幕間 シャーリの手記
朝凪君はかなり前向きに取り組んでくれそうだ。
信徒第一号、といったところか。
最初に疑心を抱かせてしまったのは大いに反省しなければならない。
信仰の裏を語る勧誘は今のところ、本意ではない。
とはいえ、ひとまず成功と言っていいだろう。
今回の成功は、ほぼヒグルマ教祖の初期案の鮮烈さによるものだと思う。
『キャッチーな宗教』というテーマ、今回の元となる思想、
リトルシスター、万面教、カルトASMR。
あの時、大学でみたメモ書きには確かに一つの世界観があった。
これで、信仰とは特に縁のない人生だったと言うのだから驚く。
どう生きると、仕事をやめた挙句、宗教の教祖になる計画をここまで綿密に立てようと思うのか。
この男は毎日毎日図書館に通いつめては、このようなことを考えていたのだ。
真面目な正攻法ではどうにもならない何かに対して、本気で足掻いた男を、自分はそのメモに見た。
所詮は勝手に自分がそう感じただけ。ただの思い込みかもしれん。
これも『信仰』の一種なのかもしれないな。
ふと一人笑い、紅茶を淹れて今後についての整理を始める。
自分がやったのは、この大量のメモ書きをひとつの構想にまとめる手伝い。
あとは学術的裏付けの調査と、ツテを使った各種手配。
事務や資料作成、広報等の細かい雑務は宇波君にやってもらった。
地味な仕事ばかり悪いねと声をかけたら、この活動に勤しむ時間が最近は一番楽しいと言う。
その時は笑ったが、仕事以外の時間を全て活動にあてている自分も、きっと似たようなものなのだろう。
バーチャルストリーマーの立ち絵の手配をしてくれたスボウ君からは、今後も是非関わらせて欲しいとの申し出がきている。
こちらに引き入れて、クリエイティブ系のことは全般彼に任せてもいいかもしれない。
あの話しぶりだと乗ってくれそうだ、ヒグルマ教祖に確認をとることにしよう。
あとは……
視線を落とし、女の子が座っているところを幻視してみる。
『リトル・シスター・イズ・ウォッチング・ユー』
頑張っている自分をいい子いい子しようとしてくれる。
ふっと自嘲気味に笑い、幻影をかき消す。
何が自分に効果があるか……この辺は融通を利かせられるといいかもしれない。
せっかくの万面教だ。いくつかパターンがあってもいいだろう。
自分にとって、最も感情を強く動かすもの。
少し迷って、死神を出すことにした。
成したいことがあるので、少しだけ待ってもらっている。
サボりが目立つと鎌で首をはねる契約。
……いいかもしれない。作業に身が入る。
夜の書斎。無言の死神と紅茶を共に、今後の展望や広報戦略を練る。
やることは、やれることは、まだまだたくさんある。
それが今は、ただただ心地よかった。




