出来損ないではありません
「これまでの王家の専横に対して、我々は異議を申し立てる」
公爵が言った。
これはただ事ではないとざわつく貴族とすでにどちらに付くか決めており静観する貴族とがいた。
王子はその言葉に、ぐっと詰まる。
けれど言ってしまったことは元には戻らない。
何も言えない王子に変わり国王が答える。
ここには外国のものもいる、無かったことにはもうできない。
今後のために公爵家と侯爵家の汚点としてかたずけねばならない。
「公爵は娘が王子の婚約者になれなかったことをまだ恨んでいるらしい」
国王はその位にふさわしくない下卑た笑みを浮かべた。
「娘の能力がたりなかったとは思っておりません。
現に娘は功績を立てましたし、現に一瞬ではありますが脅威を退ける魔法力。
これが横暴ではなく、何が横暴だというのでしょうか?」
公爵の声は思ったよりも淡々としていた。
怒る訳ではなく、まるで子供にかんでふくむ言い方だった。
国王は口角をあげた。
「これはこれは公爵、これは異なことを。
確かに婚約者として不適格としたが、その詳細を明かさなかったのは王家の温情である!」
両者はにらみ合う。
そして「公爵には王家の温情というものが分からないらしい」と言った。
「王妃たるものの一番の仕事はなんだ?
公務をこなすことか?それは優秀な部下がいれば可能だ。
見目が麗しい事か? そんなものでだまされるような者がいないことは特使としてこの国に赴いていただいている各国の方々ならご存じのことだ。
魔法力についても同じだ。
王妃として一番必要な資質、それは国母となることだ。
国母となる資質がたりないということだよ」
分かるかい?とでも言いたげに国王は言った。
「それを、恨みに思って侯爵家に泣きつくとは。
公爵家も墜ちたものだ」
ナナエルは驚いてしまった。
そんなことは知らない。
けれどここで声を上げ詳細を話すことはそれだけで淑女として失格の烙印を押されそうだった。
震えるナナエルの肩をウィリアムが抱いた。
「大丈夫だよ」
そう言った。
独立自体はしてしまえば叶うだろう。
けれどこのままでは難癖をつけたのはこちらと世論操作が簡単にできてしまう。
ナナエルに子が出来て潔白が証明できたとして、それはどの位先になるのか分からないのだ。
「そろそろお見えになるよ」
ウィリアムは言った。




