過去との対面⑬ 一日の終わり
こうして、彩音さんのご両親に会うという一大イベントが終わった。帰り道、先生と駅まで歩いていると先生が声をかけてきた。
「どうだった?スッキリした?」
「はい。とてもスッキリしました。ご両親にはもっと怒られるかと思っていたので・・・。」
「ふふふ。そうね。でも良かったわね。これで前を向いて歩いて行けるわね。」
「はい。彩音さんの分も合わせて2人分頑張ります。」
「それもいいけど、また新しい彼女を作ることも考えなくちゃダメよ。そうじゃなきゃ、六城さんも悲しむと思うわ。」
「そうですか。今はまだそんな気になれませんけど・・・。」
「いずれね。新しい彼女を作って、六城さんのところに報告するぐらいになりなさい。」
「はい。分かりました。いずれはそうしたいと思います。」
「それと、桧室君のご両親にはこのことは言っているの?」
「いえ、何も言っていません。」
「それはダメね。これは桧室君の口からきっちりご両親に説明しなさい。上陽館から公立高校に来た大きな原因の一つになっているんだから。分かったわね。」
「はい・・・。」
あまり気は進まなかったが帰ったら説明しようと思った。駅に着き、先生に今日の礼を言い、先生と別れてから携帯電話にメールが来ていることに気づいた。武隈さんからのメールだった。(何だろう?)と思って僕はメールを開いた。
〈今日は大丈夫だった?ちょっと心配で・・・。〉
そういえば今日のことは武隈さんには言ってあったのだ。
〈うん。大丈夫だったよ。ご両親も怒っていなくて良かった。ただ、恥ずかしながら思いっきり泣いてしまったけどね。〉
〈いいんじゃない。許してくれて良かったね。じゃあ、また明日学校でね。〉
〈うん。じゃあまた明日ね。バイバイ。〉
何だかメールをくれたことが少し嬉しかった。気にかけてくれる友人がいるというのはいいことだなと思った。家に帰り、先生に言われた通り、両親に洗いざらいキッチリと話をした。
「何だ。そんなことがあったのか。大河も辛かったんやな。」
と父親が言った。
「怒らないんだね。」
「別に怒ることではないよ。もうスッキリして今の生活に満足しているんだろう?」
「うん。暁南高校に行かせてくれて感謝しているよ。部活にも入ったし、担任の先生もとてもいい先生だから。」
「それなら、別に何も言うことはないよ。好きなように頑張りなさい。」
「うん。ありがとう。がんばるよ。」
そう言って僕は自室に入った。そして早速もらったペンダントに彩音さんの写真を入れた。写真はデートの時に撮った写真があったのでそれを使った。
「これでよし。」
僕はひとり呟いてペンダントをカバンの中に入れた。本当は常時身につけたかったが、学校にペンダントをつけていくわけにもいかないのでカバンの中に入れておくことにしたのだ。プライベートで出かけるときには身に着けようとは思っている。今日も本当にいろいろとあった。高校に入ってから嵐のようにいろんな出来事があって目が回りそうだ。でも、満足しているし、この道を選んだことを全く後悔はしていない。あとはしっかりと将来の進路を考えて頑張るのみだ。
日が変わり月曜日になった。
ここは校長室の前。私は昨日の出来事を報告するために校長室を訪れた。
「風宮です。失礼します。」
私は校長室に入った。
「昨日の報告に伺いました。」
「おお、どうだったかね?」
「はい、六城さんのご遺族も怒ることなく彼を受け入れてくれました。」
「そうか、それは良かった。彼の方はどんな様子だった?」
「最初は緊張してガチガチでしたが、だんだん緊張もほぐれて、遺書を読ましていただいたときには号泣していました。私は泣くだけ泣けばいいと思いましたので見守っていました。」
「それで、どうかね?わだかまりは解けた感じかね?」
「まだ完全には六城さんのことを吹っ切れないとは思いますが、私はそれでいいと思っています。ひとまず一つのけじめはつけることができましたし。それに彼は、空手道部とボランティア部に入部しました。日々の忙しさも彼が前を向くのに一役買うことでしょう。」
「そうか。空手道部の顧問は風宮先生だったね。」
「クラスの担任も持っていますので、合わせて見守っていきたいと思います。」
「よろしく頼んだぞ。また、何かあったら報告してくれたまえ。」
「はい、分かりました。」
そう言ったものの、彼の暁南高校に来た原因も分かったし、部活にも入り、友達もできて、前を向いて歩き出している彼に何かあるとは私はもう思わなかった。




