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極悪辺境伯の華麗なるメイド  作者: かしわしろ
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魔王城探検記

ーーディアナーー


ここが魔王城。私の名前はディアナ。魔界にはマークと一緒に来たことはあるけど、魔王城には初めて来た。

急に屋敷が攻撃された時はかなりびっくりした。寝ていたら突然ものすごい振動がして、天井から粉が降ってきたが、マークとヴィオラさんがすぐにそばに来てくれたので、特に不安はなかった。アイラもいたしね。

それでこのままだと再び危険なことが起こるかもしれないということで、みんなでここに来たというわけだ。


「アイラ。広いね。」

「うん。」

私と同じ勇者の称号というものを持っているアイラ。年は同じだけど。アイラは私よりもおとなしくて、私よりも心配性で、でも私よりも周りをよく見ている。いいコンビだと自分では思っている。


「そうじゃろ!わしの城じゃ!」

ビクトリアちゃんが胸を張った。


「そうなの!?ビクトリアちゃんすごい!」

アイラとビクトリアちゃんが話している。ちなみにビクトリアちゃんは、最近私たちと生活することになった子だ。見た目は同じくらいだけど、年はマークよりもずっと上らしい。元魔王。五十歳。でも子供にしか見えない。


「今はマークの城だよね。」

「むぅ。いいではないか!」

私が一言付け加えると、ビクトリアちゃんはむくれた顔をした。この顔が面白いから、つい言ってしまう。


「だったらこの城、案内できる?」

「うっ……ま、まあ、その程度朝飯前じゃ。」

マークから聞いた話だけど、ビクトリアちゃんが魔王だった頃も自分の部屋から出ることはなかったらしい。ひきこもり、というやつだ。だからこの広い魔王城に関して知っていることは、ほぼないだろう。


「あーあ、じゃあビクトリアちゃんは行かなくていいね。」

「ん?なんの話じゃ?」

ビクトリアちゃんは私の突然の話題に戸惑っている。


「アイラとこの魔王城を探検しようって話。」

「ど、どういうことじゃ!?」

「わ、私も聞いてない……。」

まあ、誰にも言ってないからね。今思いついた。


「そのままの通り。ビクトリアちゃんも誘おうと思ったけど、もう知ってるんだったら誘わなくてもいいよね。」

「い、いやじゃ!わ、わしも……。」

「知ってるんだよね?」

「……ごめんなさいなのじゃ。」

ビクトリアちゃんは正直に白状した。知らないものは知らないのだ。素直でよろしい。

ということで三人で探検に行くことになった。


「で、でもいいのかな?勝手に部屋を出ても。」

ビクトリアちゃんは乗り気だが、アイラはいつも通り渋っている。まあ心配性なのはいつも通りだから問題ない。


「大丈夫だって。」

「そ、そうかな?」

押せばなんとかなる。アイラはいつもこうだ。最初は嫌がるけど、行ってみたら結局楽しんでいる。


「わしも魔王の間から出ることなんて一度もなかったからのー。」

ビクトリアちゃんはさっきまでの嘘を悪びれもなく、堂々とそう言った。この切り替えの早さは、さすが元魔王といったところだろうか。


今はマークとヴィオラさんも天界にいて魔界にはいない。私たちの面倒を見てくれているエミリアさんも、会議室みたいなところで他のメイドさんたちと話し合いをしている。要は話し合いが終わる前にこの部屋に戻ってくればいいということだ。


「いくよ!」

「いくのじゃ!」

「ま、待って!」

そうして私たちは部屋の扉を開けた。


---


「さて、どこから行こうかな。」

まずはこの廊下を右に行くか、左に行くかを選ばなければいけない。

魔王城の廊下は広い。天井も高い。壁には青白い炎の燭台がぽつぽつと灯っていて、薄暗いけど怖くはない。メアリーさんの結界のおかげで瘴気も感じない。ただの広い古いお城、という感じだ。


「アイラ、どっち!」

「わ、私!?え、えっと……左!」

「よし!」

そう言って三人でずんずん廊下を進んでいく。石畳の床に私たちの足音が響く。ビクトリアちゃんは歩くのが遅いので、たまに待ってあげないといけない。足が短いのだ。本人には言わないけど。


「人影じゃ!」

その声と同時に、私たちはぴたっとその場に止まった。

聖法を使ってグルンレイドのメイドの人か確認したいけど、魔王城を囲むようにメアリーさんの魔力拡散結界が張ってある。少しでも魔力や聖力を使ったら感知されてしまうだろう。


「みんな、魔力、聖力は使わないでね!」

「分かっておるのじゃ……でも。」

そう、このままでは向かい側からすれ違う形になってしまう。お願い!ばれないように……。

そう思いながら飾ってあった壺の陰に三人が隠れた。壺は私たちがすっぽり隠れるくらい大きかった。さすが魔王城、壺もでかい。


「……あら?誰でしょう?」

ばれてしまった!ここまでか……。


「に、人間!と、魔族様?」

よかった!グルンレイドのメイドではなく、魔王城に仕えているメイドさんだった。獣人の女性で、大きな耳がぴくぴく動いている。私たちの気配を耳で感じ取ったのだろう。


「メイドさん、私たち探検中だから、誰にも言わないでね。」

「え、えぇ。」

困惑した顔をしていたが、子供が相手だったからか、大きな問題にはならなかった。そう言って私たちは先に進む。


「わしは外に出なかったからの。一介のメイドには顔を知られてはいないようじゃな。」

それは魔王としてどうだったの……とは言わなかった。言ったらまたむくれるからだ。


獣人のメイドさんと別れてから真っ直ぐ歩いていくにつれて、だんだんといい匂いが鼻をついてきた。


「すごい、いい匂い。」

「厨房かの?」

ビクトリアちゃんの予想が当たった。扉の隙間から覗いてみると、多くの魔物たちが料理を作っているところだった。大きなオークが肉を焼き、ウルフの姿をした魔物が鍋をかき混ぜ、小さな妖精のような魔物が香辛料を振りかけている。みんな忙しそうだけど、楽しそうにも見えた。


「グルンレイドのメイドは見える?」

「いないようじゃ。」

どんな料理を作っているのか見たい!


「入ろう!」

「め、迷惑じゃない?」

「よいの!」

そう言ってさっと扉を開けて、かがみながら中に入る。するとさらにいい匂いが漂ってきた。肉が焼ける音、鍋が煮える音、包丁がまな板を叩く音。厨房の活気が身体を包む。


「いい?大きな音を立てちゃダメだよ?」

「分かっておる。」

厨房は料理をしている音が響き渡っているけど、耳がいい魔物もいるということを前に魔界に来た時に学んだ。些細な音も気をつける必要がある。


「よし、進も……。」

ぐぅぅぅー。


「あ、ごめん。」

「何をしておるのじゃ!」

「ディアナちゃん……。」

お腹が鳴ってしまった。朝ご飯はちゃんと食べたはずなのに、この匂いのせいで身体が反応してしまった。


「だ、だれだ!」

すぐに近くにいた料理人にばれてしまう。大きなオークが振り返り、鍋を持ったまま私たちの方を見た。


「に、人間が侵入……子どもか?」

「人間か!どこだ……子供ではないか。」

「それと魔族様もいるぞ。」

大騒ぎになると思ったけど、そうではなかった。最初は驚いていた魔物たちも、私たちが子供だと分かると警戒を解いていった。


「なんでここにいる!」

「おい、そんなに怖がらせるような言い方するなよ。」

「そ、そうだな。」

別に怖くはないんだけど。マークの方がずっと怖い顔するし。


「何しに来たのかな?お嬢ちゃんたち。」

「探検じゃ!

「そうだね、探検だね。」

「ほう、そうかそうか。探検か。なら……仕方ないよな。」

「探検なら仕方ない。」

厨房にいる大柄の魔物たちが口々にそう言う。


「でも、グルンレイドのメイドの人には言わないでね!ばれると怒られるから。」

特にヴィオラさんにばれるのだけは勘弁してほしい。あの人に怒られると本当に怖い。マークですらヴィオラさんに怒られた時は黙り込むのだから。


「了解した。あの人間たちにはいわんぞ。なあ、みんな。」

「言わん。」

「俺も、言わん。」

いい魔物ばかりでよかった。これで探検の続きができる。


「ところでお嬢ちゃん。さっきおなかが鳴っていたようだけど。」

「あ、やっぱり聞こえてたんだ……。」

「ちょうど味見役が欲しいところだったんだ。どうだ?」

そう言って焼かれた肉のかけらが目の前に出される。ジュワッと脂がしたたっていて、すっごくおいしそう。


「おい、お前だけずるいぞ!ちょうど俺の作ってたスープの味見役もいなかったんだ!」

スープも出される。オレンジ色の液体の中に、見たことのない野菜が浮いている。


「まてこのコルンのシャーベットもうまいぞ!」

次々に料理が出されてくる。コルンというのは魔界の果物らしい。紫色のシャーベットで、ひんやりとした冷気が立ち上っている。


「いいのか!食べるのじゃ!いただきます。」

ビクトリアちゃんがものすごい勢いで食べ始めた。

私も食べようと思ったけど、あとで夜ご飯を食べることを考えると、どれも少し食べるくらいにしておいた方がいい。ビクトリアちゃんみたいにがっつくと、後で困ることになる。


「私もいただきます。」

「わ、わたしも。いただきます。」

アイラも私がちょっとずつしか食べていないのを見て、気づいたようだ。同じように少しずつしか食べていなかった。やっぱりアイラは賢い。


「おいしいのじゃ!」

「ほんとにおいしい!」

「お、おいしい。」

魔界の料理を久しぶりに食べたけど、やっぱりおいしい。人間界で食べるものとは材料も味付けも一味違っていて面白い。肉は人間界のものよりもずっと歯ごたえがあるし、スープは初めて味わう香辛料のおかげでとても複雑な味わいだ。シャーベットは甘すぎず、後味がすっきりしている。


「だろ!やっぱり俺の焼いた肉が一番だぜ!」

「おい、俺のスープのことをいったんだろ?」

「俺の作ったシャーベットだ!」

「全部おいしい!」

私たちがそう言うと、料理人たちはみんなすごく嬉しそうな表情をしていた。人間の子供に自分の料理を褒められるのは、初めての経験なのかもしれない。


「次は二階の角にある図書室に行ってみるといい。本もいいが、そこから見える景色は絶景だぜ!」

料理人たちが図書室までの行き方を教えてくれたので、そこへ向かってみることにする。


「ではさっそく……。」

「ビクトリアちゃん、ごちそうさまでした、しよ?」

「そうであったの。ごちそうさまでした。」

私とアイラもごちそうさまを言って厨房を出た。


---


図書室は二階にあるらしいので、階段を一つ上がらなければいけない。


「二階に行くとローズの人たちが話し合いしてる部屋もあるよ。

「そうじゃな。気を引き締めないとの。」

すると、コツコツと階段の上から足音が聞こえてきた。


「また魔王城のメイドかもしれんの。」

「そうかもね。」

「ま、まって。魔王城のメイドさんはあんな音出る靴はいてない……と思う。

アイラがそう言った。

確かに、そう言われてみればグルンレイドのメイドが履いている靴はかなり立派なものだ。底がしっかりしていて、石の床を歩くとコツコツと響く。それに比べて魔王城のメイドたちが履いている靴は、もっと柔らかい素材で、あまり音がしなかった気がする。


この足音は、グルンレイドのメイドだ。


「まずい!早くこっちに!」

三人で階段を上らずに、そばにあった棚の脇に隠れた。


コツコツコツ。


足音が近づいてきて、そして通り過ぎていった。


「あ、危なかった。」

「アイラ、よくやったのじゃ!」

「どういたしまして。」

さすがアイラ。ちなみに今通っていったのは後ろ姿しか見えなかったけど、あの黒い長い髪はアリサさんだろう。アリサさんは優しいから見つかっても見逃してくれる可能性は十分にある。でも危険はなるべく避けなければいけない。探検は慎重さが大事なのだ。


「よし二階に行くのじゃ。」

階段を上って右に曲がる。そして突き当たりまで進み、そこを左。運よく、その間誰とも遭遇せずに図書室にたどり着いた。


図書室の扉を開ける。


「おやおや、これは珍しいお客さんだこと。」

すると奥の方から、獣人のおばあちゃんがゆっくりとやってきた。白い毛並みに包まれた穏やかな顔。丸い眼鏡をかけていて、背中は少し丸まっている。


「こ、こんにちは。」

「はい、こんにちは。」

急だったからかなり驚いたけど、おばあちゃんは全然驚いている様子はない。私たちが人間だということにも、驚いていないようだった。長く生きていると、大抵のことでは驚かなくなるのかもしれない。


「本を読みに来たのかい?人間と魔族の子どもたち。」

「景色を見に来たのじゃ。」

「景色?あぁ、ちょいとおまち。」

するとおばあちゃんはゆっくりと歩き始めた。


「び、びっくりした。」

「私も……。」

「そうかの?」

ビクトリアちゃんだけはケロッとしていた。もう少し危機感を持った方がいいと思う。

図書室は私が思っていた以上に広い場所だった。何より高さがある。上を見てもいたるところが本棚。壁という壁が本で埋め尽くされていて、天井まで続く梯子がいくつも掛かっている。薄暗い照明に照らされた本の背表紙が、金文字や銀文字できらきらと光っていた。


外の景色を見に来たけど、この室内の景色だけでも十分にすごいと思う。


「こっちにおいで。」

おばあちゃんが奥の階段の前で手招きをしている。


「ここを上がればロフトに行けるよ。」

「ありがとうなのじゃ!」

ビクトリアちゃんはそう言い、階段を使わずに上へと飛び乗った。元魔王だから身体能力は高い。私とアイラは普通に階段で上る。


登り切った瞬間、息を呑んだ。

目の前に、湖が広がっていた。


ロフトの大きな窓からは、魔王城の真下に広がる巨大な湖が一望できた。暗い魔界にあって、その湖だけが不思議な青い光を放っている。湖面は鏡のように静かで、魔王城の影が逆さまに映り込んでいた。湖の周りには光る鉱石のようなものが点在していて、まるで地上の星空のようだった。


「すごい……。」

他の二人も驚いた表情でそれを見ていた。


「よっこいしょ。」

おばあちゃんもゆっくりと階段を上がってきた。


「魔王城の下には湖があってね、ここからはそれが一望できるんだよ。」

「湖があるのかの!すごいのじゃ……。」

元魔王のビクトリアちゃんは知ってるべきなんじゃないかと思った。でも仕方ないか。ビクトリアちゃんだし。


「おばあちゃんはずっとここにいるの?」

「おばあちゃん……ふふっ、私のことかい。」

「うん。」

「そうさね。私が若かった頃から、ずっと。」

そう言って並んでいる本を見ていた。私が生まれるはるか昔から、このおばあちゃんはずっとこの本と過ごしてきたのだろう。

グルンレイドの屋敷にも書庫はある。そこと同じようなにおいが、ここには広がっていた。紙と革と、少しだけ埃っぽいけど、なぜか安心するにおい。


「なんか落ち着く。」

「本の独特な香りがするでしょう?」

そうして四人で、会話のない時間が流れた。


湖を眺めながら、誰も何も言わない。でもそれが心地よかった。会話がなくても、どこかゆっくりとして安心できるような時間。窓から入ってくる青い光が、私たちの顔を静かに照らしていた。


今、天界ではマークやメイドたちが戦っているのだろう。私たちはここにいることしかできない。それが少し悔しいけど、マークが「何にも悪くない」と言ってくれたから、今はそれでいいのだと思う。


「私としてはもっとゆっくりしていってくれてかまわないのだけど、時間は大丈夫なのかい?」

「あっ!」

「まずいのじゃ!」

私たち三人が同じような表情をすると、おばあちゃんは微笑んだ。しわくちゃの顔に浮かぶその笑顔は、とても温かかった。


「それじゃあ、またね。」

「ありがとうおばあちゃん!」

三人ともお礼を言って、急いで図書室を出た。思いのほかゆっくりしすぎてしまい、かなりまずい状況だ。

お願い!まだエミリアさんが部屋に戻ってきていませんように!


「せ、セーフなのじゃ。」

部屋の扉を開けた時には、まだマークとヴィオラさんの姿はなかった。


「危なかったね。」

アイラもそう言う。三人とも息を切らしている。あの図書室から全力で走ってきたのだ。


「でも、面白かったね。」

私がそう言うと、みんながうなずいた。顔を見合わせて、みんなで笑った。厨房の魔物たちの優しさ。おばあちゃんの穏やかな笑顔。湖の青い光。全部、忘れない。


---


「みんな夜ごはんよ。おなかすいてるでしょ?」

数分後、エミリアさんが部屋に入ってくるなりそんなことを言った。食堂みたいなところでみんなで一斉に食べるものかと思っていたけど、そうではないらしい。ご飯がのっているワゴンもそばにあった。

綺麗に並べられたテーブルのそばに私たちは座る。


「「「いただきます。」」」

私とアイラは、厨房でのつまみ食いはほどほどにしておいたのだ。だからこのご飯も問題なく食べることができる。エミリアさんの作ってくれた料理は、グルンレイドの屋敷で食べるものと同じ味付けで、懐かしい気持ちになった。


しかし。


「ビクトリアちゃん?どうかしたの?あまり食事が進んでいないようだけど。」

エミリアさんがビクトリアちゃんの皿を見て首を傾げた。


「あ、こ、これは……あまりにもおいしすぎて食べるのがもったいないのじゃ!」

ビクトリアちゃんはもうお腹いっぱいなのだ。厨房であれだけ食べていたのだから、当然だ。私とアイラは少しずつしか食べなかったから大丈夫だけど、ビクトリアちゃんは遠慮なくがっついていた。その結果がこれだ。


「まだまだ料理はたくさんあるから、遠慮せずに食べていいのよ?」

「う、うっ……。」

見ていてかわいそうになってきた。エミリアさんは優しいから余計に辛いのだろう。


「ほら、どうしたの?」

「ご、ごめんなさいなのじゃーっ。」

最終的にビクトリアちゃんが泣き出して、エミリアさんに謝っていた。厨房でお腹いっぱいになるまで食べてしまったことを正直に話した。

そうなると当然、「なぜ厨房にいたのか」という話になり、私たちが誰にも言わずに魔王城を探検したということがバレてしまった。エミリアさんにはしっかりと注意を受けた。


ビクトリアちゃんが「ヴィオラさんには言わないで欲しい」と懇願すると、エミリアさんは少し考えてから了承してくれた。


「その代わり、次からはちゃんと私に言ってからにしなさいね。」

「はいなのじゃ……。」

私たちはエミリアさんの優しさに感謝しながら、ご飯を食べた。


ビクトリアちゃんは結局、エミリアさんの料理も半分くらいは食べていた。魔族の胃袋は、人間よりも大きいらしい。


---


夜。

部屋の明かりを消して、三人で布団に入る。


「今日、楽しかったね。」

「うん。」

「そうじゃな。」

暗い部屋の中で、三人の声だけが響く。


「また探検しようね。」

「……でも今度はちゃんとエミリアさんに言ってから。」

「分かってるって。」

「わしもつまみ食いはほどほどにするのじゃ。」

「それが一番大事。」

三人で笑った。


明日にはきっと、マークたちも帰ってくる。天界で何があったのか聞くのが楽しみだ。マークのことだから、きっと面白い話をたくさん持って帰ってくるだろう。


早く帰ってこないかな。そう思いながら、私は目を閉じた。

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