婚約ができないかもしれない!?
※王子側視点
* * *
「何故だ!!」
王子は宰相に向かって怒鳴った。
「お互いに、そうしたいと言っているのに何故婚約できない!?!?」
ユリウス王子とカサンドラ姫はお互いに想いあっている。
そしてお互いに結婚したいと思っている。
キャサリンは平民でも無ければ爵位の低い男爵家の令嬢でも無かったのだ。
むしろ、各々の国で誰よりも高貴な身分である筈の王族なのに何故反対されるのか、王子には理解できなかった。
「ルクサンドラ王国とは同盟関係もありませんし……」
宰相は言葉を濁した。
同盟を結ぶとなっても現在の友好国との関係もある。
結婚をしたいので、ハイ、そうですかとはならない。
周りの国はルクサンドラ王国に通じていると考える。
「キャシーは、我が国と仲良くしたいと思っている筈だと言っていた!!」
父上に話を通せと王子はわめいた。
宰相は仕方がなく国王陛下との話し合いの場を持った。
その場に王妃がいたことは、宰相にとって予想外だった。
国王陛下だけならば、穏便な方法を取れた筈なのに、息子を溺愛している王妃がいてはそれも難しい。
王妃が二言目には「不敬ですわ」という事は有名だった。
公爵令嬢と正式な婚約がならなかったのも王子が我が儘を言ったからというのは勿論だが、その我が儘をよしとしてしまった王妃の力がある。
王子は専用の椅子にふんぞり返って座っていた。
王の顔色は悪い。
油汗をかいている国王陛下を見ると、家族会議はもう済んでいるらしかった。
「ルクサンドラ王国に特使を送った」
王から言われたのはこれだけだった。
「ですが!!」
宰相は最後の望みをかけて王に直訴しようとした。
他の国をだまして姫君を迎え入れ同盟国でもない国を一番に扱う。
いい気分のする国は一つもないだろう。
しかもその前に、公爵令嬢を切り捨てている。
公爵家と元々繋がりのある家等は外国であっても背を向ける可能性がある。
「ほら、やはり、陛下の決定に異を唱えようとする。
これは立派な不敬ですよ」
王妃が嫌な笑い方をしながら言う。
「宰相はお疲れなんですよ。
静かな場所で静養が必要でしょう。
きっと私とカサンドラ姫の結婚式が済めば目も覚めるだろう」
王子は最初から用意されていた様なセリフを言った。
最後に宰相は国王陛下を見た。
陛下は他の人間に分からないように小さく首を振った。
宰相がこの国を今のままで保つことを諦めた瞬間だった。




