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Twin Me  作者: ぼなぺてぃーと
第1章 「1年生編 僕の世界と、夢のセカイ」
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14/22

14話 「自分じゃ気付けないものだぜ?」

ブン!と釣り竿をしならせて、沖の方へとルアー(疑似餌)を飛ばす。


今日は恭介の誘いで、二人で釣りをしに来ていた。


一日中、曇りの予報で、日差しを受けないだけでかなり過ごしやすい。


時折、遠くの方を漁船らしきものが通り過ぎていくのが見える。



波の音も心地よく感じられて、ただぼーっとしている時間が多いけど、こういうのも嫌いじゃない。


チルい、ってこういう時に言うのかな?


「晴太、最近どうよ」


「え、最近?変わらず平凡な日常を享受してるよ」


これと言って特に変わったことはない。



夏休みに入ってからは、定期的にみんなと遊びに行ったり、何もない日はちょっとずつ課題を進めたり…ごく普通の夏休みって感じだ。



「そうか。なら、良いけどよ」



海の方に目線が向いたまま、彼はそう言った。


「逆に恭介はどうなの?」


自然な流れでこちらも同じことを聞き返す。


夏休みでも部活はあるだろうし、割と忙しい方なんじゃないかな。



「俺もまあフツーだな。部活でリーグの予選が9月からあってよ、それに向けて頑張ってる」



へえ、もう大会とか始まるんだ。


少し前、恭介は晴れてスタメン入りを果たした。



下校するとき、部活に勤しむ彼を目にすることがあるけど、上級生に交じってプレーしていることが多い。



体格でも見劣りするどころか、むしろ勝っているかもしれない。


「凄いなあ…、羨ましいよ」


ぽつん、とそんな言葉を僕は零す。


幼馴染である彼を、近い距離でずっと見てきた。

昔から、彼の周りには人がたくさん集まってくる。


明るくて、ユーモアがあって、強靭なメンタルを持ってて。



恵まれた体格だけれど、それにあぐらをかかず、ひたむきに努力を続けることができて。



本当にたくさんの魅力が備わっている。


劣等感…というほどではないものの、たまに僕自身と比較してしまうことがあった。



「…。俺だって、お前が羨ましいけどな」



一瞬、聞き間違えたかと思ってしまった。


何をもって僕のことを羨ましいなんて感じるのだろうか。


全てが中途半端で、何かが世の中の人より優れていると思うことなんてない。



寂しい考えかもしれないけど、僕の代わりなんていくらでもいるし…。


明日いきなり僕がいなくなったとしても、社会の歯車は寸分の狂いもなく回り続ける。



それくらいちっぽけな存在なんだ。



「やめてよ…僕なんて、大したことないのに」



自虐っぽく、困ったような笑顔になってしまった。



「いいところって、自分じゃなかなか気付けないものだぜ?」


恭介らしくなく、名言みたいなセリフが出てきた。


どういう意図があってそう言ったのか気になるけど、さらに彼は言葉を続ける。



「晴太は自信なさそうにしてるけどよー。お前は、俺にないものをたくさん持ってる」



恭介になくて、僕にあるもの…皆目、見当がつかない。


お世辞なんじゃないかとさえ思ってしまうけど、そんなこと言うやつじゃないしな…。




(うわっ、冷た)




一際大きな波が防波堤に押し寄せ、水しぶきが降り注ぐ。



そろそろ満潮の時刻だから、来た時よりも水面を近くに感じる。



その時。



揺らぐ波の動きを眺めていると…奇妙な感覚に襲われた。



この景色を、どこかで見たことがある。デジャブだ。




……いや、違う。




僕は「夢の中」で、これを見たことがある。



そういえば例の不思議な夢のことを、すっかり忘れていた。


3カ月くらい前…何度か、変な夢を見たんだ。



知らない場所にいて、女の子がいて。

なんで今思い出したんだ?



眠くなったりして、意識がぼやけてきた時にしか思い出せなかったはずなのに。



「晴太?ぼーっとして、どうしたんだ?」



隣から恭介の声が聞こえて、はっと我に返る。


少し迷ったけど、恭介もあの時相談してくれたし、あの夢のことを話すことにした。




「面白半分で聞いて欲しいんだけど…実はちょっと前、不思議な夢をみたんだ。どんなのかって言うと…」




できるだけ、覚えている内容を細かく説明した。



言葉にしてあの記憶をたどっていくと、なぜか次から次へとスムーズに思い出すことができた。



「…っていうことがあったんだ。」



思わずそこそこ長く語ってしまった。


そんなの有り得るかよ、って内容しかなかったと思うけど、恭介は茶化さず最後まで聞いてくれた。



こういうところが良い奴なんだよな。



「そりゃ奇妙なモンだな…。お前に、何かを伝えようとしてるんじゃねえか?」



伝えたいことか。

神様からの啓示…みたいな?




……あいにく僕は無神論者だ。


初詣でどんなことを祈ろうと、おみくじにどんなことが書いてあろうと、その通りになったことなんて一度もない。



それどころか3日もすれば、そんなことは忘れてしまっているものだから。



「でも、この夢を楽しみにしてる自分もいるんだ。」



見たいか見たくないかで言うと、また夢を見てみたい。


こういうファンタジー的な体験って、なんかロマンを感じる。



「こういう内容の夢を見よう」と思って見れるものじゃないから、単なる妄想と違って価値があるように思う。



例えるなら、土日に学校が休みの日と、台風で臨時休校になった日の違いみたいな。


同じ休みだけど、後者の方が特別感を感じる。



「もしかしたら今日、その夢をまた見るかも……なっ!」



恭介は糸を巻いて海から何かを引き上げる。名前は分からないけど、そこには立派な魚が食いついていた。




釣果をあげたところで、今日はもう切り上げることにした。

気温もだいぶ上がってきたし。



時刻は朝9時を回ろうとしている。釣りに行く日は基本早朝からになるので、眠気がすさまじい。



話しているうちは大丈夫だったけど、自分の部屋に戻ってくるとすぐに力尽きて寝転がってしまう。



お腹が空いている気もするけど、睡眠欲の方が勝った。


今寝たら、何時に起きるだろう…昼くらいに起きれたらいいな。



アラームすらかけずに、僕は目を閉じる。




セミの大合唱さえだんだんと遠くに感じるようになって…全身から力が抜けていく。


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