2.異世界生活2日目以降約一か月間
花の月 水の日 天気:曇り時々晴れ
どうも、葉加藤久太です。
昨日は浮浪者の人たちが寝泊まりする場所に一緒に泊めてもらった。
使われていない馬小屋を勝手に使って藁のベッドを用意して共同で生活をしているそうだ。
ありがてぇ。ありがてぇ。
この街では女神の源泉という無限に湧き出る水と、女神の食事かごという無限に食料が手に入るかごがあるらしく、食料事情に困ることはないらしい。
そのため配給も底が付くこともないし、魔王軍も進行してこないため、唯一の安全地帯にしてこの世の楽園だそうだ。
凄いなチャレンジタウン。
凄いな女神マリアン。
そんなに凄いことが出来るのなら、転生者にスキルを与えるのではなく、もっと画期的な方法で魔王軍を倒せそうだが、…………うん。無理だろうな。あの女神だったら。
しかし、魔王軍が侵攻してこないなら、この異世界を完全に支配下に置くなんてことはできなさそうだ。
あの女神も解雇されることはないだろうし、何故あんなに追い詰められた感じでいたのだろうか?
ここもいずれ突破されると予期しているのだろうか?
…………いや、考えなしに強力なスキルを授けているあの様子から見てそこまで考えてはいなさそうだ。
というか、あの女神はこのチャレンジタウンを見ても強力な力があると見て間違いない。
仮に彼女が解雇され、新しい女神様が登場するとでもなれば、この情勢を簡単に変えられるような気がする。
早くクビにならねえかなぁ、女神マリアン。
そんなことを考えながら、俺はギルドにやってきた。
昨日、分かったことだが、この街は金がなくとも衣食住に困らない。
そのため金を払って食事や泊まるところを探すと、サービスの行き届いた金持ち向けの高級路線の飯屋と宿屋に絞られてしまう。
だから最安でもそこそこ高い値段になってしまうそうだ。
物価が高いというよりも、金持ち向けばかりの店が多い。
特別素材採集の依頼が安いわけではなさそうだ。
俺は報酬は少ないが、危険も少ない素材採集でコツコツとお金を貯めながら、今後の行動目的を決めようと心の中で考えていた。
ーーー
毎日コツコツ素材採集のクエストをやっていたら、貯金が10万ガルドを超えた。
やったぜっ!
素材採集はモンスターのいないいわゆる安全地帯で薬草や鉱石などを集めてギルドに収めるという仕事だ。
この異世界に来て既に一か月以上経過し、毎日配給と浮浪者たちと一緒に寝泊まりをしたおかげでお金を使わずに働いた分だけ貯金できた。
俺は現世でもそうだったが、物欲がなかったため、この街でも散財することなく、ひたすら毎日金が貯まるのを楽しんでいた。
その間に知り合いも友達も増えた。
まず同じ転生者の大社紀太郎ことノリちゃん。
ノリちゃんは瞬間移動を使える元人類軍の冒険者だった。
今はこの街で毎日図書館で読書して過ごしているそうだ。
たまに他の街へ出かけては心と体を傷つけて帰ってきていた。
理由を聞いたら、知り合いに会いに行っては殴られたり、蹴られたりするらしい。
そうまでして何故会いに行こうとしているのかと聞いたら、相手は元冒険者仲間で親友とも呼べる相手だそうだ。
その親友は魔王軍との戦いで恋人が死に、自身も左手を失って酒浸りになっているらしい。
心配で定期的に会いに行っているそうだが、アルコール中毒で周囲の人に八つ当たりをするようになってしまったそうだ。
一緒にチャレンジタウンに行こうと言っても頑なにそれを拒否するらしい。
亡くなった恋人が好きだった街に留まっていたいそうだ。
その親友は元々凄い穏やかで優しい奴だったと話すノリちゃんの目は涙で真っ赤になっていた。
だからこそ暴力を振るわれて酷いことを言われても見捨てられずに会いに行っているらしい。
ノリちゃんは優しい。
そして悲しい話だった。
幸いにも金には困ってはいないそうで、一人で暮らしているそうだが、恐らく時間の問題だ。
気づけば孤独死している可能性が高い。
そうはなってほしくないとノリちゃんは思っているそうだが…………。
話を聞いていた俺に出来ることはノリちゃんの話を聞くことぐらいだった。
それでノリちゃんの心が少しでも楽になってくれたら嬉しい。
次に紹介するのは同じ転生者で冒険者の板垣三二ことサブ。
サブも魔王軍と戦って逃げてきた一人だった。
スキル消える潜伏を持つ彼は、モンスターを観察することが好きだと話す。
今もチャレンジタウンの周辺だけだが、フィールドに出てモンスターを観察してはそれを絵に描いているそうだ。
本当は写真が欲しいそうだが、この世界にはカメラがなく、仕方なく絵を描いているそう。
最近は絵を描く方が楽しくて、フィールドに出ずに街中を歩く人たちを観察して描いているらしい。
前世で絵を描くことなんてしなかったのに、自分にとってこんなにも楽しく向いているものであったのかと驚いているそうだ。
貯金を崩して紙と絵筆を買っては絵描きとして毎日を充実させているらしい。
俺も描いてもらった。
俺自身、特別イケメンじゃないのに描いてもらった絵は自分で言うのもあれだが格好良く描かれていた。
お礼に画材道具を買ってあげたら喜んでくれた。
また今度描いてもらおう。
最後に紹介するのはこちらも転生者で冒険者の倉野圭介ことケースケ。
ケースケは愛すべき馬鹿という言葉が似あう男だった。
ギャンブルが好きで金があればすぐにカジノへ行き、身包みを剥がされ一文無しになって泣いて帰ってくる。
というかこの街チャレンジタウンは娯楽施設も充実しているらしい。
カジノもそうだが、図書館もあり、温浴施設もあるそうだ。
もう挑戦する気になれないよ。
この街で余生を過ごせちゃうよ。
話を戻そう。
ケースケは女好きでもあり、よく風俗店にも出かけていた。
俺も誘われたが、散財してしまいそうなのと性病が怖かったので断った。
べ、別に童貞だからってビビったわけじゃねーし!!
行こうと思えばいつでも行けるし! 今行こうとは思わなかっただけだし!!
まあこの話はもういい。
そんなケースケも人類軍として魔王軍と戦っていたが、女好きなのによくサキュパスの精力搾取から逃れられたなと話すと、
「あいつら嫌な臭いがしたんだ。ただのサキュパスじゃねえぜ」
そう言っていた。
五感が異様に良いらしく、スキル高速移動はそれを更に特化させた能力だそうだ。
金がなくなると自慢のスキルを活かしてサンダーバードというモンスターの卵を盗んでは換金しているらしい。
結構な値段になるらしく、一個3万ガルドするそうだ。
稀にノリちゃんを誘って(瞬間移動目的で)一緒に卵を取りに行くそうだが、一人ならともかく集団でフィールドに出ると魔物たちの脅威が格段に上がるらしい。
習性なのか理屈は不明だが、より凶暴にしつこく襲ってくるそうだ。
そのためノリちゃんとは稀にしか一緒に行かないらしい。
主な友達はこのくらいだ。
一か月も一緒に過ごすうちに打ち解けあって三人とも仲良くなった。
このまま平和な日常が続けばいいなと思う今日この頃である。




