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現在(いま)を生きる② 施設訪問とレポート

 日は過ぎていき、施設訪問の日になった。今日の訪問先は市内にある介護老人保健施設のN園だ。ひとまず、希望者が学校に集合して、学校からみんなで行く形となっていた。ちなみに、介護老人保健施設とは、簡単に言うと在宅への復帰を目的としたリハビリなどを行う施設のことだ。

 12時30分になり、顧問の先生と参加者がそろった。もちろん、僕も武隈さんもいた。そこからバスと電車を乗り継ぎN園へと向かった。およそ、1時間でN園に到着した。今日は14時からのレクリエーションへの参加とお手伝いだ。僕は施設に入るのはもちろん初めてなので緊張していた。施設の入り口で、顧問の先生がインターホンを鳴らした。


「はい、こちらN園です。どちら様でしょうか?」

インターホンから声がした。

「本日、お世話になります。暁南高校のボランティア部です。」

「はい、少々お待ちください。」

しばらくしてN園の職員の人が現れた。

「本日はようこそお越しくださいました。どうぞこちらへ。」

そう言って僕たちを施設内に案内した。用意してきた上履きに履き替え、中に入った。そこから、会議室のようなところに通され、この施設の簡単な説明と今日のレクリエーションの説明を受けた。時間になったので、レクリエーションが行われる場所に移動した。そこには、もうすでにレクリエーションに参加される利用者の方と職員の方がいた。


「はい、みなさん、今日は暁南高校のボランティア部の生徒さんが一緒ですよ。」

と司会役の職員の人が利用者さんに言った。

「よろしくお願いします。」

僕たちは先ほど説明を受けた通り、バラバラに利用者さんの間に入っていった。

「今日のレクリエーションは折り紙をします。みなさん頑張って作りましょうね。」

 司会役の職員の人が言うと、他の職員が折り紙を配り始めた。僕たちにも配ってくれた。それから折り紙が始まり、鶴や紙飛行機を折ったり、はさみやのりを使って花を作ったりもした。僕たちも自分の分を折ったり、利用者さんの難しい部分を手伝ったりした。最初は緊張していたが、利用者さんとお話をしていくうちに徐々に打ち解けて楽しくなってきた。終わる頃には(もっとやりたいな。)と思うほどだった。

「はい。そろそろ時間なので終わりにします。暁南高校のボランティア部のみなさん、今日はありがとうございました。」


 こうして、初めての施設訪問が終わった。改めて全員で挨拶をしてN園を後にした。また、バスと電車を乗り継ぎ、学校へと戻った。

「今日はお疲れさまでした。みんなは今日の内容をレポートにして提出するように。新入生は初めて書くことになるけど、枚数等に特に制限はないから、自由に書いてくれたらいいよ。提出期限は特にないけど、覚えているうちに早めに書いた方がいいよ。では解散してください。」

と顧問の先生が言った。

「レポートだって?どうしよう。」

武隈さんが困ったような顔をして僕に言った。

「ちょっと先輩に聞いてみようか?」

僕はそう言って、近くにいた先輩に聞いてみた。先輩が答えてくれた内容は、本当に何でもよく、感想や気づいたことなどを自由に書けばいいとのことだった。

「難しく考えなくてもいいよ。」

先輩は笑いながら言った。


「今日このあとヒマ?」

武隈さんが僕の顔を見て聞いてきた。

「うん。特に予定はないけど、帰ってレポートを書こうかなって思ってる。」

「それじゃあ、これからどこかで一緒に書かない?」

「うん。いいよ。どこにする?」

そういって2人で場所を考えて駅前にある喫茶店に行くことにした。筆記具は持っていたが、用紙がなかったので途中のコンビニでレポート用紙を購入した。駅の一時預かりの駐輪場にお金を払って自転車を置いて、僕たちは目当ての喫茶店に入った。

「まず、何か注文しなくちゃね。」

メニューを広げながら武隈さんが言った。僕はアイスコーヒーを注文し、武隈さんはレモンスカッシュを注文した。

「今日は楽しかったね」。

おしぼりで手を拭きながら武隈さんが言った。

「うん。もっとやりたかったなって思った。」

僕も手を拭きながら言った。そして、今日のことを話していると、注文した飲み物が届いた。

「さて、どうしよう。桧室君は何を書くの?」

「そうだね。レポートというより、作文みたいだけど、今日あったことと感想を素直に書いてみようと思ってるよ。」

そう言いながら僕はカバンから筆記用具を取り出した。

「そうね。初めてだし、私も無理せずに今日感じたことを書くことにするわ。」

そう言って武隈さんもカバンから筆記用具を取り出した。2人で話しながら、レポートを書き始めた。僕は今日体験したことを書き、そこに感想を添えるような形式にした。それに、施設には介助以外にもいろんな仕事があるんだなと思ったことも書き添えた。武隈さんの方を見てみると、文章が軌道に乗ったのか、集中して書いていた。しばらくして、

「あー、終わったー。」

武隈さんがそう言って大きく伸びをした。

「僕も書き終わったよ。」

僕は残っていたアイスコーヒーを飲みながら言った。そして、カバンの中の物を整理しようと机の上にカバンの中の物を取り出した。その中に、例のペンダントがあった。


「へえ、桧室君ってペンダントするんだ。」

「ああ、これね。」

僕はどう言おうか迷ったが、武隈さんは僕が彩音さんの家に行ったことも知っているし、相談にも乗ってもらったこともあるから、隠さずに言うことにした。

「このペンダントは彩音さんの形見なんだ。この間、彩音さんの家に行ったときにもらってきたんだ。普段はなかなか着けることができないから、カバンの中に入れているんだ。」

そう言って僕はペンダントをパカッと開いた。そこには、彩音さんの写真があった。

「へえ、そうだったの。これが六城彩音さんなのね。」

そう言うと武隈さんはじっとペンダントを見ていた。

「うん。そう。彩音さんに外の景色を見てもらいたくて持ち歩いているんだ。でも、もう前みたいに引きずってないよ。彩音さんのことを忘れることはできないけど、前を向いて頑張っていこうと思っているから。」

そう笑顔で僕は言った。

「そうなの。頑張ってね。応援してるわ。」

武隈さんも笑顔で言った。

「今日はレポートに付き合ってくれてありがとう。」

「いいよ。僕も書き終えることができたし。それじゃ、帰ろっか。」

僕たちはレジでお金を払い、店をでた。そして駐輪場まで戻り、自転車に乗った。そして帰路についた。


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