第二章 41 『第六騎士団の一員として』
春たちの退路が閉じた直後、封印区画の天井から大きな石片が落ちた。
台座の左側、第一分霊石から三メートルほど離れた床へ衝突し、灰色へ沈んでいた石橋の一部を砕く。戦闘中に広がった亀裂は天井の奥まで続いており、低い振動が止まる気配はなかった。
「全員、撤収準備に入ってください」
千佳は閉じた地下通路から目を離し、負傷者と封印区画の状態を順に確認した。
「第一分霊石の安定を確認しつつ、滞在時間を最小限にします。追撃は行いません」
騎士たちは即座に動いた。
二人が四本の保守用魔導具を確認し、残る者が退避路へ向かう。オブリナに消された床の空白と、レクイナの葬送によって灰色へ沈んだ構造物を避けながら、足場に残った亀裂へ目印を置いていく。
「タク。手を開いて」
ティナが卓斗の前へ降りた。
「左なら動く」
「右よ」
「動かないから抱えてんだけど」
卓斗は胸元へ寄せていた右手を見せた。
中指と薬指はほとんど曲がらず、手首から肘にかけて感覚が鈍い。七星の打撃を受けた左肩も腫れ、腕を胸の高さより上へ持ち上げようとすると鋭い痛みが走った。
「竜紋そのものは損傷していないわ。ただ、魔素を流しすぎて周囲が焼けている」
「焼けてるって、表現怖すぎない?」
「正確に言っただけよ」
「もうちょい安心できる言い方なかった?」
「しばらく使わなければ戻る」
「それ先に言ってくれ」
ティナは白銀の魔素を薄く流し、右手首に残る熱だけを外へ逃がした。痛みや痺れは残るが、これ以上悪化しないよう出力の経路を閉じていく。
卓斗の左手には、九色の小さな石がある。
強く握った覚えはないのに、石は掌の中央から動かない。赤、青、黄、緑、紫、白、黒、銀、金の光が内側を巡り、時折、恵依と絵麻の契約紋へ細い光を返していた。
「それ、落とさないでよ?」
絵麻は右脇腹を押さえ、石壁へ肩を預けていた。
春の石柱へ打ちつけた箇所は、呼吸するだけでも痛む。連続した空間操作の反動も残り、床がゆっくり傾いているような感覚が消えていなかった。
「俺も落としたくて持ってるわけじゃないんだけど」
「今のあんた、右手使えないでしょ」
「左手まで責任重大にすんなよ」
「成瀬さん。石を握り込まないでください」
恵依はゲブに肩を支えられながら近づいた。
目立つ外傷はないが、解析を続けた影響で視界の端が白く明滅している。足を止めても身体が前へ流れるような感覚があり、歩幅を小さくしなければ真っ直ぐ進めなかった。
「第一分霊石本体との接続を確認します」
「今ここで?」
「最低限です。異常があれば、地上へ持ち出せません」
恵依が九色の石へ手を近づける。
直接触れず、返ってくる魔素の流れだけを追う。ゲブも白銅の魔素を細く重ねたが、戦闘中のように広げず、卓斗の左手と第一分霊石本体の間だけへ絞った。
「土地から魔素を吸い上げてはいません」
恵依は台座と手元を交互に見た。
「本体側の出力も安定しています。九色の石が外へ持ち出されても、旧街道結界への供給が減る反応はありません」
「じゃあ、持ってっても大丈夫ってこと?」
「現時点では、その可能性が高いです」
「鍵一個を三人で持ってる感じ?」
卓斗の問いに、恵依は少し考えた。
「一つの鍵を三つに割ったというより、三人の確認が必要な接続に近いと思います」
「一人じゃ使えない?」
「少なくとも、あなた一人が勝手に起動できる反応ではありません」
「勝手に使う気はないけど、信用なさすぎない?」
「卓斗くんなので」
「理由が名前だけなんよ」
絵麻の契約紋にも、九色の光が細く残っている。
恵依の手元にも同じ反応があり、卓斗の左手から石を離しても接続そのものは切れないと考えられた。誰か一人だけが所有し、他の二人を排除して使える形ではない。
「フィオラの復活へすぐ使えるわけでもないわ」
ティナが第一分霊石本体を見ながら告げた。
「本体との接続、次の分霊石を探すための反応、託された権限。その辺りがまとまっているようには見えるけれど、用途を断定するには情報が足りない」
「つまり、ゲットしたけど使い方不明?」
「あなたの言い方だと雑になるわね」
「だいたい合ってる?」
「否定はしない」
台座の上では、第一分霊石本体が変わらず光を送り続けている。
本体を土地から抜き取ったわけではない。
九色の石は代用品でも複製でもなく、役割を残した第一分霊石から、次へ進む者へ託された接続核に近いものだった。
「名称は後で決めます」
千佳が騎士から受け取った小さな箱を持ってきた。
内側には魔素を遮断しない柔らかな布が敷かれ、外周だけが白鋼に近い素材で補強されている。
「今は便宜上、託された分霊石と呼びます。成瀬さん、こちらへ入れてください」
「俺が持ってなくていいんですか?」
「託されたことと、抱え続けることは別です」
千佳は箱の蓋を開いたまま、卓斗の左手の下へ差し出した。
「負傷している人へ管理まで集中させる必要はありません」
「それ聞くと、急にありがたいな」
卓斗が指を開くと、九色の石は抵抗せず箱へ降りた。
蓋を閉じても光は完全には消えない。卓斗、恵依、絵麻の契約紋へ細い反応が残り、箱を千佳が持っても接続者が変わることはなかった。
ナーヴァは第一分霊石の周囲を一周し、天井と床へ伸びる亀裂を見ていた。
デュランダルを抜き、崩落へつながる魔素の線だけを選ぶ。床を支える線や正規接続線には触れず、春の創造物が既存設備を引っ張っている箇所だけを短く切った。
停止していた石壁の一部が力を失い、既存支柱から離れる。
崩れる前に騎士たちが支えを入れ、天井へ伝わっていた荷重を別の柱へ逃がした。
「退路、あと少し」
ナーヴァがラールを見る。
「固定できる?」
「ひ、左手中心ならできます!」
ラールは痺れの残る右腕を身体の近くへ寄せ、左手で白鋼を伸ばした。
長い道を一本作らず、床の空白を越える短い板と、壁際を通るための手すりだけを固定する。途中で一枚目の位置が高くなりすぎたが、自分で気づいて角度を下げた。
「これで、たぶん大丈夫です!」
「たぶんじゃなくて確認して」
絵麻が言いながら一歩出し、すぐに顔をしかめた。
「西野さんは空間操作を使わないでください」
千佳は近くの騎士へ視線を向ける。
「肩を貸してください」
「歩けるわよ」
「歩けることと、無理をしていいことは別です」
絵麻は反論しようとしたが、脇腹が痛んだのか口を閉じた。
騎士の肩を借り、歩幅を小さくして退避路へ向かう。ラールも隣につき、崩れた足場へ白鋼を追加しながら進んだ。
恵依はゲブと並び、床へ置かれた目印を一つずつ確認する。
ゲブの共鳴負荷は完全には抜けておらず、時折、卓斗の右手を自分の手のように庇いかけたり、絵麻の呼吸に合わせて脇腹へ手を当てそうになった。
「ゲブ。私の歩幅だけ見てください」
「承知しました、流川様」
「他の人の状態は追わなくて構いません」
「……はい」
ゲブは白銅の魔素を閉じ、恵依の隣を歩くことだけへ意識を絞った。
卓斗は最後尾近くで、ティナとともに退避路へ入る。
右手は胸元へ固定され、左肩も使えない。足元が崩れれば手で支えられないため、普段より慎重に白鋼の板へ足を置いた。
「こういう時、両手使えないの普通に不便だな」
「戦闘中に気づきなさい」
「気づいてたけど、言う暇なかったんよ」
「口はずっと動いていたでしょう」
「そこは通常運転だから」
封印区画を出る直前、卓斗は一度だけ振り返った。
第一分霊石本体は台座へ残り、四本の保守用魔導具を通して外へ光を送っている。黒い解除線は消え、正規接続線の明滅も安定していた。
石を集めたはずなのに、目の前の石はそこにある。
それでも、千佳の持つ箱の中には、確かに九色の石が収まっている。
奪わずに集める。
最初は意味の分からなかった方針が、ようやく形になっていた。
地上へ続く通路を抜けると、旧街道の結界光が夜の森を淡く照らしていた。
乱れていた光の柱は一定の間隔へ戻り、外縁集落へ向かう魔素の流れも安定している。遠方の指揮所では、各騎士団の兵士が結界の復旧を確認しながら負傷者を運んでいた。
歓声は上がらなかった。
治療班が担架を並べ、設備班が崩れた地面を調べ、連絡兵が行方不明者の確認に走っている。第一分霊石を守った結果は、派手な勝利ではなく、残った水路と家と人の数として現れていた。
「成瀬さん、こちらへ」
治療班の騎士に呼ばれ、卓斗は簡易天幕へ連れていかれた。
「俺より重傷いるでしょ」
「重傷かどうかを決めるのは治療班です」
「今日、正論で殴られる回数多くない?」
右手首へ固定具を巻かれ、左肩には冷却用の魔導布が当てられる。
絵麻は隣の寝台で脇腹を診られ、骨への大きな損傷はないものの、数日は強い動きを避けるよう告げられていた。恵依も視覚と平衡感覚が戻るまで解析を控えるよう命じられる。
「全員、能力使用禁止です」
治療班の騎士が三人を順に見た。
「少なくとも今夜は」
「今夜だけでいいんですか?」
卓斗が尋ねる。
「明日以降は診察結果次第です」
「聞かなきゃよかった」
天幕の外では、各方面から簡易報告が届き始めていた。
第一騎士団は外縁集落へ続く退避路と部隊連絡を維持。
第二騎士団は水路と補助境界を守り、集落側の魔導核を再接続。
第三騎士団は旧街道へ流れる広域魔素を整え、封印区画へ正規流を戻した。
第四騎士団は偽反応に使われた魔導具を回収し、補助核として正規系統へ組み替えた。
第六騎士団は封印区画内部で第一分霊石を防衛し、サリギアの解除を阻止した。
「全部そろって、やっと守れたんだな」
卓斗は天幕の入口から、報告を受ける騎士たちを見た。
「私たちだけでは無理でした」
恵依は目を閉じたまま答えた。
「外部から正規流が戻らなければ、第一分霊石の選定反応も維持できなかったと思います」
「各騎士団でやったこと、無駄じゃなかったってことね」
絵麻は寝台へ横になり、脇腹を動かさない姿勢を探していた。
「無駄だと思ってたの?」
「第一騎士団の隊列訓練はちょっと思ってた」
「千佳さんに聞かれたら怒られるぞ」
「聞こえています」
天幕の外から千佳の声が入り、卓斗と絵麻は同時に黙った。
二日後、王城の会議室には、戦闘の傷を残したまま関係者が集まっていた。
卓斗の右手首は固定具で覆われ、左肩には包帯が巻かれている。絵麻も脇腹へ固定帯を巻き、椅子へ深く座っていた。
恵依は視界の明滅こそ治まったが、長時間の解析は禁止されたままだ。
三竜精霊も完全には回復していない。
ティナの白銀の魔素は普段より薄く、ゲブは広域共鳴を避け、ラールの右腕には白鋼の補助具が巻かれていた。
会議室の正面には国王グレコが座り、その左右に千佳とナーヴァ、各騎士団の代表が並んでいる。
卓上には、九色の石を収めた専用ケースが置かれていた。
「報告は確認した」
グレコは資料から顔を上げた。
「第一分霊石本体は旧街道結界と外縁設備を支えたまま、成瀬卓斗、流川恵依、西野絵麻の三名へ接続の一部を託した。現状、その石を便宜上、第一分霊石として扱う」
「本体と同じ名前だと、ややこしくないですか?」
卓斗が口を挟む。
「正式名称は調査後に決める」
「ですよね」
「今は話を進める」
「はい」
グレコは次の資料へ視線を落とした。
「サリギア側は芹沢春、七星、双葉。契約する三冥精霊が侵入。第一分霊石の接続解除を試みたが失敗し、地下退路から撤退した」
各騎士団の代表の一人が、千佳へ顔を向ける。
「追撃を行わなかった理由を確認したい」
「封印区画が崩落寸前であり、負傷者と第一分霊石の安定を優先しました」
千佳は迷わず答えた。
「敵を追えば、守った設備と人員を失う危険がありました」
「ナーヴァ団長も同じ判断か?」
「追えば、守ったものを落とした」
ナーヴァの返答は短い。
グレコは二人の判断を否定しなかった。
「任務は敵の撃破ではない。第一分霊石と周辺住民の防衛だ。目的を変えなかった判断を認める」
卓斗は小さく息を吐いた。
春たちを逃したことが、勝ち損ねたように扱われなかったことへ安心したわけではない。
敵を倒すことより、何を守ったかが先に確認された。それが、この国で教えられてきた各騎士団の役割と同じだった。
「次の反応については?」
グレコがティナへ向けて尋ねる。
「九色の石を得たことで、以前より方向を絞れるようになったわ」
ティナは卓上のケースへ目を向けた。
「最も強い反応はフィリスティア国外。南東ではなく、西寄り。エルヴァスタ大帝国方面よ」
会議室の空気がわずかに変わる。
剣と武を尊ぶ大国。
王ではなく大帝が統治し、現在は次代の剣聖を巡る争いが続いていると、卓斗たちも最低限の説明を受けていた。
「次も国外か」
卓斗は固定された右手を見下ろした。
「異世界来てから移動範囲広がりすぎだろ」
「日本へ帰る方法を探すにも、残る分霊石を調べる必要があります」
恵依の声は落ち着いていた。
「サリギアが先に動く可能性も高いです」
「春も行くってことよね」
絵麻は卓上のケースを見た。
次の分霊石を狙うなら、再び春と会う可能性がある。
止めたい。
助けたい。
その二つは、まだどちらも消えていない。
「ここで、お前たちの立場を確認する」
グレコが三人へ視線を向けた。
「現在、お前たちは第六騎士団預かりの一時保護対象兼、条件付き協力者だ」
「長い肩書きですよね」
「成瀬、黙って聞け」
「すみません」
「第一分霊石を託されたから、お前たちを騎士にするわけじゃない」
グレコの声が低くなる。
「石を持った者を国の所有物にする気もない。本人がいない席を、国が埋めることもない」
卓斗は顔を上げた。
「そのうえで、第六騎士団から提案がある」
ナーヴァが椅子から立った。
小柄な身体で卓斗たちの前へ進み、三枚の団章を卓上へ置く。黒を基調とした金属板に、第六騎士団を示す意匠が刻まれていた。
「第六騎士団へ、正式に入ってほしい」
ナーヴァは三人を順に見た。
「分霊石調査担当。私も同行する」
「団長自ら?」
「行く」
即答だった。
「フィリスティア側の修復と残務は、第一騎士団を中心に各団へ引き継ぐ。私は、卓斗たちとエルヴァスタへ行く」
「団長が国を離れて大丈夫なんですか?」
恵依が確認する。
「第六は特殊任務が役目。今回も、その続き」
千佳も横から補足した。
「王国内の指揮系統は調整済みです。ナーヴァ団長が同行する方が、国外での身分証明、護衛、各国との交渉を一つへまとめられます」
恵依は団章を見たまま、もう一つ問いを重ねた。
「正式所属になった場合、分霊石や帰還について、騎士団の命令へ無条件に従う義務が生じますか?」
「生じない」
グレコが答える。
「危険任務へ参加させるなら、必要な情報を開示し、本人の同意を取る。分霊石の使用、フィオラ復活、日本への帰還についても、国だけで最終判断はしない」
「三竜精霊も同じですか?」
「騎士団の所有物にも、戦力資産にも数えない」
ティナはグレコの返答を聞き、何も言わなかった。
ただ、否定する必要がないことだけは、その沈黙で分かった。
「絵麻は?」
ナーヴァが尋ねる。
「行く」
絵麻は迷わなかった。
「春を倒したいわけじゃない。でも、次も同じことするなら止める。何をしようとしてるのかも、ちゃんと確かめたい」
「恵依は?」
「条件が維持されるなら、正式所属を受けます」
最後に、ナーヴァの視線が卓斗へ向く。
「卓斗は?」
「異世界来て一か月も経ってないのに就職決まるの、展開早すぎない?」
「給料、出る」
「そこ先に言ってくれ」
卓斗は団章を見た。
正式所属。
その響きは重い。
帰れるかどうかも分からない世界で、騎士団へ入ることを決めれば、ここへ残ると認めるようにも感じる。
だが、国は帰還を諦めろとは言っていない。
分霊石のために人生を差し出せとも言っていない。
守られるだけの立場から、自分で選んで同行する立場へ変わる。そのための所属だった。
「俺も入ります」
卓斗は左手で団章を取った。
「ただ、一般人って主張は残していい?」
「一般人。でも、第六」
ナーヴァが真顔で答える。
「その分類ありなんだ」
「ある」
卓斗は団章を見下ろし、諦めたように息を吐いた。
「じゃあ、それで」
三人が団章を受け取る。
九色の石を収めたケースから細い光が伸び、卓斗、恵依、絵麻の契約紋へ触れた。誰か一人へ偏らず、三人と三竜精霊の間を巡った後、静かに収まる。
負傷が治り次第、エルヴァスタ大帝国へ向かう。
ナーヴァが分霊石調査隊を率い、卓斗たち三人と三竜精霊が同行する。フィリスティアでは千佳と各騎士団が旧街道結界の修復、サリギアの侵入経路、残された術式痕の調査を進める。
会議が終わった後、卓斗たちは第六騎士団の詰所へ戻った。
窓の外では夕暮れの光が王都の屋根を赤く染めている。机の上には旅装、必要物資の一覧、エルヴァスタまでの街道図が積まれていた。
「薬、包帯、保存食、予備の衣類、身分証明書」
恵依は一覧へ印をつけていく。
「卓斗くん。自分の荷物を確認してください」
「右手使えないんだけど」
「左手があります」
「今日それ何回目?」
「必要な回数です」
絵麻は脇腹を庇いながら、卓斗の荷物を足元へ押した。
「ほら、早くしなさいよ。あんた絶対、出発直前に足りないって言うでしょ」
「何で確定なん?」
「日本でもそうだったから」
「昔からの知り合いみたいな言い方すんな」
「同じ学校でしょ」
ラールは白鋼の補助具を巻いた右腕で、小さな荷物袋を持ち上げようとして落とした。
「わっ!」
ゲブが白銅の線で袋の落下を緩める。
「無理に右腕を使わない方がよろしいかと」
「だ、大丈夫です! 次は左手で持ちます!」
「最初からそうしてください」
少し離れた場所では、ナーヴァが大帝国までの経路を確認していた。
デュランダルを腰へ下げ、旅装の上から第六騎士団の外套を羽織っている。国へ残る団長ではなく、次の分霊石へ同行する隊長として、すでに準備を始めていた。
卓斗は自分の胸元へ団章をつけた。
金属の重さは小さい。
それでも、一時保護対象と呼ばれていた時より、立つ場所がはっきりした気がした。
帰れる見込みはまだない。
第一分霊石を得ても、残る分霊石は八つある。
春たちも次を狙っている。
それでも、最初のように事情を知らないままティナへ連れていかれるわけではない。
次は、自分たちで行くと決めた。
「行くわよ、タク」
ティナが詰所の扉から卓斗を振り返った。
恵依と絵麻、ゲブとラール、ナーヴァも先に廊下へ出ている。
卓斗は机の上に置かれた九色の石のケースと、胸元の団章を見た。
「分霊石、あと八個だろ?」
深くため息をつき、動く左手で荷物を持ち上げる。
「普通に無理なんだが」
そう言いながらも、卓斗は自分の足で扉を越えた。
王都の外には、次の分霊石へ続く道がある。
その先へ向かう第六騎士団の列に、卓斗たち三人と三竜精霊、そしてナーヴァの姿が並んでいた。




