表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢イリスをめぐるトラブル : 恋を知るまで  作者:
第一章 敵国バイエル王太子からの求婚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/54

王との会話で見えたこと

 晩餐会が終わり、男性たちは葉巻と酒をたしなむために、別室に移動して行く。移動途中にアイラがスッと後ろに付き従った。


「晩餐会は楽しめましたか」


 ごく普通の質問だが、裏の意味は何か掴めたかというものだ。


「ああ、王妃様とアダム殿下とエリ王女の三人と楽しく話ができた。イリスとの婚約に一番力を入れているのは、アダム殿下のようだ」


「アダム殿下にとっての利はなんでしょうね」


 そう言ってアイラは考えこんでいる。


「所でエドワードに、三人の王女全員の釣書きを送ったそうだよ。王族は割り切ったものだね」


 ふと顔を上げ、アイラがニッと笑った。悪そうな笑顔だった。


「そういうものではないですか。ブルーネル公爵家とレンティス王家が珍しいのですよ。両家とも恋愛結婚されていますからね。だから子供にも結婚を押し付けないのでしょう」


 両親も王夫妻も仲睦まじい。

 カーンはその様子を思い出してから、そうではない夫婦もいることを思い出した。


「私は良い環境で育ったようだな」


「そうですよ。そして好条件のエドワード殿下の前に釣書が積まれるのも当たり前です。国政が安定していて、土地が豊かで、軍事力も高い。更には王子本人の評判も高い。狙わない親はいませんね」


 もちろんカーンも知っていたことだ。

 しかし釣り書を送った本人を目の前にし、カーンという別人物の目で客観視すると、その情報がまるで別物のように、感じられる。


「エドも、その内結婚するんだね」


「惜しくなりましたか?」


 すぐにそう返された。

 カーンはしばらく考えてみた。


「どうなのだろう。自分でも分からないよ。嫌な気分にはなったけど、ぼんやりしているんだ。シモンに婚約者ができても同じかもしれない」


「エドワード殿下に抱きついた時に、どう感じました?」


 アイラに聞かれ、カーンは思い出しながら話した。


「落ち着くなと思った。それと懐しい匂いがしてうれしかった」


「匂いを好ましいと思うのなら、エドワード殿下のことが好きなのですよ。だけど、恋はしていないのですね。恋愛初期なら恋人の胸に抱かれて落ち着く、はありえません」


「はあ。そうなんだ」


 恋ってなんだろう。知っていたつもりだったが、何も知らないのだと恥ずかしくなり、力なく言ってうなだれた。


「イリス様やイクリス様のようにシャキッとなさってください。応援いたしますよ」


 アイラの応援が入った。どう応援してくれるのだろう。後で聞いてみようと思いながら、男性用の応接間に入って行った。


 部屋の中では男たちが思い思いに集まり、談笑している。

 カーンが部屋に入ると、使用人が近寄って来て、何をお持ちしましょうかと聞いてきた。


 カーンはブランデーを頼み、適当な席を探して室内を見回した。


 奥の方に、王が数人に取り巻かれて立っていた。目が合うと、王が愛想よく微笑んだので、ゆっくりと近づいて行き、輪の中に滑り込んだ。


「食事はいかがでしたか」


「とてもおいしかったです。おもてなしありがとうございます」


「先程は随分楽しげな様子でしたが、どんな話をされていたのですか」


 王の目は探るようなものだったので、分かり易すぎて少し笑ってしまった。


「失礼しました。主に私が未熟者だという話題でした。気持ちが表情に全部でていると指摘されまして、お恥ずかしい限りです」


 周囲を囲んだ男たちが、何となく笑い、カーンは少し顔を赤らめた。


「王妃様には会話をお手伝いいただきましたし、私はとんだ未熟者だと思い知りました」


 一人が何の話題だったのですかと聞いたので答えた。


「イリスの容姿を聞かれまして、思いつくのは髪の色と目の色だけだったのです。それでは物足りないと思われたようです」


 それは、まあ、そうだという声が幾つか聞こえた後、王が聞いた。


「王妃はどうやって手伝ったのでしょうか」


「私とイリスが似ているか尋ねられまして、似ていると言いましたら、皆さん納得されたようでした」


 ほう、それは美人ですなと一人が言い、皆が頷いた。


「そう、全く同じ流れですね。そんな他愛のない話題で、皆で笑っていました」


 場が寛いだ感じに変わり、話しやすくなったので、今回のイリスへの婚約の申し出について少し探ることにした。


 まずは、王の思惑が知りたい。イリスを王家に迎えることに本気なのか、アダムに押されただけなのか、どちらなのだろう。


「イリスは子供っぽいところがあると言ったら、アダム殿下に驚かれました。イリスのこちらの国での評判はどんなものなのでしょう」


 王が思い出そうとするように、こめかみに指を当てた。


「長くロブラールに留学されていて、その間は噂も耳に入って来なかったので、あまり存じ上げないのです。ずっと以前に美少女だと聞いたことがありますが、婚約されていたので、そういう意味で注目はしていなかったのです」


 一般的にお相手を探す年頃には、早々と婚約が決まっていたイリスは、市場に出ていないも同然で、その分知られていないのだ。


「では、今回のお話のきっかけは何でしょうか」


「イリス嬢が帰国されたという話をアダムが知って、それで申し込ませていただいたのです」


「王ではなく、アダム殿下がこの話を進めたのですね。でもあまりイリスの事を知らないご様子ですので、会ったら嫌になるかもしれませんね」


 王が結構豪快に笑った。


「カーン殿に似た美女なら、誰も断りませんよ」


「それならいいのですが。イリスは年齢に比べて幼いところがあるのです。アダム殿下は年上に見えると聞いていたそうですけど、そんな噂があるのでしょうか」


 王も、周囲の者達も首をひねった。


「そんな噂は聞いたことがありませんね。いったいどこで聞き込んだのやら」


 学生だった頃、盛装すると年齢が上に見えていたらしい。それは聞いたことがある。ロブラールでの行動は他国に漏れていないので、学生時代の噂を聞いたのだろうか。

 少し嫌な感じがしたので、後で調べようと思い、カーンは話題を変えた。


「ところで、こちらに来てすぐに、街中で宗教活動を見かけました。すごく熱のこもった演説をしていたようでした。バイエルでは宗教の布教に熱心なのですね」


「いや、それは多分、最近になって勢力を伸ばして来ている新興宗教団体でしょう。国教ならば神殿で説教をするので、街中で布教したりはしない」

  国王は苦虫をかみつぶしたような顔でそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ