言った。

「それは出来ないよ。先生と生徒だし。先生は僕のこと、何とも思っていないだろうしね。それに、今の先生との関係を壊すようなことはしたくないんだ。」

「そしたらこのまま諦めるのか?それでいいのか?」

「諦めたくはないけど・・・。」

「それなら、やっぱり先生に想いを伝えるべきとちゃうか?」

「今は出来ないよ。」

そこからベンチに座って乾君とああでもない、こうでもないと話し合っていた。

そして、僕は1つの結論に達した。

「それじゃあ、卒業式の日まで待って、卒業式が終わったら先生に僕の想いを伝えるよ。」

「卒業式って・・・。まだ2年以上もあるねんぞ。それまで我慢できるのか?」

「それまでは我慢して待つよ。今は先生、付き合っている人はいないって言ってたけど、その間に先生に彼氏が出来たりしたら、キッパリ諦める。」

僕は地面をじっ見つめてそう言った。

「そうか、桧室はそれでいいんやな。」

「うん。いいよ。」

1つの結論が出て、僕は気が楽になり迷いなく言った。


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