腕輪の修復
その話をした後、ウィリアムは大切に保管してあったナナエルの砕け散ってしまった腕輪の破片を作業台の上に並べた。
ウィリアムにも触れなければ気が付かない位の高度な魔法がかけられていた腕輪はだからこそ家宝の様に代々受け継がれていたのだろう。
これがあってよかった。
ナナエルは無事に暮らしている。
本当によかったと思えた。
そしてそれがウィリアムの変化なのだと、ウィリアム自身気が付いていた。
ナナエルに出会う前のウィリアムであれば、ナナエル以外の周りを一切無視してナナエルと攻防を繰り広げている最中に脅威を消し去っていただろう。
それをするときっとナナエルが悲しむだろうという事を今は知っている。
そして、ナナエルがこの腕輪をとても大切そうに受け取っているのをナナエルの兄の結婚式で見た。
完全に復元するのは難しい。
勿論形だけ拾い集めたものをくっつけただけの腕輪を作ることはたやすい。
いい、彫金師を探せば上手い事新しいデザインにしてくれるだろう。
けれどウィリアムは守護の証としての腕輪を復元したいと考えてた。
出来ることならば拾い集めた腕輪の破片はそのまま使って。
何か一つを諦めれば腕輪は完成するだろうとウィリアムは思った。
けれどそのどれも諦めたくはなかった。
しかも破片をこれ以上壊す訳にはいかない。
実験を本物でするわけにはいかなかった。
それに、オルゴール職人の例はナナエルを守るためだけに言ったものではない。
実際そういう細かい作業にウィリアムは向いてない部分もあった。
特に瞳の色が変化するような強い魔法のほとんどは細かい作業からほど遠い。
大きな太鼓をたたく能力とその振動が負荷にならない体。必要なのはそういう魔法ばかりだった。
ウィリアムは今はじめてきちんと魔法に向き合っている気がして、とても楽しかった。
それで、ウィリアムも魔法が好きなのだと気が付いた。
粉々になってしまった破片を微細な魔法や魔道具の回路を組み込みながらステンドグラスの様に組み立てていく。
ナナエルに、そしてその子共たちにも、長い間ずっとずっと彼女たちを守る力を込める。
祈りの様な作業をウィリアムは何日も何日も続けた。
そして、その腕輪を渡すべき日が来た。




