大クスの寝心地
大クスの根元に入ったらそこはちょうど腰かけられるような形状になっていた。
目を瞑り半年ほどは意識がある状態だった。
その後、完全に睡眠期に入った。
とても心地よく、まるで赤子が母親に抱かれているような感覚だった。
眠りについてからは何度も台風が通り過ぎたがそのたびに大クスが守ってくれた。
時には朝露を口元に運んでくれたりもした。
数十年に一度人が流れ着き数年この島で救助を待ちながら暮らした。
大クスのすぐ根元まで来ることもあった。
だが俺が入った大クスの根元の入り口は完全に根っこで覆われており見つかることはなかった。
また、この島に救助が来ることも一度もなかった。
150年ほど経ったころ、どこかの国がミサイル訓練の標的にこの島を選んだらしく3発のミサイルが打ち込まれた。
島は半壊したが大クスは無事だった。
ミサイルでえぐれた部分は10年ほどで完全に緑に覆われた。
200年ほど経ったころ、またどこからか流れ着いた人が3人住むようになった。
男が2人と女が1人。
住み始めたころはお互い役割分担し協力して生活していたが、数か月経った頃に仲間割れをしたらしく、二人から離れ一人の男が大クスの根元を拠点にし始めた。
ある日その男は大クスの根を切り始めた。
新居にするつもりらしい。
ただ、大クスの根っこは太くそう簡単には切れなかった。
それでも男は諦めなかった。
毎日毎日少しずつ根っこを切った。
俺のほうにも陽の光が差すようになった。
それと同時に俺も覚醒していった。
俺がいる空間につながる根っこを切り終えた男は何も知らず入ってきて俺と目が合うと声にならない悲鳴をあげ腰を抜かし這いつくばって根元から出て行った。




