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第十六話 修羅場帰還

 ダンジョンからの帰り道。


 空気は重かった。


 いや、重いなんてもんじゃない。


 胃が痛い。


 主に俺が。


 アレナは俺の腕にぎゅっと抱きついたまま離れないし。


 かずなりはずっと下を向いて黙ってるし。


 みおとかんなは――。


 一言も喋らない。


 怖い。


 めちゃくちゃ怖い。


 なんでダンジョンブレイク終わった後の方が命の危機感じてるんだ俺。


 そんな空気の中。


 空気をまったく読まない奴が一人。


「たくまっ!」


 アレナが満面の笑みで俺を見上げる。


「帰ったら今日は一緒に寝るのじゃ!」


 やめて。


「いつもみたいに今日はお風呂も一緒に入るのじゃ!」


「アレナさ〜ん」


 俺は震える声で言った。


「僕のこと好きなのはいいですけど、僕を殺す気ですか?」


「ん?」


 ピクリ。


 かんなの眉が動く。


「……たくっち?」


 終わった。


「その子、今なんて?」


「なんか〜」


 みおがニコニコしながら言う。


 怖い。


「一緒に寝てるとか〜お風呂入ってるとか言ってたよ〜かんなちゃん」


「……へぇ〜」


 かんなが笑う。


 笑ってる。


 なのに全然安心できない。


「よかった〜聞き間違いじゃないんだ〜」


 その瞬間。


 アレナが二人へ向かって牙を見せた。


「ガルルルルルッ!!」


 完全に威嚇モード。


「おぉ怖っ!」


 かずなりが距離を取る。


 賢い判断だ。


「たくっち〜」


 かんなが俺の肩にぽんっと手を置いた。


「街に帰ったらしっかり話し合おうね〜?」


 優しい声。


 優しい笑顔。


 でも。


「小さい頃に私と結婚するって言ってたこと、思い出させてあ・げ・る♡」


 目が笑ってない。


 怖い怖い怖い。


「あれ〜おかしいな〜」


 今度はみおが呟く。


「私もたくまくんと結婚する約束したんだけどな〜?」


 みおまで参戦!?


「なんでかな〜?」


 やめて。


 その低い声やめて。


 そんな空気の中。


 アレナがさらに爆弾を投下した。


「ハッ!」


 鼻で笑う。


「お主らは過去の女であろう?」


 おい待て。


「我はたくまの今の女なのじゃ!」


 やめろぉぉぉ!!


「そしてこれから先もずっとじゃ!」


 尻尾をぶんぶん振りながらアレナが胸を張る。


「過去の女は大人しく黙っておるのじゃっ!」


 うわぁぁぁぁぁ!!


 かんなとみおの空気が凍った。


 比喩じゃない。


 本当に冷たい。


 アレナはそんなこと気にもせず。


 つぶらな瞳で俺を見上げてくる。


 まるで。


『そうだよね?』


 と言いたそうに。


「……あぁ」


 俺は空を見上げた。


「あぁ〜終わった」


 人生終了のお知らせ。


「死んだ。ありがとう神様」


「まだ殺さないよ♡」


 かんなの声が背後から聞こえた。


 怖すぎて振り向けなかった。

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