現在(いま)を生きる① ボランティア部の活動
僕の高校生活も2週目に入り少しは慣れてきた。月曜日は空手道部の日で火曜日は部活のない日だ。水曜日も空手道部だ。光陰矢の如しとはよくいったもので時間がたつのが異様に早く感じた。そして木曜日を迎えた。今日はボランティア部の初めての活動の日だ。先週は説明だけで活動はなかったからだ。
「桧室君、ボランティア部一緒に行こっか?」
武隈さんが誘ってくれた。
「うん。行こうか。」
そして2人並んでボランティア部のミーティングのある教室へと向かった。教室にはたくさんの生徒が集まっていた。僕たちは空いた席に座った。時間になり、ミーティングが始まった。
「それでは本日のミーティングを始めます。」
部長がそう言うとミーティングが始まった。
「本日は、4月の施設訪問の希望者の集計と5月の施設訪問について決めたいと思います。
新入生のみんなは初めてになるけど、4月は介護老人保健施設のN園を訪問させていただきます。日程は来週の日曜日です。学校に12時30分に集合です。行けるのは15名までなので希望者多数の場合は抽選させていただきます。希望者の方は挙手でお願いします。」
「桧室君どうする?私は希望するけど。」
武隈さんが行く気満々で聞いてきた。
「もちろん僕も希望するよ。」
そう言って2人で手を挙げた。
「はい、えーと13人ですね。今回は抽選なしで決まりましたね。」
と部長が言った。
「はい、質問です。」
武隈さんが手を挙げた。
「何ですか?」
「今日休んでいる部員はどうなるのですか?」
「ああ、参加は無理ですね。先方様の都合もあるから、施設訪問等の行事はミーテイングに参加した部員だけで決めることになっています。」
「分かりました。ありがとうございます。」
「うっかり休めないわね。」
武隈さんが僕の方を見て小声で言った。
「それでは続いて5月の施設訪問について決めたいと思います。今からアンケート用紙を配るので希望する欄に〇をしてください。無記名で結構です。その他を希望する人は具体的に記入してください。」
そう言ってアンケート用紙が配られてきた。そこには、「老人施設」、「障がい者施設」、「児童施設」「その他」と書かれてあってその横に〇が記入できる欄が設けられていて、「その他」の横には記入欄があった。4月に老人施設を訪問させてもらえるので、5月は別の種類の施設を訪問させてもらいたいと思い、僕は「障がい者施設」のところに〇を記入した。
「では、書けた人から前に持ってきてください。」
部長がそう言うと、部員たちがぞろぞろと用紙を部長のところまで持って行った。僕も他の部員に交じって用紙を提出した。
「全員、提出できましたか?まだの人は挙手してください。」
部長が教室を見回して言った。誰も挙手しなかった。
「では、集計しますので、しばらく待ってください。」
そう言うと、部長は手際よく集計していった。
「それでは結果を発表します。集計の結果、5月の施設訪問は障がい者施設に決まりました。
訪問先や日程は、幹部と顧問の先生で決めるので、決まり次第、ミーティングで発表します。
これで、本日の決め事は終わりです。何か連絡事項がある人はいますか?」
誰も挙手する人はいなかった。
「それでは本日のミーティングは終わります。今から清掃活動をします。新入生の人は上級生の人について行ってください。上級生の人は、新入生の人に教えてあげるようにお願いします。」
新入生はどうしたものかと戸惑っていたが、上級生の人が声をかけてくれてついて行った。僕と武隈さんもまごまごしていたら、女性の上級生の人が声をかけてくれた。
「君たち新入生ね。一緒に行こうか。」
「はい。よろしくお願いします。」
そして先輩に倣って、掃除用具をもって教室を出た。
「掃除をするのは学校内と、学校の周りよ。今日は学校の周りに行ってみようか。」
そう言うと先輩は学校の外に向かって歩き出した。僕たちも慌ててついて行った。下足室で下履きに履き替え、学校の外に出た。そして、学校前の歩道をほうきで掃いたり、ゴミを拾ったりした。
「掃除する場所の割り当てって決まっているんですか?」
ゴミを拾いながら武隈さんが先輩に質問した。
「そんなことないわ。みんな適当に散らばって、空いているところを掃除するって感じね。いつも部員全員が出席するわけじゃないから、いちいち決めてられないの。」
先輩もゴミを拾いながら答えた。そこから、お互いに自己紹介をして、いろいろと話をしながら掃除をした。しばらく話をしながら掃除をしていたが、
「そろそろ戻ろっか。」
と先輩が言った。僕たちは集めたゴミをゴミ捨て場に捨てて教室に戻った。教室には、もう半分以上の部員が戻っていた。掃除をきっかけに仲良くなったのか、あちらこちらから楽しそうな話し声が聞こえてきた。僕たちも座って雑談をしていた。そしたら先輩がとんでもないことを聞いてきた。
「桧室君と武隈さんって付き合ってるの?」
僕と武隈さんは思わず顔を見合わせた。
「いえ、付き合っていませんよ。」
僕は言った。武隈さんも少し顔を赤らめながら頷いていた。
「なあんだ。説明会の時も仲良く2人で来てたから付き合っているんだと思ったわ。いっそ、付き合ったらいいのに。」
先輩はそう言って笑った。彩音さんが亡くなってから恋愛なんて考えたことがなかったから、僕は少しドキドキしてしまった。先日、先生に「新しい彼女を作りなさい」みたいなことを言われたが、現実味がなかったので気にしていなかったが、同級生の女子と一緒にいてそんな感じで見られるとは思わなかった。何となく武隈さんの方をチラっと見てみたが、武隈さんは冗談と思って気にしていないようだった。その後、他愛もない話をしていたら部員が全員帰ってきた。
「みなさん清掃お疲れさまでした。本日の活動はこれで終わります。次回の活動日は来週の木曜日です。」
こんな感じで初回のボランティア部の活動が終わった。空手道部とはまた違った楽しさがあった。掃除をしていても気持ち良かったし、施設訪問も楽しみだ。
「終わったね。桧室君。途中まで一緒に帰ろっか。」
武隈さんが帰り支度をしながら声を掛けてきた。
「うん。そうしよっか。」
僕も帰り支度をしながら応じた。
僕も武隈さんも自転車通学で帰り道が途中まで一緒なのだ。僕たちは並んで駐輪場まで行き、自転車に乗った。もう17時だが、4月も中旬になってくると空はまだ明るかった。
「私、喉がかわいちゃったから途中のコンビニで何か飲まない?」
武隈さんが誘ってきた。
「うん、いいよ。」
コンビニに着き、自転車を止めた。そして2人でコンビニに入った。それぞれジュースを買い、コンビニの外へ出た。僕はレモンティーを買い、武隈さんはカフェオレを買っていた。
「今日は楽しかったね。」
カフェオレを口にしながら楽しそうに武隈さんが言った。
「そうだね。先輩もいい人だったし、掃除も楽しくできたよ。」
僕もレモンティーを飲みながら言った。
「来週の施設見学、楽しみだね。」
僕は言った。
「うん。私も。桧室君は福祉の仕事の中で具体的にやりたい仕事は決まっているの?」
「まだ決まってないよ。これから調べたり勉強したりしていこうと思ってるよ。ボランティア部の活動はその役に立ちそうだから嬉しいよ。」
「私もだいたい同じかな。福祉の仕事にもいろいろあるもんね。」
「ねえ、聞いてもいいかな?」
少し改まって武隈さんが言った。
「何かな?」
「うん。今、六城さんのことってどう思ってるのかなって」
「うーん・・・。難しい質問だね。なかなか言葉では言い表せないけど、僕にとって一生心の中に生きている、一緒にいるって感じかな?でも、どうしてそんなこと聞くの?」
「ううん。何となく聞きたかっただけ。変なこと聞いてごめんね。」
「別にいいよ。」
ジュースを飲み終わり、容器をゴミ箱に捨て僕たちはまた自転車に乗った。そして、武隈さんと別々の道になる交差点まで来た。
「それじゃあまた明日ね。バイバイ。」
そう言うと武隈さんは自分の家の方へ帰っていった。
「バイバイ。」
僕も自分の家へと帰った。




