模擬舞踏会への招待状
歴史研究科にも模擬舞踏会の招待状が届いた。
「君の優秀さが分かるねえ」
「え?」
招待状を見ながらウィリアムは言った。
「今までの生徒会からのお知らせの類は君の仕事だろう。
顔が出ない仕事はみんなおしつけられていたのだから」
ナナエルはそう言われて、ようやくウィリアムが何を言いたいのかを理解した。
「新しい担当者の頑張りを否定するのは、あまり好きではないです」
王子は相変わらず、この手の仕事はしていないだろう。
人間はそう簡単に変われない、それこそ痛い目にでも合わない限り。
王家は王子が痛い目に合うのを避けた。
王子を守ったようでいて、王子が変われるかもしれない機会を奪ってしまったのだ。
ナナエルが知っている王子の痕跡は全く招待状には無かった。
だから、頼まれた他の誰かが忙しい中作ったのだろう。
今までは、平民の特待生などに気を使ってどうしてもという行事以外は参加を強制はしていなかった。
強制する場合、ドレスやスーツの手配をしていた。
きっととても忙しい。
ナナエルを褒めるためとはいえ、その誰だかわからない、急に駆り出されたであろう誰かの仕事をナナエルは笑う気にはなれなかった。
「これを作ってる方が、私の様に追い詰められないといいのですが……」
ナナエルはそう言った。
ナナエルの作っていた物に比べて確かに簡素で必要最低限がギリギリにそろっている程度のものだ。
例えば公爵家で主催するパーティでこれと同じものを送ったら問題になるだろう。
そういうものだったけれど、ナナエルはそれよりも生徒会に振り回されているであろう人たちが気がかりだった。
「ナナエル……君は本当に!!」
「え?」
目をキラキラとさせながらナナエルを見るウィリアムに聞き返すと「君の言う通りだ、訂正するよ」とウィリアムは言った。
この人と短い期間であるが話をしてきて、そういうところはとても好ましいとナナエルは思っていた。
「英雄の祝賀会をひかえて、貴族向けの仕立て屋も忙しいでしょうから、直せそうなドレスを公爵家から提供した方がいいでしょうか?」
「それは、さすがに――」
ううん。どうだろう。
逡巡してからウィリアムは、「我が家と公爵家、両家に確認は俺の方でしておくよ」と言った。
「それよりも。
ここに書いてある通り、全員参加が義務なんだよ」
「はい」
「大丈夫そうかい?」
「はい」
「なら、一応公式発表はしないけれど婚約者同士という事で参加したいけれどいいだろうか?」
ウィリアムに聞かれた。
ナナエルは少し悩んだ。釣り合わないだろうなという事実が心に引っかかる。
けれど、婚約はなった。
そこから逃げるのも違うだろう。
「はい。
是非エスコートしてくださいませ」
そう言うとウィリアムは「よし!!」と嬉しそうに叫んでいた。
「ドレスはお互いの色を取り入れた揃いのものにしよう。
ドレスは是非贈らせてほしい、それから――」
まくしたてるようにウィリアムは計画を話し続けた。




