表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : 恋を知るまで  作者:
第一章 敵国バイエル王太子からの求婚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/54

容疑者が絞れない

 突然の質問にアダムは面食らった様子だったが、すぐに真顔になった。


「イリス嬢は、レンティス王家と繫がりが強い、ブルーネル家の息女ですからね。イリス嬢との婚姻をきっかけに、同盟を結びたいと思っています」


「それに反対する勢力はないのでしょうか。レンティスとは、今まであまり良い関係ではなかったから、王妃をレンティスから迎える事に、反発があると思うのですが」


 この話題はアダムにとっても望んでいたもののようだった。話し方に淀みがない。


「それは、もちろんあります。王太子妃の座を狙う者達も、レンティスとの関係改善を望まない者達も反対している。だが、レンティスと友好な関係を築けば、周辺国への備えに、国力を向けなくても済む。ロブラールやカルムとは一応の友好関係が結ばれているので、後はレンティスとも良い関係を結びたいのです」


 友好関係、それは驚きだった。

 今までのレンティスへの干渉は、どう考えても乗っ取りを企んでいるとしか思えない。それならばアダムは、一連の諜報活動に関係していないのだろうか。


「私達としたら、命を狙われるような嫁ぎ先に、イリスを送り出したくはないのです」


「もちろん、それほど強硬な反対はないと思います」


「だが、今回もし前向きな返事を持って来ていたら、どうだったでしょう」


「それは……」


 この先は踏み込み方が難しい。どこまで話していいか、何を聞けばいいか、考えながらになる。


「イリスは何度か危険な目に合っているので、これ以上、大変な思いはさせたくないのです」


「それはレンティスの王位継承争いに巻き込まれた件でしょうか。その事件がきっかけで婚約解消されたことは、聞いております」


 カーンはもう一歩踏み込んでみようと思った。


「ええ、どこかの大国が、側妃の息子だったマイルズ王子を、王位に付けようと画策したのです。その騒動の中で、マイルズ殿下に怪我を負わせ、責任を取ったのです」


 アダム殿下は、そうなのですか、と言った後、ぱっとカーンを見つめた。

「大国とは、どの国か判明したのですか」


「いいえ。判明していないことは、ご存じなのではないですか」


 カーンがじっと見つめると、アダムは目まぐるしく何かを考えている様子だった。


「他国の王族の動向は耳に入ってきます。だから、事件の概要は聞いております。事件について、高位貴族を集めて報告をしたことも聞きました。通常、そういう事件は伏せるものですが、公にしたことに驚いたのを覚えています」


 あの時の様子を思い出しながら、カーンは話した。たった二年前のことだが、ずいぶん昔の事に思える。思い出すのが痛かった時期は過ぎ去っていた。


「伏せるには大きすぎる事件でした。王子が殺され、侯爵家と、親族の二つの家が、屋敷内の者諸共、全滅したのです。伏せようが有りませんよ。王家は貴族たちに、安易に他国の甘言に載らないよう、釘を刺さなければいけなかったし。おかげで今は、安定しているようです」


 じっと見つめながら言うカーンに、アダムはたじろいでいる。バイエルと、この事件を関連付けて考えたことは、無さそうに見える。

 もう一歩踏み込んでみることにした。


「アダム殿下は、この事件に、どの国が関わったと推測されましたか」


「その事件が起こった当時、私は別の国との紛争を抑えるために、遠征しておりました。なので、あまり詳しくは知らないのです」


 それなら、アダムは除外してもいいのだろうか。それにしてはイリスのイメージがマーガレットに似通っているのが気にかかる。

 イリスの誘拐事件について探るには、何を聞いたらいいか、カーンは考えた。あれは宗教団体が行ったことで、バイエル国も、バイエル軍も関係していないことになっている。

 イリス側は、未婚の令嬢が誘拐監禁されていたことなど、公に出来ないため、一切口外していない。


「ロブラールでのイリスは、目立つのを恐れて、変装していたこともあるようでした。もう彼女にそんな負担はかけたくありません」


「ご苦労されたのでしょうね。体調を崩されるのも仕方ないでしょう」


「髪の毛を短くしていたのも、変装する時の為かもしれません。苦労させてしまったと思います」


「ああ、そのせいで短くしていたのですね。淑女にしては短いと不思議に思いました」


 髪が短かったことは知っているが、切られたことは知らないようだ。誘拐されていた間に彼女を見た者からの、また聞きだろう。

 誰から聞いたのかを聞きだしたい。


「イリスはその頃の事を話してくれないのです。ご存じの方がいれば伺いたいものですが、ご紹介いただけないでしょうか」


「私が聞いたのは母の懇意の者からです。少し聞きかじっただけなので、本当の事かどうかもあやふやなのです」


「そうですか。残念です。やはり、イリスに根気強く何回も聞くしかないか」

 

 そう言って話を終わらせた。

 アダムの母の名が出て来たのは意外だったが、王とのやり取りを見ると、ただ大人しいだけの女性には見えない。結局、疑う対象者がまた増えたのだった。



 部屋に戻ると、アイラが戻ってきていた。疲れた様子で、グッタリとしている。


「ご苦労さま。教団の様子はどうだった」


 もたれていたソファから顔を上げたアイラは、か弱げに見えた。


「盛り上がりまくっていました。普通の人間には付いていけないパワーで、生気を吸い取られました。カーン様、ケインは化け物だ」


 物事に動じないアイラが、ここまで言うのだから、よほどだったのだろう。


「彼は、ただ微笑んで座っているだけなのに。周囲の人間の気持ちが高揚していって、それが伝わり、あっという間に部屋全体が興奮の渦に包まれる。それを2回も観ましたよ」


 それは、疲れそうだとカーンは思った。


「カイルはどうしているの?」


「教祖様の後ろで存在感を消して控えています。全く目立たず空気のようです」


 さすがだ。無駄な力は使わないということだろう。宗教団体の事は、ケインに任せておける。

 アイラが紙を差し出してきた。


「ケインからです。ミラを救う予言の書だそうですよ。ヘビの毒に効く薬と、飲み合わせに関しての考えを書いてくれました。本格的に調べる前に、とりあえずの対策と言っていました」


 紙には走り書きで、薬の処方が書かれていた。それは王宮の医師が飲ませた薬と同じだ。

 その下に書いてあるのが、予言だろうか。仰々しい書体で一行のみ書かれている。


 『意識を解放させる薬の成分によるが、深層意識に潜ってしまい、戻れなくなることがある』


 それでは助けられないのか、と愕然としたら、アイラが裏を見てくださいと声を掛けてくれた。


 裏面には走り書きで、もっと強い薬で精神の解放度を上げて、誘導してみましょう。薬の手配をします、と書いてあった。


「無駄に疲れたよ。ケインのおふざけに、付き合う余裕は無いっていうのに」


「教祖様をやっていない時は、いつものケインですから。しかも反動なのか、いつもより質が悪い。一度くらい敵に回って、叩きのめしてやりたいです」


 ブルーシャドウの内紛は見たくないので、アイラを労い、ロマンが持たせてくれた鶏の唐揚げと、ポテトフライを勧めた。

 さすがロマン。冷めても美味しい。

 アイラの眉間のシワが消え、雰囲気が柔らかくなった。

 呼び鈴を鳴らして使用人を呼び、ビールを、ピッチャーで持ってきてもらった。もちろん毒見役付きで。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ