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亡き妹のための綺想曲  作者: 雪斗
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デビュタント 自由

今回も楽しんでくれると嬉しいです。

『兄様、どうか幸せになってね。』


もう、無理だよアナスタシア。

私は復讐にしか生きられない……

自由になんて決してなれはしないんだよ。















夜風が肌を撫でる。

ひんやりとしたそれは火照った体を慰めてくれる。

暫し目を瞑り、夜の闇に身を預ける。


このまま、闇の中へ溶けてしまったらアナスタシアにもう一度会えるだろうか?

そんな事を考えてしまう己を自嘲する。


どれ程そうしていただろう、ふと騒めきが聞こえた。

どうやら言い争っているようだ。


セリーナはその騒めきのする方へと向かった。

そして辿り着いた先に見えたのは、三人の青年だった。

どうやら茶髪の二人の青年に、黒髪の青年が罵られているようだ。


「我が家の恥知らずが!」

「この無能が!」


そう口々に黒髪の青年は罵られると思いっきり突き飛ばされた。

それをやって、やっと満足したのか二人の青年は去って行った。


黒髪、何故か今だけ無性にそれが恋しくなった。

セリーナは青年に近づくと手を差し伸べた。


「大丈夫?」


その手を取らずに青年は立ち上がると衣服を払った。


「別に……大丈夫だけど、何?何か用?」


そのぶっきらぼうな言い方にセリーナはびっくりしたがすぐに笑った。


「別に!ただ、黒髪が恋しくなっただけ!」


その言葉に青年は目を見開くと心底可笑しそうに笑った。

その笑顔が予想以上に可愛くてセリーナは驚いた。


「黒髪が恋しくなったって、どう言う事だよ。あんた、面白いな……気に入ったよ。」


気に入った、その言葉が何故か嬉しくてセリーナは心からの笑みを浮かべた。

この心浮き立つような感情は何だろう?

そんな事を考えながらセリーナは笑っていた。



















青年の名前はレヴィンと言うらしい。

セリーナとレヴィンは二人で庭に座って、話し始めた。


「僕の家は武家の名門なの。兄弟はみんな武術をしているのに、僕だけ勉強ばかりしているのが気に入らないんだろうね。兄弟は僕を罵るわ暴力を振るうわ、もうやりたい放題だよ。」


その話を聞いて、セリーナはそんな事だけであんなに罵られていたのか、と驚くと共に思った事がある。


「じゃあ、レヴィンも武術を学べばいいんじゃないの?」


その言葉を聞いたレヴィンは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「嫌だよ。僕は自分がやりたい事をしたい。何かに縛られる事は嫌いなんだ。僕は勉強がしたい、だからする。僕は自由に生きたいんだ。」


自由、その縁の遠い言葉に思わずセリーナは目を伏せた。

復讐、それに雁字搦めにされている私には関係のない言葉だ。


レヴィンは突然立ち上がると、セリーナの頬を両手で包んだ。

その仕草に思わず心臓が跳ねる。


「あんたはどうなの?自由好き?」

「わ……分からない……ただ、私は自由には生きられないから……」


この憎悪からは死ぬまで解放される事はない。

だから……私は……


「自由に生きられない人なんていないよ……あんたも自由になれるといいな!」


そう言って最後に笑うとレヴィンはどこかいってしまった。

セリーナは呼び止めようとしたけど、声が出なかった。


自由、その言葉が深く胸に突き刺さる。

そうして、暫し茫然としていたセリーナだったが突然現れた人物に目を瞠った。

そしてやはり思う。


レヴィン、私に自由はないよ。


そこに現れたのは、憎くて殺したくて堪らない、オーランドだった。





次回も読んでくれると嬉しいです。

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