第二十一話 師範代
ここか。
昨日のおっさんが言っていた酒場。
扉を開く。
チリンチリン――。
店内を見回す。
「どこだ?」
「ぐぅ〜……」
「ぐぅ〜……」
奥から聞こえてくる盛大ないびき。
「寝てんじゃねぇか!」
俺は思わず叫んだ。
「起きてくださいよ!」
肩を揺すると老人が飛び起きる。
「ふがっ!?」
「なんじゃぁ……」
寝ぼけ眼のままこちらを見る。
「おお、昨日の若者じゃないか」
「来たということは受ける気になったのか?」
「はい」
俺は頷く。
「この力をちゃんと扱えるようになりたいんです」
「最近、自分でも危ないと思うことが増えてきたので」
すると老人は首を傾げた。
「そうか」
「じゃがわし剣しか教えられんぞ?」
「え?」
「え?」
一瞬沈黙が流れた。
(魔法の師匠じゃないのかよ!)
昨日の雰囲気完全に魔法使いだったじゃん!
だが老人は気にした様子もない。
「まあ剣を学んで損はなかろう」
「それはそうですけど……」
なんか騙された気分だ。
「よし」
老人が立ち上がる。
「名前を聞こう」
「神白たくまです」
「たくまか」
老人は満足そうに笑う。
「これからわしのことは師範代と呼べ」
「はい、師範代」
「うむ」
満足そうに頷いた。
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酒場を出て歩きながら師範代は言う。
「剣士に最も大事なものはなんだと思う?」
「剣術ですか?」
「違う」
即答だった。
「魔力操作じゃ」
「魔力操作?」
俺は首を傾げる。
「魔力を体に流し身体能力を強化する」
「武器に流して強度や切れ味を上げる」
「これができねば話にならん」
そんなこと初めて聞いた。
「魔力って魔法以外にも使えるんですか?」
「当たり前じゃ」
逆に驚かれた。
「お前さん魔力量だけは化け物級なのにな」
「知識がなさすぎる」
ぐうの音も出ない。
「特にお前は酷い」
師範代が俺を指差す。
「才能はある」
「魔力量もある」
「じゃが制御が下手じゃ」
「量に頼りすぎておる」
嫌な予感がした。
「ちなみにどれくらいですか?」
「赤子以下じゃな」
「えぇぇぇぇぇ!?」
俺は頭を抱えた。
そんなに!?
そこまで!?
「今までよく生きておったな」
師範代が本気で感心している。
やめてほしい。
笑えない。
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「ところで師範代」
「どこに向かってるんです?」
「もう少しじゃ」
ニヤリと笑う。
「修行場じゃよ」
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しばらく歩くと街を離れた川辺に着いた。
透き通る綺麗な川。
周囲には誰もいない。
「ここですか?」
「うむ」
師範代は川を眺めながら頷く。
「まずはお前に見せてやろう」
「見せる?」
「魔力操作とは何かをな」
そう言って師範代がゆっくりと川へ手を向けた。
その姿に。
なぜだかわからないが。
俺の背筋にぞくりとしたものが走った。




