表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/23

第二十話 アレナとのデート

 ピヨピヨ。


 小鳥の鳴き声が聞こえる朝。


「たくまー! 起きるのじゃ!」


「うおっ!?」


 目を開けると、アレナが俺の上に乗っていた。


「アレナ、重たいよ……」


「たくまのバカ!」


 アレナが頬を膨らませる。


「我は重くないのじゃ! 鳥の羽のように軽いのじゃ!」


「はいはい」


 全然軽くない。


 でも朝から元気そうで何よりだ。


「たくま!」


 アレナが俺の手を掴む。


「今日はデートなのじゃ!」


「早く用意するのじゃ!」


「わかったわかった」


 そんなに急かさないでくれ。


 準備を終えた俺たちは街へ出た。


「アレナ、どこに行く?」


 そう聞くと、アレナは少し考えてから笑った。


「我はな」


 そう言って俺の手をぎゅっと握る。


「こうしてたくまと手を繋いで歩いているだけでも幸せなのじゃ」


 とんがった歯を見せながら笑う。


 耳はぴこぴこ動き。


 尻尾はぶんぶん振られている。


 その姿があまりにも可愛くて――


「やっぱりアレナは可愛いな」


「大好きだ」


 言った瞬間。


(しまった)


 声に出ていた。


 アレナの動きが止まる。


 耳がぴんと立ち。


 次の瞬間には真っ赤になった。


「た、たくま……」


 耳がしゅんと垂れる。


「急にはずるいのじゃ……」


 小さな声で続ける。


「我だって、たくまのことが大好きじゃ」


 反則だろ。


 なんだこれ。


 幸せすぎる。


「アレナ、お腹減ったろ?」


「朝ご飯食べに行くか」


「うむ!」


 元気よく頷く。


「そうするのじゃ!」


 その笑顔に俺もつられて笑ってしまった。


「うまいのじゃー!」


 朝食を食べ終え。


 次はどこへ行こうかと考える。


「お昼までどうする?」


「それなら!」


 アレナが目を輝かせた。


「我とたくまの式場を見に行くのじゃ!」


「……え?」


「なんなのじゃ?」


 アレナが不満そうな顔になる。


「我との結婚は不満なのか?」


「違う違う!」


 慌てて否定する。


「この世界にも結婚式場があるんだなって驚いただけだよ」


「そうか!」


 アレナの耳がぴょこんと立つ。


「ならよかったのじゃ!」


 それから俺たちは色んな場所を回った。


 アレナがウェディングドレスを着たり。


 酔っ払った冒険者に喧嘩を売りかけたり。


 アイスを落として半泣きになったり。


 本当に色々あった。


 だけど――


 楽しかった。


 心からそう思った。


 この世界に来て。


 たくさん辛いことがあった。


 それでも。


 今の俺にはアレナがいる。


 そう思うだけで少し嬉しくなった。


 同時に。


 守りたいとも強く思った。


「ほう」


 突然、後ろから声が聞こえた。


「そこの若いの」


「大した魔力じゃな」


 俺は反射的に振り返る。


 そこには見知らぬ老人が立っていた。


「そこまでの魔力は生まれて初めて見たぞ」


 俺は警戒する。


「なんで俺の魔力がわかる?」


 老人は笑った。


「魔眼を知っておるか?」


「生まれつき持つ特殊な目じゃ」


「ワシの魔眼は魔力量と才能を見ることができる」


 老人の視線が俺を貫く。


「それとな」


「そいつがどれだけ才能を引き出せておるかもな」


 嫌な汗が流れた。


 この人。


 ただ者じゃない。


「どれ」


 老人が笑う。


「ワシがお前を鍛えてやろうか?」


「お前さんは才能の割に弱すぎる」


 その言葉に思わず息を呑んだ。


「なんなのじゃ!」


 アレナが俺の前に立つ。


「たくまと我は今デート中なのじゃ!」


 尻尾を逆立てながら怒っている。


「おお、すまんすまん」


 老人は苦笑した。


「デートの邪魔をしてしまったな」


 そして背を向ける。


「気が向いたら来い」


「冒険者ギルド横の酒場じゃ」


「そこで待っておる」


 そう言い残し。


 老人は人混みの中へ消えていった。


「なんだったんだ……」


 普通じゃない。


 あの威圧感。


 どこかダンジョンブレイクで感じた圧力に似ていた。


 そんなことを考えていると。


「たくま!」


 アレナが腕に抱きついてきた。


「今日はもう帰るのじゃ!」


 まだ少し怒っているらしい。


「一緒に寝るのじゃ!」


「はいはい」


 苦笑しながら答える。


 そして心の中で決めた。


(明日、あの酒場に行ってみるか)


 きっと。


 俺の人生がまた大きく動く。


 そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ