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3.異世界生活42日目

 雨の月 土の日 天気:晴れ


 どうも、葉加藤(はかとう)久太(きゅうた)です。


 異世界生活二か月目にしてとんでもないものを見つけてしまった。


 子供である。

 

 小さな男の子が何故だか、素材採集の場所に一人で捨て置かれていたのだ。


 声をかけると、


「パパ!!」


 と呼ばれたので、


「ノー!!」


 と言ったら泣かれてしまった。


 俺は慌ててこの子を慰めようと変な顔をすると、


「そんなので最近の子供が泣き止むと思ってるの? 馬鹿なの?」


 と言ってきやがった。


 クソガキぃ!! 大人なめるんじゃないよっ!?


 心配したらこの様か。


 どうやら泣いたふりをしていたそうだ。


 小賢しいんだよぉ!!


 馬鹿馬鹿しくなって相手するのを辞めると今度は付いてきやがった。


 自分の家に帰るように伝えると、


「ないよ。帰る場所なんて」


 帰る家がないなら、今までどうしていたのかと聞くとなんと両親が失踪したらしい。


 家はあるけれど親がいないため、こんな場所までフラフラとやってきたそうだ。


 助けてくれる大人はいないのかと聞くと、俺を指差してきた。


「貴様に我を助ける機会を授けようぞ」


 なんで上から目線なん? なんで高貴な一人称?


 俺はため息を吐きつつ、その男の子と話しながら素材採集の仕事をやり切った。


 ギルドに戻り報酬を受け取ると、男の子は自分の家に帰ると言っていなくなった。


 そういえばこの街で子供って見ないな。


 俺は図書館に行って読書していたノリちゃんに聞いた。


 ノリちゃん曰く、今の異世界全体で少子化が進んだ結果、子供は全員国王様の住む王都アルカディアに集められ、そこで教育を施されているそうだ。


 そのためこの街に子供は存在しないはずと言っていた。


 俺は男の子(名前聞かなかった)の話をすると、驚かれた。


 もしかしたら幽霊でも見たんじゃないかと言われ、俺は背筋が凍り付いた。


 そんなまさか……ね。


 話を終えて馬小屋に戻るとさっき会った男の子がいた。


 俺はびっくりして声をかけると


「家に来てよ」


 と言われた。


 馬小屋には他に何人かいたが、俺以外は全員寝たままであった。


 先ほどノリちゃんとの話で幽霊かもしれないと言っていたが、寂しそうに服の裾を引っ張る男の子の様子に絆されて仕方なくついていくことになった。


 街の中心から離れた場所。


 そこにはレンガ造りの立派な家があった。


「ここが我の城だ。来るがよい」


 だからなんで偉そうな口ぶりなん?


 俺は心の中でツッコミつつ、男の子のあとに付いていった。


 そこそこ広い家前の庭を通って家の中に入る。


 幽霊屋敷じゃないよな?


 警戒しつつ、家の中を見ると変わった様子はなく、質素な雰囲気を漂わせていた。


 落ち着いた柄の調度品で統一された家具や装飾。


 両親が失踪したと言っていたが、家の中は乱雑にはならず、埃が溜まった様子も見られなかった。


 誰かが定期的に綺麗にしたような感じがした。


「どうだ? 良いであろう?」


「そーですね」


 俺は棒読みで返事をした。


 ここに来るまでに何度か男の子に名前を聞いたが、全てはぐらかされてしまった。


 怪しいと思いつつも、小さな男の子を放っておけず、俺はここまで来てしまったのである。


 客間らしい部屋に通されると、男の子は何をして遊ぶかと聞いてきたので、かくれんぼを提案した。すると――


「はっ! じじいが!」


 鼻で笑われた。


 寂しそうにしていたから付いてきてやったのにこの有様か!?


 俺は内心イライラしたが、男の子が楽しそうにしていたため、自然と怒りは収まった。


「おじさんがそれでいいならかくれんぼで遊ぼう」


 おじさんじゃなくてお兄さんなっ?


 俺は男の子と一緒に家の中でかくれんぼで遊んだ。


 身体の大きい俺はテーブルの下や、ベッドと壁の間など隠れる場所に限りがあったが、それでも男の子が楽しそうに見つけてくれた。


 ようやく年相応に笑った顔を見れて幽霊とか、生意気な子供とかどうでも良かった。


 午後にもう一度素材採集のクエストに行こうとしたが、今日はもう諦めた。


 夢中になって遊んでいると窓から西日が差し込み、夕暮れであることに気が付く。


 今日はもう終わりだと男の子に声をかけるが、どこにもいなかった。


 家中探し回ったが、どこにもいない。


 外に出たのか? 


 いや扉が開いた音はしなかった。


 困って客間に戻ると、テーブルの上に一通の手紙がポツンと置かれていた。


 読むと、


「遊んでくれてありがとう。父さん母さんに呼ばれたので、ボクは行きます。お礼に家はおじさんに上げるから自由に使ってね」


 手紙にはそう書かれていた。


 玄関を開けると西日に照らされた庭が輝いて見えた。


 誰かが手入れしたように整っていた庭は、まるで新しい家の主を祝ってくれているかのように綺麗で目が離せなかった。


「意味がわからねえよ」


 俺はいなくなった男の子に向けて文句を垂れて庭を歩く。


 振り返るとレンガ造りの家は西日に照らされて赤色だった色が、オレンジ色に見えた。


 整えられたこの家にあの男の子と両親は暮らしていたのだろうか。


 そこに見知らぬ赤の他人の自分が住んで良いのか?


 俺はすぐに住もうとは思わず、役所に行って誰の家なのか確認しに向かった。


 窓口の人に確認すると「ジョン・ドウ」という名義人から、俺の名義「葉加藤久太」に代わっていた。


「家を譲る際に土地の権利書と家の所有者等書類が予め廃棄されていると、最初に家に上がった人に自動的に名義が変えられる」とのこと。


 なんだそれ。


 更に事情を聴くと、あの家は男の子を含めた三人家族で既に旅先で亡くなっていたらしい。


 幽霊確定じゃん、こわ。


 残された家には魔法がかかって役所の人間も入れなかったそうだ。


 そのため持ち主不在のまま、何十年と経っていたため、新しい所有者が現れて役所の人も驚いていた。


「この街も事情があって空き家のままの場所が多いのです。もしよろしければそのまま居住していただければありがたいのですがいかがでしょうか?」


 俺は悩んだ末に、了承して受け入れることにした。


 こうして幽霊ハウスこと、一軒家を俺は手に入れるのだった。




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