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現在(いま)を生きる③ 武隈さんとデート?

 その夜、1通のメールが来た。武隈さんからだった。

〈今日は楽しかったね。ところで、次の日曜日って空いてる?〉

 僕は、ベッドに横になり返信を打った。

〈空いてるけど。何かな?〉

〈一緒に映画見に行かない?私、見たい映画があるんだ。〉


 これはいったいどういうことなのかな?と僕は思った。普通に考えればデートの誘いだけど、そんなことあるのか?と僕は思った。何故なら、つい先日彩音さんの件でいろいろとあったからだ。そんな過去を引きずってそうな男子を、果たしてデートに誘うだろうか?僕は自問した。でも、恋愛経験も彩音さんしかない僕には武隈さんの思いは分からなかった。

 おそらく、デートの誘いではなく、友達として誘われたんだと思うことにした。クラスで席も隣で、ボランティア部でも一緒に行動することが多いからかな、と思った。そして、僕は返信を打った。


〈どんな映画かな?〉

〈人気恋愛小説を実写化した映画なの。いいかな?〉

〈うん、いいよ。楽しみにしてるよ。〉

〈良かった。ありがとう。私も楽しみだわ。〉


 その後、待ち合わせの時間や場所のやり取りをした。10時にK駅の改札で待ち合わせになった。デートではないとは思うけど、どうしても少し意識してしまう。そんなことを思いながら、僕は眠りについた。


 そして、映画を見に行く日になった。

僕は自転車に乗り、待ち合わせ場所のK駅の改札に向かった。4月も中旬になると、暖かいというよりもむしろ、暑く感じるくらいの陽気だ。僕は、Gパンに長袖のTシャツという服装にした。ペンダントをどうしようかと思ったが、付けていくことにした。ちょっと薄着かなと思ったけど、ちょうどいいか、やや暑いくらいだった。

 待ち合わせ場所に着くと、もう武隈さんは来ていた。いつもは、なびかせているセミロングの髪を今日は2つにくくっていた。服装は、可愛らしい柄の長袖Tシャツとデニム生地のロングスカートだった。彩音さんもそうだったが、制服と私服とではイメージがかなり変わるもんだなと改めて僕はそう思った。


「ごめん。待った?」

僕は武隈さんの横に駆け寄って言った。

「ううん。私もさっき来たとこだから。桧室君の私服カッコいいね。」

そう言って武隈さんは微笑んだ。

「武隈さんの服もカワイイよ。今日は髪型変えたんだね。」

と僕も笑顔で言った。

「そうなの。似合ってる?」

「うん。似合ってるよ。」

「ありがとう。じゃあ行こっか。」

 僕たちは目的地の難波駅までの切符を買い、ホームに向かった。日曜日のこの時間だけどホームにはわりと人がいた。

「これじゃあ、座れないかもね。」

武隈さんがホームを見渡して言った。間もなくして電車が来た。難波行の急行電車だ。降りる人はほとんどいなく、僕たちは電車に乗り込んだ。電車が来た段階で、空いている席はなかったので、僕たちは並んで立った。

「やっぱり座れなかったね。」

吊革を持ちながら武隈さんが言った。

「日曜日だけど、難波に遊びに行ったりするひとが多いみたいだね。」

僕も吊革を持ちながら言った。電車の中は、若者のグループや、中年女性、カップルなどでかなり混雑していた。急行電車だけど、途中で何駅か停車し難波駅に到着した。


「映画は昼からだから、先に映画のチケットだけ買ってお昼ご飯にしよっか。」

武隈さんが腕時計を見ながら言った。

「そうだね。」

 僕たちはチケットを買いに映画館へ向かった。映画館のチケット売り場は、ちょうど今が上映中みたいで空いていた。僕たちは、売り場でチケットを買った。結構、人気作らしく空席は少なかったが、2人並んで席を確保することができた。

「それじゃあ、ちょっと早いけどお昼ご飯にしよっか。」

僕は時計を見ながら言った。今ちょうど11時ぐらいだ。映画の開始時間は13時00分なので十分に時間がある。

「そうね。何食べる?私、あんまりここら辺の食べる場所分からないの。」

「僕もあまり分からないけど、時間もあるし歩きながら探そっか。」


 僕たちは映画館を出て、昼食場所を求めて歩き出した。彩音さんと言ったカフェが頭に浮かんだが、なんとなく武隈さんに悪いと思って提案するのをやめた。僕たちはウィンドウショッピングがてら繁華街を歩き回り、地下街にある洋風レストランで昼食を食べることにした。時間も11時半を回り、店内は少しずつ込み始めていたが、待たずに席に着くことができた。

「良さそうなお店があってよかったわ。」

武隈さんがメニューを見ながら言った。

「うん。すぐに座れて良かったね。」

僕もメニューを見ながら言った。2人でかなり迷っていたが、武隈さんはチーズドリアを、そして僕はパスタのナポリタンを注文した。そんなに待つことなく、僕たちの注文した料理がやって来た。

「おいしい。」

チーズドリアを一口食べて武隈さんが言った。

「うん。おいしいね。」

僕もナポリタンを口に運びながら言った。確かに美味しかった。僕たちは学校のことなどを話しながらゆっくりと食事をした。その時間はとても楽しかった。食べ終わり、会計を済ませて僕たちは店を後にした。そろそろ映画の時間が近づいてきたので、僕たちは映画館へと向かった。映画館のロビーは上映時間が近づいてきているせいか、かなり混んできていた。


「何か買う?」

僕は飲食物を売っている売店を指さして言った。

「そうね。飲み物でも買おうかな。」

武隈さんが売店をチラっと見て言った。僕たちは売店の列に並んだ。僕はコーラを、武隈さんはウーロン茶を買った。そうしているうちに映画の時間になったので、僕たちは入り口でチケットを見せて中に入った。指定された席に並んで座り、上映を待った。予告が始まり、本編が始まった。メールで武隈さんの言っていたとおり、恋愛ものの映画だった。僕には全く知らない話だったけれど、ストーリーも良く、気が付いたら熱心にスクリーンに見入っていた。クライマックスは感動的だった。思わず涙が出そうになるほどだった。映画が終わり、僕たちは外に出た。

「いい話だったね。思わず泣いちゃいそうになったよ。」

僕は歩きながら言った。

「そう。いいお話でしょ。私は泣いちゃったわ。」

武隈さんはそう言うと少し照れ臭そうに笑った。

「これからどうする?」

僕は立ち止まって聞いた。


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