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現在(いま)を生きる⑤ みんなで勉強会

 それから、しばらくは平穏な日が続いた。学校の授業とクラブ活動、そして土曜日や日曜日は由美子とデートしたりしていた。僕たちが付き合い始めたことを乾君たちに報告したら、「おめでとう。」と祝福してくれた。

 そして、5月になりゴールデンウィークも過ぎると、中間テストが近づいてきた。高校に入って初めての定期テストだ。彩音さんのためにも、由美子のためにも、そして公立行きを許してくれた両親のためにも頑張らなくてはいけないなと思った。普段から、予習・復習は欠かさないようにしているので、そんなに焦りはなかった。テスト1週間前になるとクラブ活動も禁止になるので、勉強に集中することができた。

 そんな時、乾君が、「日曜日にみんなで勉強会をしよう。」と提案した。中学の時はそんなことしたことなかったので、僕は好奇心から参加してみることにした。場所は乾君の家ですることになった。メンバーは、乾君、斎藤さん、由美子、そして僕の4人だった。上林君も誘ってみたが、道場の都合で参加できないとのことだった。時間は午後からで、みんな昼食を済ませてから乾君の家に集まった。僕は一番最初に到着した。インターホンを押して応答を待った。すると、玄関に乾君が現れ、「入れよ。」と言って家の中に案内してくれた。


 乾君の家は久しぶりだった。小学生の時にはよく遊びに行かせてもらっていたのが懐かしく思い出された。

「おじゃまします。」

そう言って僕は乾君の家に入った。そして、用意してきたお菓子を乾君に渡した。

「わざわざ、気を遣わんでもいいのに。」

そう言いながら乾君は受け取った。すると、そこへ乾君の母親が現れた。

「あら?桧室君じゃない。久しぶりね。元気にしてた?」

乾君の母親は、何度も遊びに来させてもらっていたので顔見知りだった。

「はい。ご無沙汰しています。今日はおじゃまします。」

「ゆっくりしていってね。」


 そう言うと奥の部屋に戻って行った。それから、斎藤さん、由美子が到着した。メンバーが揃い、勉強会が始まった。勉強会は、基本的には自分の勉強をして分からないところを教え合うという形だった。何だかんだで、結構僕が教えることが多かった。人に勉強を教えるのも楽しかったし、自分の身にもなるなとこの時思った。

「やっぱり、桧室は頭がいいな。」

乾君が感心したように言った。

「そんなことないと思うけど。」

「ちょっと疲れたから休憩しようぜ。」

乾君がそう言って大きく伸びをした。

「賛成。」

斎藤さんと由美子が言った。そして、休憩がてらのティータイムが始まった。

「ところで、桧室と武隈が付き合うきっかけって何なん?」

ジュースを飲みながら乾君が聞いてきた。

「私も知りたいわ。」

横から斎藤さんも言った。

「それは・・・。」

僕はどう言おうか迷っていると、

「私から告白したの。実は前から桧室君のことがいいなって思ってたから。」

と由美子が少し照れながら言った。

「そうやったんや。桧室、モテるなあ。」

乾君が笑いながら言った。

「武隈さんのこと、泣かせたら許さないからね。」

斎藤さんも笑いながら言ったが、その目は笑ってはいなかった。束の間の休憩も終わり、僕たちは再び勉強会を始めた。みんなでする勉強もいいもんだなと思っているうちに、あっという間に時間は過ぎ、夕方になっていた。


「もう夕方になったし、そろそろ終わりにしよっか。」

由美子が言った。

「そうね。」

「そうやな。後は各自で頑張ろうな。」

斎藤さんと乾君が言った。こうして、勉強会が終わった。

「おじゃましました。」

僕たちは、家の人に礼を言い、乾君の家を後にした。

「家まで送っていくよ。」

僕は由美子に言った。

「ありがとう。」

由美子は素直に言った。僕たちは自転車だったけど、2人で押して歩いた。

「どう?大河君。中間テストできそう?」

僕の横で自転車を押しながら由美子が言った。

「どうかな。でも、いろんな人の絡みもあるからある程度結果は残したいなと思ってるよ。」

僕も自転車を押しながら言った。

「いろんな人って、六城さんのこと?」

「うん。それもあるけど、何よりも無理を言って公立に行かせてもらった親に申し訳が立たないからね。」

「そっか、大河君が私立の出身だったって、もう忘れかけてたわ。」

「そんなものなのかなあ。」

「そんなものだと思うわよ。何かきっかけがあればみんな思い出すとは思うけど、普段は何とも思ってないと思うわ。付き合ってる私でさえ忘れそうになるくらいだから。」

そんな話をしながら歩いていると由美子の家に着いた。

「ありがとう。送ってくれて。じゃあテストお互いに頑張ろうね。」

「うん。頑張ろう。」


 そして、中間テストが始まった。頑張って勉強した効果はテキメンで、全教科かなりの高得点を取ることができた。テストの上位者が掲示板に貼りだされた。何と僕はダントツで学年1位だった。素直に嬉しかった。

「やっぱりすごいな。桧室は。また勉強教えてな。」

と掲示板を見た乾君が言った。

「桧室君。よく頑張ったね。放課後ちょっと進路指導室に来て。」

風宮先生にそう声をかけられた。僕は(何だろう?)と思いながら放課後になり、進路指導室に向かった。

「失礼します。」

僕は進路指導室の中に入った。そこには風宮先生がいた。

「わざわざごめんね。こんなところに呼び出したりして。まあ、座って楽にして。」

「はい。」

僕は先生と向かい合うような形で座った。

「この間の中間テストだけどかなり勉強した?」

「はい。僕なりに頑張りました。」

「そうね。成績を見させてもらったけど、ダントツの1位だったわね。」

「ありがとうございます。」

「それで、桧室君には希望する進学先はもう決まっているの?」

「いえ、まだ決まっていません。福祉関係に進みたいとは思っていますが、具体的には何も決まっていません。」

「そうなの。これだけの成績を取るからもう具体的な進学先を決めているのかと思ったわ。

もし、上位の大学に進学希望だったら言ってね。うちの高校ではそこまで高度な内容は扱わないから、別に難易度の高い教材を用意できるから。それか、塾か予備校に行くのもいいかもね。」

「ありがとうございます。そんな特別扱いを受けてもいいのですか?」

「別に特別扱いじゃないわよ。今までの卒業生にも結構いたわよ。だから気にせずいつでも声をかけてね。」

「分かりました。その時には是非お願いします。」

僕は礼を言って進路指導室を後にした。進学はいいけど、まずは具体的な進路を決めなくてはいけないなと思った。ふと見ると、由美子が立っていた。


「何の話だったの?」

心配そうに由美子が言った。

「進路の話。どこか希望の進学先は決まっているとかって。」

僕はさっき先生と話した内容を由美子に説明した。

「ふーん。そうだったの。大河君、ダントツで1位だったもんね。大学は一緒のところにはいけないかもね。」

由美子は少し寂しそうな顔をして言った。

「まだ分からないよ。僕は福祉関係に進みたいし、進学先をレベルや名前で決めるつもりはないからね。」

「でも、勿体なくない?せっかくすごい成績だったのに。」

「勿体ないと思うんだったら、ここに来ないでそのまま上陽館高校に行ってるよ。」

僕はそう言って笑った。

「今は学校の名前を考えるより、やりたいことを決める方が先だと思うよ。」

続けて僕は言った。

「それもそうね。福祉関係とは言っても私たちまだ具体的には何も決まってないもんね。」

納得した様子で由美子が言った。

「さあて、今日もクラブ頑張ろっか。」

「そうね。」

 今日は水曜日でお互いにクラブのある日だ。由美子は新人戦に向けて、僕は来年の昇級試験に向けてそれぞれ頑張っていた。僕はまだブランクを埋めるのに必死で試合はもう少し先だと言われているので、試合に出られる由美子が少し羨ましかった。かといって、今僕が試合に出ても惨敗するだけでなく、怪我をする恐れも大きいと思うが・・・。


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