その後の
* * *
ウィリアムは報告書を読んでため息をついた。
「俺としてはナナエルに少しでも酷いことをした人間は皆むごたらしく死んでしまえばいいと思うんだけどね」
「それは一般的な感覚ではないですね。
せめて酷い内容と同じ程度の酷い目にあって欲しい位が一般的かと」
ウィリアムの配下はそう答えた。
「それから、あの国王が触れて回っている件は?」
ウィリアムは配下の者に聞いた。
あの愚王は脅威が城に入り込んだのは宮廷魔術師の怠慢だと事あるごとに言っているらしい。
魔法使い達が政治的な力をつけるのを恐れて碌に予算もつけず、宮廷とは名ばかりで宮殿から追い出しておいてどうやって賊の侵入を探知するのだろう。
王族たちは結界さえ張っておけばいい。という態度だったのに。
「本当に魔法使い達がサボっていたとしたら、結界の無い今と変わらないという事ですよ。
先日も魔獣が宮殿に入り込んで大変だったようですよ」
現実が、国王が嘘つきだと言っている。
魔法使いに脅威が脅威であるかを判定する力はない。
ただ、敵対しているものか、人で無いかが分かるだけだ。
それを担うのは教会の者が使う聖力だ。
目の前でその力を見た筈なのに滅茶苦茶なことを言っている。
同じようにそれらを見た周辺諸国も愚王の言っていることを相手にしていない事だけが救いだ。
そのようになるように工作しているのが目の前の配下であることをウィリアムはよく知っていた。
「それから――」
配下は言った。
宰相が娘をこの国の貴族に嫁がせようとしていると。
「泥船から家族だけでも救おうとしているという事か」
配下はうなずいた。
「宰相の罪はなんだと思う?
……いや、違うな。
宰相の罪は家族が背負うものだと思うか?」
ウィリアムは配下に聞いている様で聞いてはいなかった。
ナナエルの窮状に気が付けた男だった。
ある程度察していたがどうにでもなれと放っておいた男だ。
けれど、婚約者不適格等の件に際して王に進言して軟禁までされている。
宰相は愚王に付き従うしかないと覚悟を決めたらしいが家族を逃がしたいと言っている。
「見捨てたと知ったら、ナナエルは動揺する気がする」
ウィリアムはそう言うと、宰相の娘の嫁ぎ先を探すようにと指示を出した。
勿論娘を虐げるようなことの無い家を。




