↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
PR
40/148

魔界3


「はーい。旦那様お待たせいたしましたー。」

 だ、旦那!?何を言っているんだこの獣人は!


「最高級のものばかりを選んでおります。」

 すると奥からアイラとディアナが出てきた。


「おーかわいいぞ。」

 アイラは全身黒を基調としたデザインの服に、鮮やかな青が織り込まれている。おとなしい性格のアイラにピッタリだ。逆に活発なディアナは赤が織り込まれていた。地上のデザインとはちょっと違うが、人間の俺から見てもかなりいいセンスをしていると思う。


「あ、ありがと。」

「えへへー。」

 二人とも新しい服を着ることができてかなりうれしいらしい。それもそうだろうな。今までメイド服しか着てこなかったのだ。おしゃれくらいさせてやりたいもんだ。


「旦那様、奥様の服も決まったようですよ。」

 お、奥様!?今度こそ何か反論してやろうと思ったが、その前に試着室の奥からヴィオラが出てきた。


「お待たせ、いたしました。」

 いつもはどんな時もシャキッとしているヴィオラだが、今はもじもじしながら顔を赤くしている。


「どう、ですか?」

「お、な、なんだ。その、似合ってる……と思う。」

「あ、その……ありがとう、ございます。」

 なんだこの状況は。お互いに顔が真っ赤で恥ずかしいことこの上ないんだが。ヴィオラは性格は意地が悪いのだが、見た目は悪くない。というかかなりいい。それも相まって今のヴィオラは何というか女性らしい。


「あまり、見ないでください……。」

 慣れない格好に本人もかなり恥ずかしいらしい。


「それではまたのご来店をお待ちしておりますー。」

 そういって店の外まで店員は見送ってくれた。着替えることができたという点ではよかったのだが、さっきとは違う意味でじろじろ見られている気がする。主にヴィオラのせいで。


「先ほどから周囲の魔物たちからの視線を感じるのですが……。やはり私の格好がおかしいのでしょうか?」

 そういって警戒態勢に入る。いつもはなんでもお見通しのくせに自分のこととなると鈍感になるんだよなぁ。


「逆だ逆。格好が似合いすぎて注目されてんの。」

「そ、そうですか。」

 そしてまた沈黙が続く。おい、この空気どうしてくれんの。


 気を取り直して魔界探索を続ける。といっても街並みを歩きながら眺めるということだけだが。空が紫色ということと歩いているのが人間ではなく魔物ということを除けばほとんど地上と同じような外観をしている。ちなみにさっきの店で待っている間に店員に聞いたところ、いい宿を紹介してくれたので、今日はこの町で一泊することにした。


「今が昼なのか夜なのか分かりませんね。」

 確かに、太陽が出ていないので分からない。ただ俺たちが来てから空の色は多少暗くなったように見える。もしかしたら太陽のない魔界にも夜という概念があるのかもしれない。


「とりあえず、宿まで行くか。」

「かしこまりました。」

 やっぱりメイド服でないと違和感あるな。逆に子どもたち二人は、メイド服よりこっちの普通の服の方がしっくりくる。


「お待ちしておりました。お越しいただき誠にありがとうございます。」

 グルンレイドの屋敷にも劣らないような立派な外観の宿に入った途端、数十人の従業員と思われる魔物から一斉に頭を下げられた。


「おい……どうなってるんだ?」

「わ、私も分かりません。」

 珍しくヴィオラも驚いた顔をする。


「おやこれはご説明不足でしたね。先ほど旦那様が入店していただいたブランド店を運営させていただいております、タナトスと申します。」

 立派な服を着たこの店の店主と思われる魔族がそういう。


「俺たちが今日ここに泊まる……という話は通っているか?」

 グルンレイドの屋敷で生活してきたおかげか、このような待遇には耐性がついてきたようだ。特に恐縮することもなく会話ができた。


「もちろんでございます。」

「そうか。……これは前金だ。」

 そういってさっきより少し大きい魔石をその魔族の手のひらに置いた。


「こ、これはっ!これでは多すぎます!」

「まあいい、とっておけ。」

 すると周りから『おぉ!』という歓声が上がった。


「こら、静まらんか!」

 それを魔族が注意する。


「申し訳ございません。」

「問題ない。」

 なんか口調がボスに似てきたか?ボスのもとで働いてきた副作用的なものを発見してしまい、ちょっとショックを受けた。


「それではこちらのものがご案内いたします。」

 そうしてVIPルーム的なところに通される。あの……キングサイズのベッドが一つなんですけど。


「あの、他の部屋は……。」

「これほどの魔石を渡しておきながらなんと欲のないお方なのだ……。」

 案内してくれた魔物は感動に震えていた。


「そうじゃなく……」

「いや、これほどのものをいただいて普通の部屋に通したのでは私どもの評価にかかわります!何としてでもこちらの最高級の部屋に泊まっていただきますぞ!」

 こんなキラキラした目で言われたらもう断れないじゃん……。


「あ、ああ、そうだな、分かった。」

「ご理解いただけて感謝いたします。分からないことがあれば何なりとお呼びください。」

 そういってその魔物はこの場を離れていった。


「ベッドが一つしかないんだが、どうする。」

 ヴィオラの方を見た。


「私は床で寝ますので問題ありません。」

 俺的には問題ありすぎる。


「いや、俺が床で寝るからお前はベッドで寝ろ。」

「主人を差し置いてベッドで寝るなど、メイドとして言語道断です!」

「主人の命令に従わないのもメイドとしてどうかと思うがな!」

 お互いににらみ合う。するとヴィオラの目がすうっと青色に染まり、光が舞っていく。


「おい、馬鹿やめろ。」

 その瞬間後ろから抱き着かれ、体勢が崩れた。それと同時にヴィオラの視線から俺の目が外れる。


「一緒に寝よー。」

「マークと、寝る。」

 危なかった……。もう少しであいつの言いなりになるところだったぜ……。主人に命令しようとするメイドがいるか。


「ヴィオラさんも、寝よ!」

「一緒に、寝よ?」

 この二人に上目遣いにそういわれてうなずかない奴なんていないだろう。


「う、ご主人様がよろしければ、私は、問題ありません。」

 だから顔を赤くするな。こっちまで意識しちまうだろ!


「はぁ、それが一番平和に解決しそうだな。よし、みんなで寝る。」

 やったー、と二人とも手を合わせて喜んだ。今までアイラとディアナは二人でしか寝たことがないから、他の人と寝ることができるのがうれしいのかもしれない。まだまだ子供だな。


「お前ら、寝る時間はまだだぞ。寝る前にご飯でも食いに行こうぜ。」

 はーい、という返事とともに二人とも駆け寄ってくる。ヴィオラはさっきから口数が少なくありませんかね。


「行くぞ。」

「か、かしこまりました。」

 そういって静かに後ろからついてくる。いつもの威勢はどうした……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。