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第十四話 勇者到着

「ギルド長!!」


 冒険者ギルドの扉が勢いよく開く。


「どうした!」


「ダンジョンブレイクです!!」


 空気が凍りついた。


「……なんだと?」


「過去最大規模です!!」


 受付嬢の顔は真っ青だった。


「今すぐ勇者を呼ばなければ……!」


 その言葉でギルド内がざわめく。


「おいおい冗談だろ……」


「五層付近にまだ冒険者いたよな……?」


「クソっ……!」


 ギルド長が叫ぶ。


「総員戦闘準備!! ダンジョン周囲を防衛しろ!!」


 その時だった。


「……なんで」


 ソフィアが小さく呟く。


「あいつら……まだ帰ってきてないの?」


 嫌な予感が胸を締め付ける。


 もし。


 もしダンジョンブレイクに巻き込まれていたら。


「私が素材なんて頼んだから……?」


 脳裏に浮かぶ。


 無愛想な新人。


 獣人の少女。


「また……」


 ソフィアの拳が震える。


「また死なせるの……?」


 嫌だ。


 まだ。


 死体を見るまでは信じない。


 だけど。


 時間だけが過ぎていく。


 勇者は来ない。


 空気がどんどん重くなる。


 誰も笑わない。


 そして。


「勇者が到着したぞ!!」


 歓声が上がった。


「遅ぇよ!!」


「五時間だぞ!?」


「仕方ないだろ! 転移準備には時間がかかるんだ!」


 その中を。


 三人の男女が歩いてくる。


「よーし!」


 先頭の少年――かずなりが声を張る。


「俺たちならできる! 今まで何のために訓練してきたんだ!」


 その言葉に空気が少し変わる。


「俺たちには神聖属性のかんなもいる! 絶対大丈夫だ!」


「おおおっ!!」


 冒険者たちが武器を掲げた。


 ギルド長が叫ぶ。


「未帰還者は!?」


「四名です!!」


 頼む。


 生きていてくれ。


「行くぞ!!」


 そして勇者たちはダンジョンへ突入する。


 だが。


「……なんだこれ」


 かずなりが足を止めた。


 寒い。


 奥へ進むほど異常に冷えていく。


「気をつけろ。体調を崩すかもしれない」


 みおが周囲を見る。


「でも変じゃない?」


「モンスターが一匹もいない……」


 確かに。


 三十分以上歩いているのに遭遇ゼロ。


 静かすぎる。


 そして。


「――っ」


 空気が変わる。


 視界の先。


 ダンジョン内部すべてが青白く凍りついていた。


「なんだよ……これ……」


 氷の世界。


 その中心には。


 気絶した冒険者二人。


 そして。


 一人の男を抱きしめて泣いている獣人の少女。


「……たくま?」


 かんなが呟く。


 次の瞬間。


「たくまっ!!」


 彼女は駆け出していた。

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