十四話
めっちゃ短い。
「流石…と言うべきかしらね。こちらが切り札を切った途端に鬼札を出してきた」
本当にその通り。
いくら攻め立てても一切の出撃も計もなく。
それ自体がもはや一つの計となっていた。
心のどこかで根拠のない自信を抱かされていた。
『奴らは守勢のみ』
ところがぎっちょん。
張遼と華雄に徐庶を警戒する連合にいきなり向かってきたのは呂布に張遼に華雄。
更に友軍の為に門前で防衛線を展開している部隊の旗が見せ付ける文字は『陳』
董卓軍にその人ありと知られた賈駆と並んだ二大軍師の一人の陳宮だろう。
呂布に陳宮は虎牢関防衛の任にあたっていたと聞いていたがいつの間にか止水関に移っていたらしい。
「桂花、春蘭と秋蘭は?」
「まだのようです。最低でも半刻は足りぬかと」
「そう」
独自に進めていた策も間に合わない。
すでに董卓軍は連合軍にぶつかり、鎧袖一触といわんばかりに引き裂いている。
既に袁紹配下の二枚看板と呼ばれる顔良と文醜は呂布に撃破され袁紹軍は総崩れ。
手柄を欲して孫策軍を下げたために質が一気に下がった袁術軍は雷薄に藩鳳の二人が張遼に討ち取られたために張勳がいるにもか関わらず完全に及び腰。
公孫賛や陶謙などの残りは華雄が暴れまわって吹き飛ばしている。
総大将の袁紹は念のためにこっそり一般兵に紛れ込ませた楽進、李典、干禁が呂布に足止めを仕掛けているために生還するだろう。
だが、このままでは連合軍は潰える。
しかし、まだ大丈夫だろう。
連合の先行きを分かっている故に。
「曹操さん。私達と孫策さん達は援軍に向かいます。兵糧をお願いします」
お人好しは黙っていられないし、孫策も連合軍の救出という大きな手柄を狙いに行く。
後は彼女達が間に合えば。
◇
既に大勢は決しかけている。
「お前達は死ね」
「アガッ」
「凪っ!?」
「これ以上は無理なの。真桜ちゃん凪を抱えて逃げよう」
「ひとまずは任務は果たしたしそうするか」
呂布に三人掛かりで仕掛けた三羽烏は満身創痍。
「第二隊は突撃。弓兵隊は味方ごとで構いませんから射って下さい。抗命した方の家族は死罪となりますからね」
「ったくあんたも胸糞悪いことすんなや。こないに雑兵来おっても役に立たへんで」
必死に兵を指揮せども張遼と張勳の間の戦力差は大きく。
「ウォォォ!我こそはと思う奴はいないのかぁぁぁぁあ!!」
華雄は無人の野を往くが如く暴れまわっている。
「さぁ、狙いを定めて三連射なのです!」
もちろん背後を守る陳宮も危うげは無い。
そして戦況は転変するまでにしばしの時間を必要とする。
◇
なんだかんだで今は城壁の上から音々音を援護するべく指揮をしている徐庶です。
今更ながら後悔しています。
そもそも孔明と士元がはわわとあわわな三国志になんで自分の知識が当てはまると思ったんだろうね?
連合軍がフルボッコじゃん。
どうすんのこれ?
このままじゃアレだよ。顔を未だに知らない董卓様を同じく顔を知らない呂布が殺しても。
『よし、連合はぶっ潰したし後は呂布を狩るだけじゃね?』みたいなノリで終わりかねんぞ。
見ろよあのセクシー武将。
まるで呂布の方天画戟みたいなのぶんまわして暴れてるじゃん。
一回ぶんまわす度に十人以上吹っ飛んでんじゃん。
なにあれ怖い。
まじどうすんの。
ライフカード無いの。
マジでヤバくな……。
ドサッ。
◇
徐庶を気絶させる現場を見ていた兵を殺し、徐庶を担ぐ。
自分の主は暗殺を命じた。
この場合の暗殺とは、誰もみていないところで殺して死体も隠匿することで死自体をも秘匿することだ。
将の死は正々堂々とした戦いの結果にあるべきという考え方が主流の時代であるがゆえに暗殺という事実が漏れるのは風評に大きく関わるゆえの措置。
裏手にある山で殺して死体を刻んでおけば野犬あたりが処理をするだろう。
彼は誰にも見られぬままに姿を消した。
男の名前は紀霊。
筆者がオリキャラにしたくてしょうがない真名が麻婆という裏設定まであるモブである。
紀霊はプロットでは割と出番ある予定だったけどオリキャラがすでに増えてきたからモブ。
本当は。
『よろこべ劉備、貴様の願いはようやく叶う。私が明確な民の敵であればこそ貴様の仁は明らかとなる』
とかやる予定だったんだけどね。
多分、次話かその次で止水関編は終了。
感想で〇〇(人名)はどうしてるの?という質問は無しで。