第41話 運命は、形を変える
玲は立ち尽くしていた。
同じ公園。
同じ桜の木。
同じ曇り空。
「玲!」
声。
振り向く。
千咲。
さっきと同じ。
同じピンクのワンピース。
しかしその笑顔の奥に強い緊張があった。
千咲は言う。
「玲、急ごう」
「まだ時間あるだろ」
「ううん」
千咲は小さく首を振る。
「急ごう」
玲は頷く。
三人で歩き出す。
玲。
千咲。
そして姿の見えないもう一人。
玲は横を見る。
確かに誰かがいる。
しかし。
やはり見えない。
「千○」
会話の中で名前を口にする。
しかし誰か分からない。
この瞬間玲は理解する。
自分はこの時間に干渉できない。
ただ見ているだけだ。
観測しているだけなのだと。
千咲は早足で歩く。
交差点が見えてくる。
玲の胸がざわつく。
あの場所。
事故の場所。
そのとき。
ぽつ。
雨が落ちる。
千咲が空を見る。
曇り空。
雨。
玲は思う。
同じだ。
全部同じだ。
信号が青になる。
三人は横断歩道へ向かう。
その瞬間。
遠くで。
エンジン音。
トラック。
玲の胸が凍る。
しかし。
千咲が玲の腕を掴んだ。
「待って」
玲が驚く。
「え?」
千咲は動かない。
信号は青。
しかし渡らない。
その瞬間。
トラックが交差点を通り過ぎる。
猛スピードで。
横断歩道の前を通り過ぎていく。
玲は息を止める。
事故は起きなかった。
千咲は小さく息を吐く。
「……よかった」
じゃあ渡ろうか。
次の青信号で横断歩道を渡っていた途中だった。
反対車線から急ブレーキの音。
キィィィィッ!!
そして。
衝突音。
そこに。
玲が立っていた。
世界が。
歪む。
地面に倒れる玲。
血。 雨。
だが痛みはない。
千咲の叫び声。
「玲!!」
玲は理解する。
事故は避けた。
しかし運命は別の形で玲を殺した。
千咲は走る。
玲の体を抱き起こす。
「玲!!」
玲は動かない。
千咲の手が震える。
「いや……」
涙が落ちる。
「いや……違うの、こんなはずじゃなかった」
雨が強く降る。
千咲は玲を抱きしめる。
「違う……」
声が震える。
「こんなの、違う!!」
そして千咲は理解する。
事故を避けても意味がない。
千咲は玲を抱きしめる。
涙が止まらない。
「……やり直す」
小さな声。
震える声。
「もう一度」
ペンダントを握る。
その瞬間。
青く光る。
世界が歪む。
雨が止まる。
音が消える。
そして。
世界が崩れる。
玲はそれを見ていた。
これが千咲の戦いの始まりだった。




