現在(いま)を生きる⑧ すれ違い
それからしばらくして1学期の終業式があった。梅雨も明け、本格的な夏が始まり、学校も夏休みに入った。夏休みも部活のために登校していた。夏休みの課題もあったので、部活が終わったあと、由美子と2人で図書室で課題をしたりした。休みの日は、由美子とデートに行ったりした。夏休みの間に、いろいろと自分たちで調べたりして、お互いに具体的な進路も決めた。
僕は、社会復帰を目指すリハビリの仕事をしたいと思い、福祉というよりも、どちらかというと医療の分野になるが、理学療法士を目指すことにした。由美子はというと、介護の現場で働きたいと言って、介護福祉士を目指すことになった。
束の間の夏休みも終わり、2学期が始まった。高校生活にもすっかり慣れて、授業に部活、由美子との時間と、僕は充実した時間を過ごしていた。2学期に入ると、僕は1学期に進路指導室で言われた難易度の高い問題を風宮先生にお願いすることにした。具体的な進路が決まり、僕の目標は自宅から通うことのできる理学療法科のある公立の大学だった。そこに行くには、それなりの学力が必要になって来るので、今から頑張っていこうと思ったからだ。風宮先生は快く引き受けてくれたが、由美子は少し複雑な顔をしていた。
2学期に入ってしばらくすると文化祭の準備期間が始まった。僕のクラスの出し物は、フランクフルトとジュースを売る模擬店に決まった。また、クラブでも出し物が決まった。空手道部では、模擬店で、焼きそばを売ることになり、ボランティア部では、文化祭中の校内清掃と活動の展示に決まった。それから文化祭までの期間は準備に忙殺された。数日後、文化祭が始まった。
文化祭は金曜日と土曜日の2日間だ。担当の時間以外は自由に行動できるが、僕は自分のクラスと空手道部、ボランティア部の3つ分の担当があったので、なかなか自由時間は取れなかった。
そこでちょっとした事件が起こった。僕が空手道部の担当で焼きそばを作っていた時、材料が足らなくなってきたのだ。ちょうど、風宮先生も様子見がてら手伝いに来てくれていたので、材料の買い出しに行くことになった。
「桧室君、この後はどこかの担当に入っているの?」
風宮先生が野菜を切りながら聞いてきた。
「いえ、この後は自由時間です。」
僕は焼きそばを焼きながら言った。
「それじゃあ、材料の買い出しに行くからついて来て。」
後を残りの部員にお願いして先生と僕は近くのスーパーまで先生の車で不足の材料の買い出しに出発した。僕は先生と2人で買い物に行けるのが嬉しかった。
「どう?文化祭楽しんでる?」
買い物をしながら先生が言った。
「はい。とても楽しいです。」
僕は買い物カートを押しながら答えた。文化祭も楽しかったが、今こうして先生と買い物をしているのもとても楽しかった。買い物を済ませ、先生と僕は学校に戻った。駐車場に車を停め、2人で買い物袋を持ちながら、空手道部のテントまで戻って行った。
その様子を遠くから見つめている人物がいた。由美子だった。その顔はとても悲しそうだったが、僕はそれに気付くことはなかった。




