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極悪辺境伯の華麗なるメイドRe^2  作者: かしわしろ
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フリーマウンテン5


「あ、あの……それは……。」

2人が飛び去った後、サラはクレアの持っていた真っ黒い石を見てそう尋ねる。


「あ、これはレイリンちゃんも言ってたけど“記憶磁石”。砕くとその破片は元の石の方向にゆっくりと動くんだよ。」

実はクレアが持っている石も破片の一つであり、大元に向かって少しずつ移動している。


「初めて見ました……そういう石もあるんですね。」

「結構珍しいからね。と言っても、私たちが受け取る賃金でも買える程度だけど。」

ということは貴族であれば買えるということである。普通のメイドの賃金では数ヶ月貯金をすれば買えないこともないが、だったら生活費などに回すだろう。


「でもこの石、私からあの2人の方に移動することはできないんだよねー。あ、そこ気をつけてね。」

「っ!へ、へび!」

「大丈夫。あれはこっちから何もしなきゃ無害だから。」

岩陰に潜んでいた蛇に驚きつつも、2人は周囲を探索していく。と言ってもサラの足では探索範囲も微々たるものになるだろうが、それでも動かないよりはましだと判断した。


『……でも、護衛対象がいるときは無闇に動かない方がいいんだっけ?』

クレアは一瞬そのように考えたが、この場合は移動する方が正しい。敵側に観測魔法の使い手がいるとすると、すでに追っ手が来ていると考えるべきである。


数分の時間がたった。


「クレア、見つけた。」

オリビアが上から降りて来ると、人がいた場所を説明し始める。


「整備された道を2kmくらい山頂に移動した場所、その近くに小屋があった。そこに何人かの人を観測した。」

「ふーん、観測された?」

「いや、されなかったけど……わからない。」

例えばクレアがオリビアを観測魔法を使用して観測した場合、オリビアの常時展開している魔法障壁が反応する。“誰かから観測されている“ということがわかるわけだ。しかし例えばマリー・ローズであるアシュリーなどは、魔法障壁が反応しないほど高度な観測魔法を使用することができる。100%観測されていないとは言い切れない。


「じゃあレイリンを待ちつつ、ゆっくりその小屋の方に歩いて行こう。それでレイリンが到着したら飛ぶよ。」

「了解。」

「あ、砕いた鉱石ちょうだい。」

クレアはオリビアから記憶磁石の破片を受け取る。そしてそれを元の記憶磁石にくっつけた。一度このようにくっついてしまうとかなりの力がないと引き離すことができなくなり、また長時間くっついた状態が続くと鉱石同士が結合していく。砕いた破片は再利用が可能というわけだ。さらにはオリビアの持っていた破片が敵の手に渡ってしまった場合、居場所がすぐにバレてしまうことになる。早めの処分が大切なのだ。


「サラもちょっと歩くことになるけど、頑張ってね。」

「だ、大丈夫です。」

少し息が上がっているようだが、レイリンが来るまでの間だったら歩けそうだと判断する。クレアは自身とオリビアの2人で古屋へ移動しようかとも考えていたようだが、やはり未知の敵の前では最大戦力で向かった方がいいという判断をした。


さらに数分後。


「お待たせー」

「レイリンちゃん、どうだった?」

小屋まで残り数100メートル、クレアの観測魔法でも感知できるところまで来た時に、レイリンがやってきた。


「クレアちゃんが向かっている小屋と、後その上にも隠れ家?みたいなものが2つくらいあったよ。」

「了解。で、どこまで行ってきたの?」

「道を辿って頂上まで。」

ということは道なり付近には人工的な建造物が3つある、ということになる。


「まず近くの小屋に行くよ。そこにサラちゃんの両親がいればそれで終わり。いなければ残り二つの隠れ家に行く。」

「それで見つからなかったら?」

「仕方ないけど一旦グルンレイドに戻るよ。」

クレアはここにいる全員に隠蔽魔法を唱える。サラが使用していたライトサファイアよりも少し強い隠蔽力だった。これがクレアの全力というわけではないが、ライトサファイアでバレないのであればこの程度でいいと判断したようだ。


「よし、行くよ……の前に、サラちゃんは私の後ろに。」

クレアはサラをおぶると、もう一度声を発する。


「よし、行くよ!」

「「了解!」」

4人はオリビアが観測した一番近くの小屋に移動した。

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