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見ないで! あの日の記憶

昼。


ボーっとしてるといつもにも増して騒がしい。


と言うよりもいつもは私語など基本しない。


何かあったのだろうか?


このマウントシーに関連したことでもなさそうだが。


聞き耳を立てる。



「副村長が刺されたんだって。大河から聞いたよ」


「嘘! あの副村長さんが? てっきり高齢で体調を崩されているのかと」


「犯人は現在逃走中らしいよ」


「マウントシーまで来たら大変」


「そうそう逃げるなら島の外か山を登るしかないよね」


「お見舞いってまさか? 」


「うん。隠してたみたい。ただの風邪か何かかと思ってたんだけどね」


「私も私も。それで一体誰が犯人だったんです? 」


「さあ。ハッピー先生か大河さんが知ってるんじゃない」


「ふむふむ」



「そこうるさい! 静かな食事の時間が台無しでしょう! 」


ついつい我慢できずに隣の仲良し二人組を注意する。こんなこと何年ぶりだろう?


あの大河に毒された二人組。ブリリアントさんとシンディーさん。


特にブリリアントさんが厄介。


あの男のためにスパイみたいな真似までしている。


ちょっと前まではアリアさんの目があり動きずらそうにしていた。


最近はその彼女も何だかやる気を失っている。


と言うよりもあの男に近づきすぎて取り込まれている気も。


まあ私には関係ないこと。静かに生活が送れることが第一。


余計な争いごとさえ持ち込まなければいい。難しいことではないはず。


食事ぐらい静かに食べさせて。それがマナー。



「本当にもう勘弁してよ。子供じゃないんだから食事ぐらいゆっくりさせて! 」


ようやく静かになった。反省してるようだ。


私は自分に厳しく皆にも厳しく秩序を保つよう心がけている。


こうすれば必ず幸せになれるとそう信じている。だから……


でもそれも大河が来るまで。


あの男が現れてから今までの秩序が破壊されて行く気がしてならない。


すべてはあの男がやって来てからおかしくなった。



それにしても大河は一体何者?


何となくどこかで会ったような気がする。


ただの気のせい? デジャヴ?


あーあ。今日もまたカレーか。


気にせず流し込む。


うん。もう飽きちゃった。


でも文句なんて言えない。


ルールや規則。即ち秩序を守ることが私たちに平穏をもたらす。



午後十一時過ぎ。


儀式の準備のため外へ。


ここに来てから一年経つが儀式に慣れるまでは大変だった。


あんなことして本当に意味があるのか?


本当にあの薬は効いているのか?


疑問を口にすると優しくハッピー先生が諭してくれる。


私は恥ずかしくなり何も言えなくなる。



深夜別館までの夜道は恐ろしいがさすがに皆で行く訳にも行かない。


一人一人で儀式に参加するかしないか決めている。


夜道はどんなに慣れてもやはり怖い。


蛇や夜行性の獣がその辺をうろうろしているとハッピー先生が言うものだから。


実際歩いてみると居ないにも関わらず襲ってくるのではと足がすくむ。


ふう今日もこれでお終い。


儀式を終え寝床に着く。


儀式による効果は目には見えないが落ち着くし寝つきもいい。


確実にいい方向に向かっている。そう信じている。


このままずっと一日のルーティンを繰り返し続ければきっと……


決して消えない過去を遠い記憶の彼方へ封印できたらどれだけいいだろう。


そっと眠りにつく。いつも同じ夢を繰り返し見る。



一年前の丁度今頃、私の犯した過ちが頭の中で再生される。


そんなにこっちを見ないで! 私を憎まないで!


あなたが落ちていく姿をじっと見ていた私を責めないで!


無力な私に何ができると言うの?


どうすることも…… どうすることもできないじゃない!


私はほら男に捕まえられていて身動き一つできない。


私は何とかあなたを助けようとした。そうでしょう?


お願いもうこっちを見ないで!


悪夢にうなされ大汗を掻き、着替えを余儀なくされる。


まだ完全に夜が明け切っていないタイミングで目が覚める。


ここ最近いつもそうだ。これもルーティンと言うべきか。



心を落ち着かせ水を一杯。


机の引き出しに目がいく。


引き出しの一番下を開ける。


そこには黒い帽子が袋に入れられて保管されている。


取り出し少し眺めてから元に戻す。



これは形見だ。


ある少年。名もなき少年が落としたもの。


橋に残された遺留品。懺悔のつもりで手元に置いている。


未だに引き取りに来ないのは間違いなく亡くなったからだろう。


本当は捨ててしまいたいがどうしても決心がつかない。



あの時帽子の存在に気付いたのは私だけ。あの男は何も目に入っていなかった。


まあ気付いていたとしてもただのゴミとして興味を失っただろう。


彼の計画通りに事が進んだ。私にはどうすることもできなかった。


もし阻止できる人間が居たとしたらそれは彼女。


彼女なら男の邪悪な心に気付いたはず。


彼女が男に入れあげていたせいで少年は殺された。


だから彼女が悪い。決して私が悪い訳じゃない。


そう私は悪くない!


ただの目撃者でありもっと言ってしまえば犠牲者。


悪くない! 私は悪くない!


              続く

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