第1話:ネコとシェイクと蒼いパスケース④
ミセスバーガーは、日本最大手のハンバーガーチェーン店であり、一番の人気商品はイカの天ぷらを挟んだ天バーガー。巡と占は帰り道にこのミセスバーガーでシェイクを飲みながら雑談することが多く、憩いの場となっている。しかし、こうして占から誘われることはあまりなかったため、巡はやや動揺しながら入店した。占は窓際のカウンター席に座っており、巡を見つけると手招きで横に座るように促す。
「巡が好きなシェイクを頼んでおいたから。ちょっと溶けてたらごめんね」
「いやいやむしろありがとうというか…何かあったの?」
なぜ自分を呼び出したのか聞こうとするも上手く言葉にできない巡に先立って、占が口を開く。
「…今日起こったことは、巡に全く責任のないことだし、自分を責めちゃだめだよ」
「へ?」
「昨日ああいう話をして、巡は張り切ってたから、何もできないことに対して余計に凹んでたらどうしようかと思ってさ…」
巡は占から発せられた予想外の言葉に驚きながら、どこか安堵した気分になった。
(占ちゃんには何も起きてなかったのなら良かった…)
占は巡を励ますために呼び出したのであり、彼女の優しさと彼女自身には異変が起こっていないことを実感して、巡はとても暖かい気持ちに包まれたのであった。
「本当にありがとね。気にしてないといえば嘘になるけど、なんか自分にできることがあったんじゃないかと考えすぎちゃって…」
「いくら生徒会長とはいえ、他人様のこじれた恋とか枯れてしまった花壇を即座に解決することはできないもん。気にしすぎるのも体に毒」
「そうだよね…何かできたのではという話もあるけど、個人的にはこんなに同じ日に異変が起こったこともちょっと気になってね…」
「…やっぱりそこが気になっちゃう?」
「昨日まで何もなかったのに一度にたくさんの異変が起こったことが凄く気になるんだよね。今日は学校中でたくさんの騒動が起きていたから誰もそんなことを気にする余裕はなかったみたいだけど…」
「実を言うと私もそこが気になってて、巡と相談したいなと思ってたんだけど、ちょっとこの写真を見てちょうだい」
占は、手に持っていたシェイクの入れ物を机に置くと、スマホを取り出し、一枚の画像を見せる。
「これって月詠神社の写真じゃん」
占が見せた画像とは、月詠神社の鳥居を映した写真であった。この神社は、巡も占も幼い頃から頻繁に通っており、彼女たちにとって馴染みのある場所である。
「突拍子のない話に思えるかもしれないけど、個人的に月詠神社が影響してるんじゃないかと思ってるわけよ」
「どういうこと?」
「私たちの学校って月詠神社の裏手の丘の上に立ってるでしょ。もしかして、丘の地下で地殻変動が起きていたり、木々が枯れるほど強力な毒を持った外来種の植物が育っていたりするんじゃないかと思ってさ…」
「占い師だからもっとスピリチュアルな話かと思ったけど、凄く真っ当な話でビックリした…」
「私をなんだと思ってるのよ…ともかく数々の異変がもし、月詠神社を起点に起こっていると分かれば、学校も対処しやすいし、みんなの不安を軽減できるかも」
「占ちゃん、名案だよ。ちなみに失恋とか体調不良とかは月詠神社と関係あるのかな?」
「それは単純に大宇宙の力か何かの影響で同じタイミングで起きちゃっただけだと信じることにして、一旦脳内からスワイプしよう」
「確かにそうかもね…でも、占ちゃん、ありがとう!これはなかなかのグッドアイデアだと思うよ」
「話が分かる親友で助かったよ。じゃあ、早速だけどこれからお出かけに行こう」
占はそそくさと椅子から立ち上がり、帰り支度を始める。巡は突然の占の行動に動揺する。
「え?お出かけってどこに?」
「も・ち・ろ・ん・月詠神社」




