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あなた一体何者?

ついに大河と対峙する。


「あのさあ…… 」


まったく何この男? 嫌らしいんだから。


「怖くないのか? 」


首を振る。


私をその辺の儚げな少女と一緒にしないで。


こんな橋小さいころから渡ってるんだから。


あの事件さえ。あんな悲劇さえ起きなければ今だってお気に入りの場所。


「そうか強いんだね。俺は足がすくむよ。高所恐怖症って奴かな」


「私もそう…… たまに感じることがある」


ついつい話を合わせる。他愛無い世間話に終始。これでは意味がない。


意味? 彼と話して収穫があるはずがない。


私は彼の無言の圧力に屈しただけ。


そして無理矢理話に付き合わされている。


どんなことがあっても一年前の悲劇を彼に悟られてはならない。


弱みを握られ一生脅迫され続ける。


大河とはきっとそんな男だ。


だからこそ体がこんなにも拒絶しているのだ。



男は大きく深呼吸。


「この橋に何かあるのかい? 」


「私は知りません。でも昔何かあったみたいですね」


ある訳ない。こんな橋に何も……

 

「君はさっき花を落としていたみたいだから…… 」


「見てたんですか? 」


「ああ。偶然」


「昔の恋人がここで自殺を図ったって言っても信じますか? 」


「いいや…… 」


疑いの目を向ける大河。



ちょっとやり過ぎた。まるで懺悔するようにヒントを与えた。


どうしちゃったんだろう? 私ったら変だ。ただからかうつもりだったのに。


余計な詮索はさせないように注意してたのに……


なぜか魅入られるようにぺらぺらと告白をする。



どうして? どうして彼なの?


私は彼とは初対面で好意どころか避けていたはずなのに。


自分にはもうコントロールできない。


誰か助けて!


ハッピー先生。私をお助け下さい。


はあはあ

はあはあ


胸が苦しい。


助けて大河!


あれ…… 私は何を?



「どうした顔色が悪いが。熱でもあるのか? 」


彼のやり方だって分かってる。優しくして信用させ……


今までにも彼の毒牙にかかった被害者が二人もいる。


私も今その仲間入り。哀れな犠牲者。


この男は心が弱っているところに付け込み言葉巧みに騙し凌辱する。


そんな最低男だ。もしかしたらもっとひどいかもしれない。


想像の遥か上を行く獣。


私は騙されない。


私はそんな愚かでも弱くもない。



「ご心配なく。ただあなたを見てると虫唾が走るんです」


ほらこうすれば彼も手は出せない。私はあなたを認めない。


その橋から仮に這い上がったとしても認めない。


付け込まれないように気をつける。


自己防衛は当然必要で今は完璧。


「この橋が関係あるのか? 」


ちっとも堪えないタフな男、大河。



「ねえ違う話をしませんか」


強引に話題を変える。


しかし冷静さを欠いてしまい大失敗。


「大河さんは知らないと思いますがこの橋には言い伝えがあるんですよ」


まずいやってしまった。なぜ余計な話をしてしまうの私?


話を逸らそうとすればするほど核心へ。


何て間抜けなの? これではブリリアントさんやシンディーさんと変わらない。



「ああその話なら知ってるよ。振り返らずの橋と呼ばれていて恐れられている。


何でも前を行く者が橋を渡り切る前に振り返ると後ろを行く者に災いがって話」


「えっ…… 」


もはや何も言葉が出てこない。


なぜこんなにも詳しく正確なのか。なぜこんなにも詳しく正確に間違えてるのか。


それはそれは……


私が小さいころに暗記したパンフレットの内容とかけ離れている。


彼は一体この話を誰から?



「ハッピー先生からお聞きになったんですか? 」


「いやそうじゃない。前に一度教えてもらったことがあるんだ」


「ううう…… 」


一切言葉にならない。どう言うこと?



「ははは…… どうしたんだ顔面蒼白だぞ」


笑顔で迫る大河。まさかね……


「あなた一体何者なんですか? 」


ついに叩きつける。


こうでもしないと冷静さを保てない。


彼の正体を知ればこの冷や汗だってきっと収まる。


「何者かと言われてもな…… 簡単に言うと旅行者」


頭を掻きおどける。


嘘。彼はただの旅行者なんかじゃない。


私を追及する者。


きっと私に罪を認めさせるためにやって来た使者。



ついに心が保てなくなり暴走を始める。


私が悪いいんじゃない!


どうしてやってくるの?


死神め!


もし私の罪を暴くと言うならやってみるがいい。


その時は銀色に光る刃であなたの胸を貫けばいい。


こんな山奥。人が一人居なくなろうが誰も気になどしない。


元から彼は災いを運ぶ死神。


誰が咎めると言うのか。


きっとハッピー先生はお許しになる。


これはいわば正当防衛。


本能で犯罪者を嗅ぎ分けた結果、異分子である彼が排除されただけ。


祭りが終われば彼の存在など誰も覚えてやしない。


さあ来るがいい! 死神今こそ退治してやる!


マウントシーに舞い降りた悪魔め。


私を脅迫する者よ。


消え失せろ!


                    続く

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