その後の王家の人々(王妃)
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ことの発端が自分のせいじゃないとして、それをそのまま全て自分には関係のない事だと分けて考えられる人間は少ない。
王妃はわけて考えて、自分は悪くはないと考えられる人間がいることはよく知っていた。
夫と息子がそういう人間だからだ。
だからといって、王妃は悪しきものに洗脳されていたのだから仕方が無かった。
悪いのは、悪しきものを宮殿に入れてしまった誰かだ。とはどうしても思えなかった。
勿論、たらればの話で、誰かが商人が王妃に会う前にそれが悪しきものだと気が付いて排除してくれていたら。とか、王妃の人が変わってしまったような態度を不思議に思って教会に相談してくれたら。
そう考えない訳ではない。
けれど覚えているのだ。
商人に言われるがまま、明らかに不要な物を買って金を渡していたことも。
知っている国の情報をペラペラと話していた自分も。
そして、このままでは最悪になると理性ではわかっている筈なのに王子の無謀とも思える行動を肯定してしまっていた自分も。
勿論公爵令嬢がやっていると知りながら仕事を押し付けたことも、婚約者に準ずる扱いとして丁寧に扱わなかったことも覚えている。
彼女に仕事を押し付けて、王家の晩餐にさえ一度も呼ばなかったことを王妃は知っていた。
侍女に彼女はどこで生活していたのかしら、と正気に戻って来てから聞くと「さあ……」と困惑気味に答えた。
調べたところ彼女に用意されていたのは令嬢にふさわしくない高級文官のための部屋で食事も文官用のものが一部届けられていただけだった。
王妃としての教育は辛いものでなかったと言えば嘘になる。
ドレスのために食事を制限されたこともある。
けれど、これは令嬢扱いをされていないも同然の調査結果に王妃は愕然とした。
そしてそれを当たり前のように思って、今も自分の所為だと思えない息子に対しても王妃は責任を感じていた。
王妃は生家へ手紙を届けさせた。
そして侍女たちに言った。
「私はこれからの人生、修道院にて贖罪の日々を送ることにします。
私の個人資産の一部はあなた方の退職金代わりに下げ渡します。紹介状も書きます。
ただ、私の様な王妃の紹介状がどこまで役に立つのかは分かりませんが……」
そして、この国にこれから追加の侍女を雇えるような場所があるのかもわからないけれど、という言葉を王妃は飲みこんだ。
王妃は操られていた最中の記憶は残っている。
王妃に侍っていた侍女たちは、誰も王妃をたしなめることも何もしなかった。
それであれば彼女たちにも責任が無いとは言えないだろう。
王妃は罪を償う方法が他に思い浮かばなかった。
政にこれ以上関わる資格はないだろうし、離縁は国王が許可しないだろう。
ほどなくして、生家から返事が届いた。
「ここにいたっては、いたし方が無い」
そう生家の従者が持ってきた手紙には書かれていた。
そこに毒薬が付いていないことが、生家はそれでも王妃を家族として愛してくれているのだとわかった。
王妃は涙を流した。
そして息子を呼んで、最後の希望を懸けてこんこんと彼に今の状況と王族として、人としてどうあるべきかを説いた。
結果は駄目だった。
短い期間でどうなるものでもないことはわかっていたけれど、これだけのことがあっても一つも変わらない息子に絶望すら覚えた。
王妃は最低限の持ち物だけをもって出家した。
修道院で祈りを捧げながら、王妃は自分の心にある罪悪感は一生消えないのだろうと思った。
修道院からは「王妃は脅威によって病魔に侵されているため、面会は不可能である」という布告が出された。




