第十八話 白い死神
数日間。
俺たちはかんな達から逃げ回っていた。
いやほんと。
なんで宿変えても見つかるんだよあいつら。
怖ぇよ。
そして現在。
俺とアレナは冒険者ギルドへ来ていた。
「よっ、死神!」
聞き慣れた声。
振り向くとソフィアがいた。
「……なんだそれ?」
「知らないの?」
ソフィアがニヤニヤ笑う。
「あんたの異名よ」
「異名?」
「あんたが助けた冒険者たちが、あの光景見て勝手に名付けたの」
ソフィアが肩をすくめる。
「《白い死神》ってね」
「……は?」
「それがすっかり流行っちゃって」
クスクス笑いながら指を差してくる。
「あんた今、死神って呼ばれてるのよ」
「なんだそれ……」
嫌すぎる。
「やめろ……そういう名前は色々思い出すんだよ……」
「?」
ソフィアが首を傾げる。
「まぁいいじゃない」
ソフィアは苦笑する。
「あんな光景見たら、そう呼ばれてもおかしくないわよ」
「……見に行ったのか?」
「あんたの氷、数日経っても解けなかったのよ!」
「マジかよ」
「どんだけ迷惑だったと思ってるの!」
いや知らん。
「まぁ何より」
ソフィアがニヤッと笑う。
「ギルド長が呼んでたわよ。早く行ってきなさい、死神さん?」
「その呼び方やめろ!」
ソフィアが吹き出した。
「アハハッ!」
……あれ?
こいつこんな笑う奴だったか?
まぁいっか。
すると横で。
「ガルルルル……」
アレナが低く唸っていた。
「アレナ、威嚇やめなさい」
「だってあの女、たくまに気安く話しかけやがって……」
怖い怖い。
「許さないのじゃ」
「お前も大概だぞ」
「たくまもたくまじゃ!」
アレナがぷんすか怒る。
「最近他の女に構ってばっかで、我のこと放ったらかしなのじゃ!」
「いやそんなこと――」
「お父様に言いつけるのじゃ!」
「ごめんなさい」
即土下座案件。
「それだけは本当にご勘弁を」
「なら!」
アレナが尻尾を揺らしながら言う。
「また今度、我とデートするのじゃ!」
「……それで許してくれる?」
「うむ!」
機嫌が直った。
チョロ――いや可愛い。
めちゃくちゃ可愛い。
笑顔で尻尾振ってる。
「……好き」
「ん? 何か言ったか?」
「いやなんでもない」
決めた。
俺これからアレナ一筋で生きる。
「おーい死神殿」
「ギルド長ぉぉ!?」
やめてくれ。
「その呼び方やめてください!」
「すまない。皆がそう呼んでいたのでな」
くっ。
広まってる。
「まぁ今回は多めに見てあげましょう」
「なんで上からなんだ君」
ギルド長が苦笑する。
「まぁ冗談はこの辺にして」
表情が真面目になった。
「神白くん。君が一人でダンジョンブレイクを食い止めたというのは本当かね?」
「まぁ……はい」
そうなるのか。
横では。
「すごいのじゃ!」
アレナが嬉しそうにぴょこぴょこしている。
「たくまはすごいのじゃ!」
可愛い。
「ふむ……」
ギルド長が頷く。
「ハッタリではなさそうだ」
「?」
「そこでだ」
ギルド長が真っ直ぐ俺を見る。
「君をこのギルド初の《プラチナ級》へ昇格させようと思う」
「……はい?」
待て。
確か。
「ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ……でしたよね?」
「ああ」
「一番上?」
「そうだ」
「マジすか!?」
「当然だろう。君の功績は国を救ったレベルだ」
そんな大袈裟な。
「それと今回の報酬だが――」
ギルド長が紙を見る。
「白金貨五百枚」
「ごひゃっ!?」
待て待て待て。
脳内計算。
「日本円で……一億!?」
「それくらいは出さねば示しがつかん」
「十分すぎます!!」
ていうか多い!
「ありがとうございます!」
ギルド長は優しく笑った。
「それでは、これからの活躍も期待しているよ」
「はい!」
話を終え。
俺たちはギルドを出る。
すると。
「おおっ!」
「死神だ!!」
「白い死神じゃねぇか!!」
「やめろぉぉ!!」
めちゃくちゃ恥ずかしい。
「そんな名前で呼ぶんじゃねぇ!!」
周囲は楽しそうに笑う。
くそっ。
「見つけたぞ、たくま」
「……かずなり?」
そこにはかずなりが立っていた。
「お前一人か?」
「ああ」
かずなりが笑う。
「久しぶりにゆっくり話したくてさ」
「……そっか」
「あの時さ」
かずなりが真面目な顔になる。
「お前、俺たち助けてくれたんだろ」
「まぁな」
「あの後……お前死んだって聞いたんだ」
少し視線を落とす。
「だから、生きててよかった」
「……」
胸が少し痛くなる。
「そっか」
俺は笑った。
「よし。飯でも食いに行くか!」
「いいのか?」
かずなりがアレナを見る。
「そっちの子も一緒で」
「ああ、紹介してなかったな!」
俺はアレナの肩を抱いた。
「俺の嫁」
大事だからもう一回言う。
「俺の嫁、アレナだ」
「お、おう……」
反応薄っ。
「なんだよその反応」
するとかずなりがアレナへ頭を下げた。
「アレナさん、たくまをよろしくお願いします」
「もちろんじゃ!」
アレナが胸を張る。
「言われるまでもないのじゃ!」
「よろしくも何もお前は俺の母親か!」
「アハハッ!」
「よし、行くか!」
「おう!」
その瞬間。
「み〜つけた♡」
背筋が凍った。




