16話「同じ主人を持つ兄妹」
朝。
静かに目を開けると痛いくらいの明るい光が目に入ってくる。
「あ、春様起きました?」
ひょこっと人懐っこそうな明るい笑顔が顔をのぞかせる。
リーがカーテンを開けているところだった。
「リー……えぇ、おはよう」
「おはようございます、春様!……あ、魔物討伐の件、お兄様に聞いてきてありますけど……どうします?直接お聞きになりますか?」
「そうね……せっかくだからそうしようかしら」
「なら早くお着替え済ましちゃいましょう!」
リーはそう言うとぱっと明るい顔をさらに明るくさせて、嬉々として服を選びに行った。
「ギル、今少しいいかしら?」
着替え終わり、スッと扉を開けるとギルはそこに立っていた。
まぁ、護衛なのだから当たり前だけれど、なんだか廊下に立たせてしまっているようで申し訳ない。
「大丈夫です。魔物討伐の件ですよね」
「えぇ。ここではなんだから、入ってくれる?」
「わかりました、失礼します」
綺麗な礼を一つしてギルが入ってくる。
その様子を見てリーが椅子を用意してくれていた。
「春様、お兄様、どうぞ」
「ありがとう」
「助かる」
椅子に腰を下ろし、リーがお茶まで用意してくれているのを横目に見ながら本題に入る。
「それで、簡単なことはアルから聞いているのだけど……場所は3ヶ所で期限は二ヶ月ってことで合ってるかしら?」
「はい。それで間違いありません。リーファ」
「地図ですよね、どうぞ」
お茶を持ってきてくれたリーにギルが一声かけると打ち合わせていたかのようにスッと地図が出てくる。
「よくわかったわね、リー」
「まぁ同じ主人に仕えてる兄妹ですので!あ、これ春様の分です。お紅茶が苦手とのことだったのでシルフィたちに手伝ってもらってコーヒーというものを入れてみました」
「わざわざ悪いわね、ありがとう」
「いえいえ〜!」
精霊が見えて聞こえるリーは、私の精霊たちに懐かれており、ここ数日でかなり仲良くなったようだ。
コーヒーに手を伸ばしながらちらりとリーたちの方を見ると後ろでハイタッチをしているリーとシルフィ、ニンフが見えた。
(リー、存在の認識だけじゃなくて触れることもできるのね……)
今までこれほど優れた人間は見たことがない。
もしかしたら、魔力が良いというよりは元々精霊に好かれる性質の方を持っていたのかもしれない。
(まぁ、あまり前例のないことだから私もあんまりよくわからないのよね……精霊たちを生み出すのだって能力どうのって言ってるけれど、好奇心で適当にやってみたらできたって方が正しいし……)
お母様たちならば、色々知っていたかもしれないけれど……もう死んでしまった今、聞くことは叶わない。
「……春様?」
考え込んでしまっていた私を心配するかのようにギルが声をかけてくる。
「あぁ……なんでもないわ、悪かったわねぼーっとしちゃって。続けてもらっても良いかしら」
「はい、わかりました。では場所からいきましょう。まず春様、この国の名前は覚えていますか?」
「えっと……ガーランド王国……とかじゃなかったかしら?」
「正解です」
「春様すごいですえらいです!」
「……えぇ、ありがとう」
ほとんどうろ覚えだった国名だが、どうやら合っていたらしくリーに子供のように褒められる。
まぁ確かにここ数日の私の名前の記憶率は限りなく低かったからリーがそうなるのもわかるが……わかるが複雑な気分だ。
「そして、この世界は大きく分けて5つの大陸、10の国に分かれます。ここ、ガーランド王国はちょうどこの辺りに位置します」
ギルはリーの持ってきてくれた地図の、中央にある大陸の左下を指差す。
そこには確かに、小さく『Ga-rand』と書いてある。
ちなみにこの国の文字は少し違うところもありそうだが、基本的には日本で言うところのローマ字だった。
わかりやすくて助かる。
「今回は国内なので関係はありませんが、もしかするとこの隣の国……エルテシア王国にも行くことになることもあるかもしれませんので、一応そのことも頭に入れておいてください」
「わかったわ」
私がそう頷くと、ギルは地図を裏返した。
そこにはガーランド国内の地図が書いてあった。
「今回春様に訪れてもらうのは『ヒスタリオ』『ネオール』『トルテシタン』の三地方です。」
中央の王都から見てヒスタリオは北西、ネオールが南西、トルテシタンが東に位置していた。
「ここからだと、ネオールが一番近いのね」
「そうですね〜。あ、ちなみにヒスタリオはすっごく寒いですよ!」
ひょこっと顔を覗かせたリーの寒いと言う言葉を聞き、無意識に眉が寄る。
すぐに気づいて戻したのだが、リーには気づかれたらしい。
「あれ?春様もしかして寒いの苦手ですか?」
「……まぁ、暑すぎるのも寒すぎるのも苦手ね。でも気にしなくていいわよ、温度調節くらいできるから」
「それも精霊の力ですか?すごいですね〜……」
「……話を戻しますが、順番的にはどんなふうに行ってもらっても構いません。状態はどこも対して変わりませんので。一番近いネオールはここからだと馬車で1時間ほどです」
「1時間……それなら今からでも行けそうね」
そう呟くと、すぐさま二人が答えた。
「準備いたしますか?」
「えぇ、お願いできる?」
「なら私はアルフォート様にお知らせしてきますのでこの場を離れないようお願いします。リー、頼んだぞ」
「もちろんです、お兄様」
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