第十九話 再会と別れ
食事会には結局、かんなとみおも参加することになった。
テーブルの上には料理が並び、アレナはというと――
「うまいのじゃ! うまいのじゃ!」
尻尾をぶんぶん振りながら料理を頬張っていた。
その横で。
「……」
「……」
「……」
俺たちの空間だけ妙に静かだった。
重い。
とにかく重い。
料理は美味いはずなのに空気が全然美味くない。
そんな沈黙を破ったのは、かんなだった。
「……たくっち、ごめん」
ぽつりと呟く。
「久しぶりに会えて嬉しくて……たくっちの気持ち考えず追いかけ回しちゃった」
続いてみおも頭を下げる。
「私もごめんね、たくまくん」
俺は思わず固まった。
(なん……だと?)
謝った?
こいつらが?
ということは――
(解放される!?)
俺の心が歓喜した。
「い、いいよ。そんな気にしてないし」
必死に平静を装う。
「それよりさ。みんな元気なの?」
話題を変えると、かずなりが口を開いた。
「ああ」
少しだけ表情を曇らせる。
「たくまが死んだって聞かされた後、かんなが寺山の腕を治したんだ」
「その後、俺たちは本当にお前が死んだと思った」
静かな声だった。
「だから特訓した」
「それしかできなかったからな」
そう言って苦笑する。
「今じゃ勇者様だしな」
「まぁな」
俺も笑った。
「でもなんで今回は他のみんな来なかったんだ?」
「転移の人数制限だ」
なるほど。
確かに勇者全員を一度に飛ばすのは無理か。
かずなりは続ける。
「それに他のダンジョンもおかしい」
「低級も中級もダンジョンブレイクが起き始めてる」
その言葉に場の空気が変わった。
「だから他の奴らは各地へ向かった」
「俺たちは上級ダンジョン担当ってわけだ」
王命だよ、と肩をすくめる。
それからしばらく。
俺たちは昔話をした。
学校の話。
召喚されてからの話。
勇者訓練の話。
俺がいなくなった後の話。
気づけば、さっきまでの重苦しい空気はどこかへ消えていた。
楽しい時間はあっという間だった。
「それじゃあ、そろそろ行くか」
席を立ったのはかずなりだった。
「もう帰るのか?」
「ああ」
そして、
「というか、この街を出る」
そう言った。
「え?」
「他のダンジョンの調査だ」
かずなりの表情が真剣になる。
「今回のダンジョンブレイク、早すぎるんだ」
「普通じゃない」
「何かが起きてる」
勇者の俺たちが行かなきゃな。
その言葉に冗談はなかった。
「それじゃあな、たくま」
「死ぬなよ」
「当たり前だろ」
笑い合う。
すると――
「たくっち」
かんなが指を突きつけてきた。
「まだ諦めてないからね」
「そうだよ〜、たくまくん♡」
みおも笑顔で続く。
「今回は見逃してあげる〜」
(見逃すって何だよ……)
全然諦めてないじゃねぇか。
「バイバイ!」
「またね!」
「たくっち!」
手を振る三人。
俺も振り返した。
「またなー!」
三人の姿が少しずつ遠ざかっていく。
久しぶりに会えた親友たち。
生きていて本当に良かったと思う。
だけど――
(かんなとみおとは、しばらく会わなくていいかな……)
そんなことを思ってしまった。
もちろん口には出さないけど。
絶対面倒なことになるからな。
俺はそう確信していた。




