表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/48

第四十五章 夜明け前


「――団長…!」


自分の声に驚いて飛び起きた。


息が荒い。


汗が噴き出す。


滴るそれを拭おうと上げた手。その袖口に愕然となる。

慌てて枕もとのスマホでカメラ起動。反転。


そこに映る顔は――あたし。


「もどって、る…」


声が、耳から聞こえる。


「あたし…は…」


有里。


あたしは、神戸、有里、だ。


もどった。

夢から覚めた。



覚めた――?


「肩…」


怪我をしたはずの左肩。

痛くない。

何の違和感もない。

あたしは、

いまのあたしは…


「…あたしだ……」


もどった。

帰ってきた。


戻りたかった、

帰りたかった。なのに、



今、戻るのか――!




「アレク……」


どうなった?

あれから、彼は。

ガイは。

ユーリは…


頭の中が、ぎゅうと推し縮められていくような痛み。

なにもかも放り出して、


あたしだけ、

あたしだけ平穏ここに戻るのか!?



『YURI!』



有里――

そうだ。


ゆり。



あれは、違う。

あれはユーリの名前じゃない。


あれは、アレクの、声じゃない。



「――!!」




声にならない叫びがあたしの喉から溢れ出た。


あの声を、あの叫びを、

あたしは。

あたしは、確かに知っている。




何も考えられず、部屋を飛び出し、そのままの勢いで玄関を走り出た。


「剛史!」


そうだ。あれは剛史の声。


ちがう?

違わない。

あたしが剛史の声を間違えるはずがない。


でも、

でも、そうなら。


息が上がる。

胸が痛い。

呼吸が苦しい。

でも、足を止められない。


あたしは帰れた。

あたしは、戻ってこれた。


でも、剛史は?

戻れないままだったなら、

彼のなかにいる剛史は――



「…い、や…」



「いや、だ……!」



剛史が、いなくなるなんて。



もう、会えなくなるなんて。



確かめないと。

ちゃんと、確かめないと。



あたしは、


あたしは、


たけしが――




「有里!!」


大声で呼ばれて振り返る。


「ゆり…」

「た…けし……」


薄暗い街灯の下。

同じように息を切らせて、


「たけ…し…」

「ゆ…り……」


ゆっくりと、


急いでしまったら、


お互いが消えてしまうかのようにゆっくりと、


距離が近づいていく。



ゆっくり、ゆっくりと。



震えながら伸ばした手が、お互いに触れそうになった時、

思い切り引っ張られて強く、強く抱きしめられた。



「有里…有里、ゆり……」

「た、けし…」

「無事…か… 無事だな…」

「剛史、こそ…」

「いきてるな…」

「うん…」

「生きてるよな…」

「うん…うん…」



夜明けのまだ薄暗い街角の片隅で。



あたしたちは、抱き合って泣いた。

パジャマ姿のままで。






本日 夜の投稿はありません。明日、いつもの時間に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ