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大河との再会 苦しみの果てに

一年前のあの惨劇が私の心を蝕む。


どれだけ苦しんだら許してくれるの?


「忘れなさい! 忘れるのです! 」


ハッピー先生は許し方を教えてはくれない。


ただ記憶の奥の奥に封じ込めるだけ。


それでは無意識に流れる罪悪感から逃れられない。


忘れる…… 忘れる? 本当に忘れていいの?


ハッピー先生を、自分自身を信じきれないでいる。


そしてついには元に戻ってしまう。



私を許して!


もう助からない。


誰かお願い! 誰か!


「手が痛い! もう限界だ! 」


あの人を助けてあげて!


ほら手を伸ばす!


「邪魔をするな! 」


助けて! 助けてあげて!


「手を離してくれ! もう感覚が無い! 」


「だから邪魔をするなと言ったろ! 」


早く! 早く! 早く! 


お願い。お願いよ。お願い! お願いします!



そんな風にこっちを見ないで。


橋の下の真っ暗な谷底に吸い込まれていく。


もう助からない。

 

諦め顔でこちらを見る少年。


最期の時。



一人の少年が落下していく。


男女二人がその姿を見守る。


男は嬉しそうに。


女は後悔の念に駆られながら。


もうどうすることもできない過去。


帰らずの橋の悲劇。



あれから一年が経過した。


帰らずの橋に向かう。


これは懺悔であり自分なりの弔い。


毎月行っている供養。あの少年の為にも。私自身の為にも。


分かってる。これが何の意味もないことだと。


花を手向けるぐらいしか私にはできない。


一生苛まれる。苛まれ続ける。


一年前の悲劇。



被害者はあの少年。


加害者はあの男。


ううん。加害者はこの私。


いくら頼まれただけだとしても彼の計画に乗った事実は変わらない。


知らなかったや気付かなかったでは済まされない。


今はこうして毎月供養のために帰らずの橋を訪れている。


私は囚われている。あの日に囚われている。


あの日の自分の過ちから逃れない。


彼を…… あの少年を見捨てた。


男の手を振り払ってでも彼を助けるべきだった。


でももう遅い。


そうして毎月少年の魂を救済する為に祈り続けている。


祈りが届きあちらの世界で幸せでいますようにと。



花束を投げ捨てる。


赤白黄色の花を現場となった付近に落とす。


もうあれから一年か。


これで許してとは言わない。


でも私を私の努力を認めて欲しい。


「成仏できますように。安らかにお眠りください」


届くように叫ぶ。


その間も震える手と足。


一分ほど目を閉じマウントシーの館に戻る。


その時だった。


突然の再会。


大河の姿があった。



「ドルチェだっけ。何してるんだ? 」


シンディーもブリリアントも言ってた。


神聖な儀式である沐浴を覗いていた変質者。


関わりたくもないので必要最低限しか話していない。


こっちが無視すれば彼だって何もできやしない。


だいたい変なのよね。こんなど田舎の祭り。しかも月祭りに興味があるなんて。


警戒するに越したことはない。


ブリリアントは心配ありませんよって言ってたけど私は騙されない。


まさかこの男、一人になったところを襲う気?


ブリリアントもシンディーも騙されやすいから。まさか襲った上で洗脳でもした?


無視を決め込む。



「おいちょっと待ってくれ! 」


引き止めようとするが相手にしない。


まだ疑わしい。無視して歩き出したがなぜか大河の前で足が止まる。


これは一体どういうこと?


彼に惹きつけられたとでも? 


まあいいわ。たとえそうでも思い通りにさせるもんですか。



「あら大河さん偶然ですね。あなたも朝の散歩ですか」


「まあそんなところかな」


疑いの目を向ける。だがこちらだって同じ。


一つ屋根の下。しかも隣同士。彼が私に興味を持たない方がおかしい。


もちろん私そこまで自信家でもありません。


ただ大河なる人物はたぶん見境なく襲う獣。そうに違いない。


「ではごきげんよう」


話を勝手に終わらせる。


散歩だなんて絶対に嘘。また沐浴を覗こうとしたんだ。


男の人はこれだから嫌らしいと言うの。


ハッピー先生もこの男を信用して本当に大丈夫かしら?



「早いね」


何を探ってるの? 訳が分からない。


不快だからどっかに行ってくださらない。


喉元まで上がってきた言葉を飲み込む。


「ええ毎月の日課みたいなものですよ」


面白くないでしょう? ほら興味を失ったらどっかに行きなさい。


だが思い通りに行かないのがこの男。


「俺も昔を思い出してね。ちょっと話さないか」


恥ずかしそうに頭を掻く男。


「あの大河さん。男女が一対一で歩くのも話すのも本来禁止されてるんですよ」


「へーそうなんだ。詳しいね」


そう言うことじゃない! 馬鹿なのこの人?


それともわざと道化を演じてる? そうだとしたら危険。


ほらシッシシッシ。どこかに行きなさいよ。


「きゃあ! 」


いつの間にか彼の元へ。足が勝手に。


気持ちとは裏腹に体が彼を求めている。


欲求不満? あり得ない。



「分かりました」


橋を渡り切ったところで話し始める。


                   続く

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