デビュタント 婚約者
皆さんの知るデビュタントとは少し違うかもしれませんがご容赦ください。
デビュタントで最初に踊る相手は、家族や婚約者などだ。
つまり此処で王太子と踊るという事は?
『王太子は現在、婚約者がいない。』
という事は、私が王太子の婚約者になるのか?
家柄も伯爵の中では上位。
だから一応釣り合いは取れる。
だが、色々と面倒ごとが起きるだろう。
でも……それでも婚約者になれば、ヴィンセントやフェニカに今まで以上に近づいて復讐がしやすくなるかもしれない。
それに……とセリーナは昏く嗤った。
ヴィンセントに大切なものを痛めつけられ奪われる痛みを教えてやれるではないか。
セリーナは振り返って、捨てられた子犬の様なアレクシスを一瞥すると微笑んで王太子の手を取った。
「喜んで。」
ホールの中心で踊る二人の麗しい男女。
ダンスの技巧もさることながら、人並み外れたその美貌に皆が羨望と嫉妬の眼差しを送る。
「皆が、貴女の事を見ていますよ。」
「違いますわ。殿下の事を見ていらっしゃるのよ。」
踊りながら間近で囁き合う二人。
セリーナは講師の教えを思い出しながら、ステップを踏んでいた。
羽のように軽やかに、そして優雅に
そうダンスに集中していたら、いつのまにか曲が終わっていた。
拍手がホールに響く。
王太子は終わったにもかかわらず、セリーナからピタッとくっついて離れてくれない。
流石にセリーナは居心地が苦しくなった。
「あの殿下……少し離れてくれませんか。」
「セリーナ嬢、貴女が私をユークリッドと名前で呼んでくださるなら離れましょう。」
そう甘い声言われてセリーナは背筋がぞくぞくした。
そして、確信する。
王太子は……ユークリッドは私に惚れていると。
セリーナはわざと王太子の耳に唇をかすめ艶かしく囁いた。
「ユークリッド殿下、離れて……」
それに対してユークリッドは言う通りセリーナを離したが、手の甲にキスを落とした。
「では、セリーナ嬢。また、今度。」
去り際の微笑みは美しかったが、セリーナには効果がない。
何故なら、彼は仇の息子だからだ。
復讐に息子は関係ないだろうって?
私にとって、そんな事は些末な事だ。
ただ復讐相手が苦しめば、それでいいのだ。
暫しセリーナはユークリッドの去った方向を眺めていた。
そして、新たな仇がいる場所へセリーナは歩き出した。
丁度アレクシスは他の貴族と話しているため都合がいい。
そうしてセリーナは不敵な笑みを浮かべながら、王宮の庭へと向かって行った。
次回も読んでくれると嬉しいです。




