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ダンジョン配信に映り込むピクトグラムの怪異になった  作者: 脳タリン


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第6話 スリップ注意

「うぇーい! どうも、リュウとショウのガチ攻略ちゃんねるでーす」


「ガチでーす」


「今日は三層をガチで攻略していきまーす」


『ガチ(浅層)』


『三層をガチ呼ばわりするな』


『いつもの』


『この二人、装備だけは高いんだよな』


リュウ「ちなみに俺らの装備、二人合わせて三百万でーす」


ショウ「親の金でーす」


『言っちゃったよ』


『正直なのだけは評価する』


 二人が通路を進んでいく。


 その数歩後ろを、白い人型が歩いていた。


『ん?』


『後ろ』


『いる!!』


『白いやつ来てる』


『なんでこの配信に……』


『今日は怪我人いないぞ』


『散歩か?』


 白い人型は、二人の歩き方を真似ていた。


 リュウが肩を揺らして歩けば、肩を揺らす。


 ショウが指を鳴らせば、鳴らない指を鳴らす仕草をする。


『真似してるww』


『完コピで草』


『肩の揺らし方まで一緒』


『バカにしてるだろこれ』


『絶対バカにしてる』


リュウ「ん? コメント欄なんか盛り上がってね?」


ショウ「あれだろ、俺らのオーラに気づいたんだろ」


 白い人型が、両手を広げて首を横に振った。


『違うってさ』


『否定されてて草』


『オーラ(白色)』


リュウ「え、待って待って。『後ろに白いピクトグラムがいる』って何?」


ショウ「あー、あれじゃね? 最近噂の。弱小配信に出るってやつ」


リュウ「あ〜、はいはい。例の合成のやつね」


ショウ「俺らの再生数目当てで湧いたか〜?」


リュウ「残念でした〜、うちは本物志向なんで。非常口のパチモンはお呼びじゃないんすわ」


ショウ「非常口ww それな、あいつ非常口の逃げ遅れだろw」


 白い人型の動きが、止まった。


『あ』


『言ったな』


『おい』


『そいつカマキリ真っ二つにした映像あるんだぞ』


『やめとけって』


『白いやつ、止まってる』


『怒ってない?これ』


 白い人型が、すっ、と画面の端へ歩いて消えた。


『消えた』


『帰った?』


『いや、あの消え方は着替えだ』


『何になる気だ』


 少しして、白い人型が戻ってきた。


 その姿は、黄色の菱形の中で人が転ぶ図柄。


『……スリップ注意?』


『足元注意のやつだww』


『清掃中に立ってるやつ』


『何する気だよw』


 スリップ注意のピクトグラムが、二人の少し前の床を、すっと指差した。


 直後、リュウの足が滑った。


リュウ「うおっ!?」


 派手に尻餅をつく。


ショウ「ぶはっ! ダサ! お前何もないとこで――うわっ!?」


 笑ったショウも滑って転んだ。


『二人とも転んだwww』


『秒で報復されてて草』


『因果応報が早い』


『床、濡れてなくない?』


『あいつが濡らしたんだよ多分』


『スリップ注意の看板が滑らせる側に回るな』


リュウ「なんだよ今の! 床濡れてる……いや濡れてなくね?」


ショウ「俺のズボン汚れたんだけど! 三万のやつ!」


『三万(親の金)』


『白いやつ、腰に手当ててる』


『仁王立ちで見下ろしてるw』


『満足げで草』


 二人が立ち上がって歩き出す。


 少し進んだ角で、リュウの足首に何かが引っかかった。


リュウ「どわっ!?」


 前のめりに倒れ込む。


ショウ「お前さっきから何なの、酔ってんの?」


リュウ「違えよ! 今、足引っかけられた! 絶対誰かに引っかけられた!」


ショウ「誰もいねーじゃん」


『いるんだよなあ』


『足出してるとこバッチリ映ってた』


『通せんぼの姿勢で草』


『完全に遊んでる』


『これ嫌がらせのレベル調整してるよな』


『死なない範囲で煽ってくる』


ショウ「あ、分かった。お前らのコメントのやつだろ? 白いのがやってるとか言いたいんだろ?」


リュウ「はいはい怖い怖い。おばけこわ〜い」


 直後、ショウのリュックの蓋が開き、中の非常食が全部床にぶちまけられた。


ショウ「はあ!?」


『中身全部出たwww』


『物理攻撃(嫌がらせ)』


『地味に一番嫌なやつ』


『拾え拾え』


『白いやつ、隣でしゃがんで眺めてる』


『監督かよ』


 ぶつぶつ言いながら二人が非常食を拾い集め、先へ進む。


 四層への階段の手前で、リュウが壁の岩棚に目を留めた。


リュウ「あ、これ登ったら映え写真いけね?」


ショウ「いけるいける。上からダンジョン背景で」


『やめとけ』


『それはお前の自業自得になるやつ』


『白いやつは今何もしてないぞ』


『腕組んで見てる』


 リュウが岩棚に手をかけ、身体を持ち上げる。


 二歩目で足場が崩れた。


リュウ「あっ――」


 二メートル下の床へ、足から落ちる。


 鈍い音がした。


リュウ「〜〜〜っっ!! 足! 足首やった!!」


ショウ「マジ!? おい、大丈夫かよ!」


リュウ「痛い痛い痛い! 折れたかも、無理これ!」


『落ちた』


『言わんこっちゃない』


『これは白いやつ関係ない、完全に自爆』


『白いやつどうする?』


『……あ、消えた』


『帰ったか?』


『いや、待て』


『この流れは知ってる』


 画面の端から、白い人型が戻ってきた。


 帽子。白衣。胸元に十字。


『医者来た』


『助けるんだ』


『さっきまで嫌がらせしてた相手だぞw』


『それはそれ、これはこれ』


『プロ意識』


 医者のピクトグラムがリュウの前にしゃがみ、足首へ手を置いた。


リュウ「うわっ、なんか触られた! おい、なんか触った!?」


ショウ「触ってねえよ!」


リュウ「じゃあ今の何……あれ」


 リュウが足首を回す。


リュウ「……痛くない」


ショウ「は?」


リュウ「痛くない。マジで。え、治ってる?」


『治療完了』


『仕事は完璧なんだよな』


『さっき煽ってた相手を無償で治す白いやつ』


『器がでかいのか小さいのかわからん』


『両方だろ』


ショウ「え、待って、じゃあコメントのやつマジなの? 白いのマジでいるの?」


リュウ「……おい、俺らさっき非常口のパチモンとか言ったよな」


ショウ「言ったな」


リュウ「転ばされたのそれか!?」


『今頃気づいたw』


『そうだよ』


『因果関係の理解が遅い』


 医者のピクトグラムは立ち上がると、二人の目の前で、ゆっくりと足払いの動きをしてみせた。


 当ててはいない。動きだけ。


『再現VTRやってるww』


『「こうやりました」って説明してる』


『自白で草』


『反省の色なし』


リュウ「今なんかした? コメント欄、今そいつ何してる?」


『お前を転ばせた方法を実演してた』


リュウ「性格わっる!!」


 白い人型が、肩を揺らして歩き出した。


 リュウの歩き方の真似のまま、画面の端へ向かう。


 途中で一度振り返り、指を鳴らす仕草。


 ショウの真似だった。


『最後まで馬鹿にしていったwww』


『置き土産のモノマネ』


『芸人か?』


『今日ずっと楽しそうだったな』


 白い姿が消えた。


ショウ「なあ、今日の配信、どう考えても俺らよりあいつが主役だったよな」


リュウ「……悔しいけど再生数は伸びる気がする」


『伸びるぞ』


『タイトル「白いやつに絡まれた」でいい』


『初期の映像だと治して帰るだけだったのに』


『最近あいつ、遊ぶようになってない?』


『分かる 性格出てきてる』


『カマキリの時は割って入って戦って、今日はほぼコントだし』


『状況で使い分けてるんだよな』


『……あいつ、こっちのコメント読んでるよな確実に』


『非常口発言の直後に怒ったからな』


『つまり今この文章も読まれてる可能性がある』


『白いやつ、いつもお疲れ様です』


『媚びるなw』

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