13話 「杞憂」
ほぼタックルみたいな感じで、前に吹き飛ばされてしまった。
何事かと思ってようやくその正体を確認すると…渦中の人物がいた。
「あ、綾寧?」
昨日の様子からは想像できないくらい、いつも通りの彼女。
吹っ切れたというか、カラっとした顔で、言葉を発する。
「昨日はごめんね。まー、色々あったのですがぁ…。綾寧ちゃん、復活です!」
右手でピースしながら、復活宣言。
それを聞いて、僕は胸をなでおろす。一連の不安は、おそらく杞憂だったということだ。
「それは良かった…。けど、暴力は良くないと思うな。」
本当は聞きたいことがたくさんある。けれど、本人がこうして今まで通りの姿を見せているのなら、それ自体が答えになっているんじゃないか。
綾寧なりに、昨日あった出来事に区切りをつけられたってことだ。
「暴力だなんて人聞きが悪いなー(笑)、愛情表現だよっ!」
全く、どんな愛情の形だよ…でも、なんだか胸が暖かい。自然と顔が緩んでしまった。
元気を取り戻した彼女と、他愛ない雑談に花を咲かせる。
その間、一人…また一人とクラスメイトが登校してくる。
そして、一際フレームの大きいやつが教室に入ってきた。
「晴太、綾寧!グッモーニン!」
「恭介、おはよっ!今日も蹴球の朝練?」
「サッカーって言えよ、分かりずれーな(笑)」
恭介も以前までとなんら変わりない振る舞いを見せる。
「心配すんな!」と言われているような気がした。
ずっと好きだった友達に振られてしまって…その悲しさとか悔しさは計り知れないけど、彼は前を向くことを選んだんだ。
そして翔と鏡花もそこに加わって…いつもの「居場所」のパーツがすべて組み合わさった。
「晴太?どうしてそんなに笑ってるんだ?」
「ははっ…、なんだか、嬉しい気分なんだ。」
じんわりと…噛みしめるように、この居心地の良さに浸る。
これからも、大小関係なく、色んな出来事が起きていくだろう。
その度に、僕たちは思い悩んで、結論を出して、明日からの生き方を選択して。そういうことの連続が、人生を形作っていく。
「よーし、5人揃ったところで…。夏休みの計画、立てちゃうよーっ!」
一緒に過ごせる夏休みは、あと3回。休みとは銘打たれているけど…休んでばかりはいられない!
窓ガラスに反射する僕たちは、太陽に負けないくらいに…
輝いている気がした。




