3 友だち
《ごめんね》
ユイちゃんからメッセージが来たのは翌日の午後のことだった。
ユイちゃんはリナのイジメが始まってからもわたしと一緒にいてくれた数少ない友だちの一人で、やがてわたしと一緒にいてくれるたった一人の友だちになった。
父さんに、「頭が痛いの」と嘘をついて学校をサボり、ベッドでだらだらとしているとき、枕の下に入れっぱなしのスマホがメッセージの到着を告げた。
わたしの筆箱が机から払い落とされたとき、ユイちゃんはそれをさりげなく拾ってくれた。あまりにもさりげなさ過ぎて、筆記用具を落としたリナも気付かなかったほどだ。
わたしの目の前でわざとドアが閉められたとき、ユイちゃんは自分が通るふりをしてドアを開けてくれた。彼女は廊下になんの用事もなかったというのに。
たった一言のそのメッセージが、ユイちゃんの優しさを物語っていた。
なにか、返さなくちゃ。
だけどわたしはなんとメッセージを打っていいのかわからず、両手で握りしめたスマホをただ見つめていた。
ユイちゃんの優しさに応えられない自分が、情けなかった。
《明日は、学校来る?》
いまは、昼休みか。
ユイちゃんはきっとトイレかどこか、リナたちの目の届かないところでメッセージを打っているんだろう。さすがにリナもいちいち他人様のメッセージを盗み見たりはしないだろうけど、ふとした拍子にわたし宛のメッセージを見られたりするのは誰だって避けたいところだ。
イジメなんて、なにをきっかけに始まるかわかったものじゃない。
今回わたしはそれを身をもって知ったし、わたしがどうしてリナに目を付けられたのか、わからなかった。
それに、リナはいつでも誰かをいじめていたわけじゃない。それどころか、彼女が誰かを攻撃するなんて想像もできなかった。
少々目立ちたがり過ぎるところがあったとはいえ、明朗快活が服を着て歩いているような女の子だった。それが、あんなにあっさりと陰湿な行為に踏み出すなんて……。
《体調は悪くない?》
ユイちゃんのメッセージ、順番が逆だよ。そう思って、わたしは少し笑った。
普通なら、体調を聞いて様子を見て、それから核心に触れるのに。ユイちゃんはいきなり核心を衝いてくる。しかも彼女はなにも悪くないのに、いきなり《ごめんね》だ。
わたしがここにこうしているのは、ユイちゃんのせいなんかじゃないのに。強いていうなら、リナのせいか、わたしのせいか。
少なくとも、学校をサボってユイちゃんに心配をかけてるのはわたしのせいかな。
《また連絡するね》
返信できないまま、ポツリポツリと届くメッセージを受け取るだけ受け取っているあいだに、昼休みの終わりの時間になってしまった。
《大丈夫だよ》という嘘も、《もう嫌だ》という本音もスマホの向こう側に届けられないまま、友人の優しさに甘えるだけのクズが、ベッドの上に横たわっていた。




